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更新日:2026/05/17

同等仕様500棟データから見る、5年間のリフォーム費用実額推移

2026年ホルムズ危機下の実態を含む

はじめに——なぜ500棟の実額データを公開するのか

第1章: なぜ業界平均は実態を映さないか

第2章: 500棟データの方法論

第3章: 2021年〜2026年、フルリフォーム費用実額の推移

第4章: 業界平均との乖離

第5章: 価格の中身を読み解く

第6章: 2026年ナフサショック下の実額——業界スポット価格と500棟実額の決定的な乖離

ナフサショック"の真実 | 日本の建材価格はなぜ高騰し続けるのか?

はじめに——なぜ500棟の実額データを公開するのか

ナフサショック

ここで一つ、私がなぜ500棟の実額データを公開するのかを書いておきたい。

業界の慣行として、施工実額データを社外に公開することは、ほぼない。各社の見積もり情報は機密扱いされ、施主が「実際にいくらでリフォームできるのか」を知る術は、業界全体として極めて限られている。

これは健全な状態ではないと、私は考えている。

公開の動機は、3つある。

第一に、業界の透明性への一石を投じたい。業界平均は実態を映さない。各社の見積もりは案件ごとに大きく異なる。施主は何を基準に判断すればいいのか分からないまま、業者の言葉を信じるしかない状況にある。情報の非対称性が、業界と施主の関係を歪めている。

第二に、施主の判断軸を提供したい。同等仕様で施工してきた500棟超の実額データは、施主が業界平均ではなく「現実の相場感」を持つための基礎情報である。これがないと、施主は見積もりの妥当性を判断できない。

第三に、業界第一人者として責任を果たしたい。500棟超の実証データを持つ業者は、業界でもごく少数である。このデータを公開せず社内に留めることは、業界の透明性を遅らせる行為に等しい。

これら3つの理由から、本記事で当社のデータを開示する。

本記事を読み終えたとき、施主の方が「業界平均という数字を、これからどう受け止めればいいのか分かった」と感じていただけたなら、私の役目は果たせたことになる。

 

第1章: なぜ業界平均は実態を映さないか

ナフサショック

業界平均という数字の正体

業界平均という数字を見たとき、施主は何を理解できるのか。

実は、ほとんど何も理解できない。

これは皮肉ではなく、構造的な事実である。理由は、業界平均が以下の差異を全て無視して平均値を出しているからだ。

仕様のバラつき。同じ「フルリフォーム1,500万円」でも、耐震等級3+断熱HEAT20 G2のフルリフォームと、耐震無しで内装だけ刷新するフルリフォームでは、本質的に違う商品である。これを平均化すれば、当然、施主の参考にならない数字になる。

地域差。東京都心と地方では、人件費・物流費・土地条件で工事費は大きく異なる。同じ仕様でも、地域によって200〜300万円の差が出ることは珍しくない。これを全国平均すれば、どの地域の施主にとっても外れた数字になる。

時期差。2021年と2026年では、建材価格、人件費、物流費がすべて異なる。同じ仕様でも、施工時期によって価格は大きく動く。これを5年間で平均すれば、いまの相場とは違う数字になる。

業者特性。大手・中堅・地場、それぞれで価格構造が違う。広告宣伝費、営業組織の規模、利益率の設定——これらが業者ごとに大きく異なる。これを業界平均すれば、特定業者の価格を予測する材料にはならない。

これらの差異を全て丸めて出された「業界平均」という数字には、ほとんど判断材料としての価値がない。

 

「同等仕様」という比較軸

では、施主が参考にできる相場感は、どこにあるのか。

私の答えは、「同等仕様」である。

築年数帯、延床面積帯、改修範囲、性能水準——これらを揃えた上で、年次比較する。これが、実態を映す唯一の方法である。

「同等仕様」で比較するという発想自体は、業界でも以前からあった。

しかし、これを実際にデータとして蓄積し、年次比較できる業者は、ほぼ存在しない。なぜなら、500棟を超える同等仕様の施工実績がないと、統計的に意味のあるデータにならないからだ。

幸い、当社は500棟超の同等仕様データを蓄積してきた。これを年次比較することで、業界平均では見えなかった「現実の動き」を可視化できる。

性能向上の各工種の詳細については、当サイトの性能向上リノベーション総合ガイドで別途整理しているので、必要に応じて参照していただきたい。本記事では、その具体的な実額データに焦点を当てる。

 

当社が公開する理由

「なぜ自社のデータを公開するのか」という問いに、もう一度答えておきたい。

当社の競合となる業者からすれば、当社が実額を公開することで、当社の見積もりロジックが見える。

これは短期的には当社の競争上の不利になり得る。

しかし、長期的には逆だと、私は考えている。

施主が「実額を知って判断する」という習慣を持つ業界は、誠実な業者にとって有利な業界になる。

なぜなら、施主が情報を持てば、見せかけの値引きや過剰な見積もりを見抜けるようになるからだ。

情報の透明性が、業界全体の質を引き上げる。

これは、100年以上続いてきた当社の事業観そのものでもある。短期の競争優位ではなく、長期の業界の健全性に貢献する——これが、データ公開の根本動機である。

第2章: 500棟データの方法論

ナフサ不足による価格の推移と最新動向

対象案件の条件

データの方法論を、率直に開示しておく。

対象案件: 2021年4月〜2026年3月に当社が施工したフルリフォーム案件のうち、以下の条件を満たすもの。

  • 戸建住宅(マンションは別途データ集計)
  • 築20〜40年(性能向上リノベーションの主要対象帯)
  • 延床面積 90㎡〜150㎡(標準的な戸建サイズ)
  • 改修範囲: 構造補強+断熱+設備機器+内装の全面リフォーム
  • 性能水準: 耐震等級2以上、HEAT20 G1相当以上

この条件を満たす案件が、500棟超ある。これを年次で分けて集計した。

 

データ採集の方法

データ採集: 案件ごとの最終契約価格を年次集計。

ここで強調しておきたいのは、「最終契約価格」を使っていることだ。

当初見積もりや概算ではなく、実際に契約された金額である。

業界では「最初の見積もり」と「最終契約価格」に差があるケースが多い。

値引き交渉、仕様変更、追加工事——これらを経た最終の数字が、施主が実際に支払う金額である。施主の判断材料として意味があるのは、この最終契約価格だ。

 

匿名化と検証可能性

匿名化: 個別案件は完全匿名化し、施主情報は一切公開していない。

第三者検証可能性: 必要に応じて、当社の経理データ・契約書類による検証が可能。プライバシーに配慮した形で、信頼性を担保する仕組みを持っている。

「データを公開する」という行為は、虚偽データを混ぜれば信頼を一瞬で失う行為でもある。当社は自社の長期的な信頼を最大の資産と考えているため、データの真正性には特別に配慮している。

 

第3章: 2021年〜2026年、フルリフォーム費用実額の推移

建築資材高騰

全体平均の年次推移

まず全体平均を見ておく。

2021年: 2,400万円(基準)

2022年: 2,472万円(基準比 +3%)

2023年: 2,544万円(基準比 +6%)

2024年: 2,640万円(基準比 +10%)

2025年: 2,760万円(基準比 +15%)

2026年(1〜5月): 2,856万円(基準比 +19%)

5年間で全体としては約19%の上昇である。

これは業界平均(国交省建築費指数で約18%)と比較すると、当社のほうがやや高い水準である。

 

しかし、ここで重要なのは「全体平均」ではない。それはあくまで集計指標である。

工種ごとの動きを見ると、はるかに複雑な実態が見えてくる。

 

工種別の年次変動

500棟データを工種別に分解すると、業界の「資材高騰」が一括語りでは捉えられない現象であることが見える。

 

構造補強(耐震工事)

  • 2021年→2026年で約+15%上昇
  • 主因: 鋼材価格と職人人件費の上昇
  • 資材高騰の影響度: 中程度
  • 値上がりの推移: なだらかに継続的に上昇

断熱改修

  • 2021年→2026年で約+30%上昇
  • 主因: フェノール樹脂・ウレタンの値上がり(ナフサ由来)
  • 資材高騰の影響度: 大きい
  • 値上がりの推移: 2022年以降、段階的に上昇。2026年に入ってさらに加速

設備機器更新

  • 2021年→2026年で約+12%上昇
  • 主因: 半導体不足の継続的影響、メーカーの値上げ
  • 資材高騰の影響度: 限定的(ナフサ直接影響は小さい)
  • 値上がりの推移: 2021〜2023年に大きく動き、2024年以降は緩やか

外装(屋根・外壁)

  • 2021年→2026年で約+25%上昇
  • 主因: 塗料・シンナーの調整不全(トルエン系の影響)
  • 資材高騰の影響度: 時期によって大きく変動
  • 値上がりの推移: 2026年に入って急上昇

内装(床・壁・天井・建具)

  • 2021年→2026年で約+10%上昇
  • 主因: 人件費の継続的上昇、一部木材の値上がり
  • 資材高騰の影響度: 小さい
  • 値上がりの推移: 全期間を通じて緩やか

5つの工種を並べてみて、何が見えるだろうか。

業界が一括で「資材高騰」と語っているものは、工種ごとに5倍以上の差がある複雑な現象である。

最も値上がりした工種と、最も影響を受けていない工種の間には、本質的に異なる動きがある。

 

 

実は値上がりしていない領域

ここで多くの施主が驚くのは、「実は値上がりしていない領域」が存在することだ。

たとえば、当社の内装工事は、2021年から2026年でほぼ横ばいである(人件費分の緩やかな上昇のみ)。

理由は、内装の主要建材(木材、石膏ボード、壁紙)が、ナフサ由来ではないからだ。

一部の樹脂系建材は値上がりしているが、内装全体としては影響が小さい。

設備機器も、2024年以降は驚くほど安定している。半導体不足の調整が落ち着いたことが大きい。

業界が「資材高騰で全部値上がり」と語るとき、これらの事実は見えなくなる。

だが、施主の予算判断にとっては、極めて重要な情報である。

「うちのリフォームは内装中心だから、いま動かないと損するのでは」と焦った施主が、実は内装は横ばいだったと知ったら、判断はまったく違うはずだ。

 

工種別の見方が施主の判断を変える

500棟データから言える、最も重要な含意は次のことである。

施主は、業界平均ではなく、自分のリフォームに含まれる工種の年次変動を見るべきである。

たとえば、断熱改修と外装が中心のリフォームを計画している施主は、それらの工種が大きく上昇している事実を踏まえて判断する必要がある。

一方、内装と設備中心のリフォームを計画している施主は、それらが比較的安定していることを踏まえて、急ぐ理由は少ない。

業界が一括で「いま動かないと」と発信するとき、施主はまず自分のリフォーム計画の工種構成を確認すべきだ。

その上で、その工種の実際の動きを見る。これが、業界の煽りから自由になる第一歩である。

第4章: 業界平均との乖離

ナフサショックによる原価高騰

公表データとの比較

当社の実額データを、業界の公表データと比較してみる。

国交省建築費指数(リフォーム関連): 2021年→2026年で約+18%上昇

大手リフォームポータルの平均価格: 同期間で約21%上昇 当社実額(同等仕様): 同期間で約19%上昇

これらの数字には、それぞれ乖離がある。なぜか。

 

乖離の理由を分解する

国交省指数はリフォーム特化していない。

国交省の建築費指数は、新築・リフォーム・修繕などを広く扱う統計指標である。リフォーム単独の動きを精密に映すには、設計されていない。新築投資の動きや、大規模公共工事の影響が混ざる。

施主が「リフォーム費用の動き」を知りたいときに、国交省指数は方向性の参考にはなるが、絶対値としての判断材料にはなりにくい。

 

大手ポータルの平均価格は「広告価格」。

大手リフォームポータルが公開している平均価格は、業者が「広告として打ち出している価格」を集計したものである。

実際の取引価格ではない。

業界の慣行として、広告価格は「ある程度高めに設定し、値引き余地を残す」のが一般的である。

実際の取引価格は、広告価格より数十万円〜数百万円安いことが多い。

つまり、ポータルの平均価格は、施主が実際に直面する取引価格よりも高めの数字になっている。

これを参考にして予算を立てると、現実より高い相場感を持つことになる。

 

当社実額は「契約価格」。

これに対して、当社が公開する実額は、契約価格(値引き後)である。施主が実際に支払う金額そのものだ。

つまり、3つの数字は同じ「リフォーム費用」を語っているように見えて、実は全く違う種類の数字である。

 

施主の判断にとって何が重要か

業界平均ではない実態としてのフルリフォーム費用構造については、当サイトのフルリフォーム費用ガイドでも詳しく整理している。本記事と併せて参照していただくと、より具体的な費用感が掴めるはずだ。

施主が知るべきは、自分の家と同等条件の最近の実額である。

これを知って初めて、業者から提示された見積もりの妥当性を判断できる。

業界平均を見ても、施主の判断材料にならない。

なぜなら、施主は「業界平均」に対して家を建てるのではなく、「自分の家の個別条件」に対して建てるからだ。

500棟データの真の価値は、ここにある。「業界平均」というぼやけた数字ではなく、「同等仕様500棟という具体的な集合の実額」という、施主が直接参照できる現実の数字を提供することにある。

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第5章: 価格の中身を読み解く

今すぐ取るべき4つの実務対策―「ナフサショック」から家を守るために

「同じ1,500万円」でも内訳が違う

ここで、ある具体例で考えてみたい。

施主が3社から見積もりを取ったとする。3社とも合計1,500万円。施主は「価格は同じだ」と思う。

しかし、内訳を見ると本質は全く違う。

A社の見積もり: 1,500万円

  • 構造補強: 200万円
  • 断熱: 250万円
  • 設備機器: 400万円
  • 外装: 300万円
  • 内装: 350万円

B社の見積もり: 1,500万円

  • 構造補強: 50万円
  • 断熱: 100万円
  • 設備機器: 600万円
  • 外装: 450万円
  • 内装: 300万円

C社の見積もり: 1,500万円

  • 構造補強: 300万円
  • 断熱: 350万円
  • 設備機器: 300万円
  • 外装: 250万円
  • 内装: 300万円

合計は同じだが、本質は全く違うリフォームである。

A社はバランス型。B社は「見映え型」で、設備と外観に重点を置いている。

C社は「性能向上型」で、耐震・断熱に最も投資している。

施主の価値観によって、選ぶべきはどれか変わる。

20年使う住まいの安全と快適を最優先する施主はC社、見た目と最新設備を重視する施主はB社、というように。

業者の見積もりを比較するとき、施主が見るべきは「合計金額」ではない。「内訳の優先順位」である。

 

良い見積もりの3条件

良い見積もりとは、何か。

私は20年近く現場を見てきて、3つの条件があると考えている。

第一に、内訳が詳細であること。

工種ごと、材料ごとに金額が明示されている見積もりは、業者の積算が丁寧である証拠だ。

「一式」「諸経費」が多い見積もりは、内容が不透明である。後から「想定外の追加費用」が出る確率が高い。

第二に、施主の優先順位に応じた内訳になっていること。

施主が耐震を重視するなら、その項目に厚く費用が割かれているはず。施主の希望と異なる優先順位の見積もりが出てきた場合、業者が施主の意向を理解していない可能性がある。

第三に、過剰または過少がないこと。

たとえば内装に過剰な費用がかかっている見積もりは、業者の利益構造が偏っている可能性がある。逆に耐震や断熱に過少な費用しかかかっていない見積もりは、本来やるべき工事を省略している可能性がある。

良い見積もりは、施主の家のリフォームに必要な工事の輪郭を、正確に映し出している。

施主は、合計金額の前に、内訳を読むべきである。

 

安い見積もりの裏にあるトレードオフ

安い見積もりが必ずしも「お得」ではないことを、書いておきたい。

業者が見積もりを安くするには、限られた方法しかない。

 

  • 工事内容を削る(必要な工事を省略する)
  • 仕様を下げる(安価な建材を使う)
  • 職人の人件費を抑える(熟練度の低い職人を使う)
  • 工程を短縮する(施工品質が落ちる)

 

これらはすべて、引き渡し後の使用感や耐久性に直結する。

安い見積もりを選ぶことは、これらのトレードオフを受け入れることを意味する。

これは業者の善悪の問題ではない。価格と価値はトレードオフの関係にあり、価格を下げれば必ず何かが犠牲になる、という業界の構造的事実である。

「安い」と「お得」は違う。

「お得」とは、価格と価値のバランスがいいことだ。価値を犠牲にした安さは、長期的にはお得ではない。

20年使う住まいに、目先の数十万円の安さで、20年間の妥協を埋め込むのは、施主の幸せに繋がる選択ではない——これは私が現場で見てきた、率直な観察である。

第6章: 2026年ナフサショック下の実額——業界スポット価格と500棟実額の決定的な乖離

長期見通し―ナフサ依存からの脱却は可能か?

直近5ヶ月の業界スポット価格 vs 当社実額

2026年3月のホルムズ海峡危機以降、業界では資材価格が劇的に動いている。

業界スポット価格と、当社実額の双方を、率直に並べて示しておく。

【ここに2026年1月〜5月の業界価格 vs 当社実額の対比グラフを配置】

塗料・外装系(シンナー・トルエン系の影響)

  • 業界スポット価格: 2026年3月→5月で +75%
  • 当社実額(同等仕様): 2026年1〜5月で +8%
  • 差: 約67%ポイント

断熱材(フェノール樹脂・ウレタン系、ナフサ由来)

  • 業界スポット価格: 同期間で +40〜50%
  • 当社実額(同等仕様): 同期間で +5%
  • 差: 約35〜45%ポイント

配管材(塩ビ管、ナフサ由来)

  • 業界スポット価格: 同期間で +12〜20%
  • 当社実額: ほぼ横ばい
  • 差: 約12〜20%ポイント

ナフサ価格そのもの

  • 業界スポット価格: 2026年3月→5月で 約2倍
  • 当社建材調達コスト: 既存契約とストックでカバー、影響は2〜3%程度に圧縮

設備機器(TOTO・LIXIL等の住設)

  • メーカーの値上げ宣言: 続いている
  • 業界実勢価格: 一時受注停止により流通が混乱
  • 当社実額: 既存契約枠から優先供給を受け、ほぼ横ばい

これらの数字を、施主の方は驚くかもしれない。

「業界の塗料が+75%上がっているのに、当社の見積もりが+8%で済むのは、なぜか」と。

ここから先が、本記事の核心である。

 

なぜ500棟実額は業界スポット価格と乖離するのか

業界スポット価格と当社実額の間に、これほど大きな乖離が生まれる理由は、3つある。

第一に、メーカー・問屋との長期取引契約。

当社は500棟超の継続的な発注実績により、メーカー・問屋と長期取引契約を結んでいる

資材ショック発生時、スポット市場(その場限りの取引市場)では+75%でも、長期契約では値上げ幅が大きく圧縮される。これは1棟・10棟規模の業者には作れない関係性である。

第二に、施工計画の前倒し発注。

当社は施主の予算確定時点で、主要建材のスポット価格を最大限固定する仕組みを持つ。これにより、施主が直接スポット市場の変動を被ることがない。資材担当が常時市況を見ながら、契約済み案件の建材を先回りで押さえる。この「前倒し発注の余裕」は、複数案件を継続的に持つ業者にしか作れない。

第三に、500棟超の継続実績からくる優先供給枠。

メーカーが「販売停止」を決めた品目でも、当社向けには既存契約の枠で供給が続く。これは100年超の取引信用と、継続発注のボリュームから生まれる、見えない競争優位である。

この3つの構造によって、業界スポット価格が劇的に動いても、施主が直接被るインパクトは緩和される。

これが、500棟超の同等仕様データを継続的に蓄積してきた当社の、見えない資産である。

 

TOTO・LIXIL 受注停止局面の実態

2026年5月、TOTO・LIXILは住設機器の一時受注停止を発表した。

これは業界に大きな波紋を広げた。新規受注を停止し、既存契約の優先供給に切り替えるという宣言である。

業界の煽り報道は「TOTO・LIXIL 受注停止、住宅工事は半年遅延」とまで書いた。

しかし、現場の実態はもっと複雑である。

業者ごとに「既存契約の総量」が違う。直近で大量発注の実績がある業者は、既存契約枠が大きく、供給が継続する。新規参入や中小業者は、既存契約枠が小さく、新規受注が事実上止まる。

当社の場合、500棟超の継続実績から、メーカー側との既存契約枠が大きい。

2026年5月の受注停止局面でも、施主への供給が止まることはなかった。

これは、長期の信用を積み上げた業者だけが持てる、見えない競争優位の一つである。

業界の発信を読むときは、「業者ごとの長期取引関係」という変数を持ってほしい。

「業界全体で受注停止」と「自分が依頼する業者で供給遅延」は、別の話である。

 

数字の乖離が意味するもの

業界スポット価格(+75%/+40〜50%/+12〜20%)と、当社実額(+8%/+5%/横ばい)の対比は、何を意味するのか。

それは、「業界平均価格」という抽象指標と、「特定業者の実額」という具体現実は、危機局面ほど大きく乖離する、ということである。

施主の方が見るべきは、業界平均ではなく、自分が依頼する業者の実額である。

報道や業界誌の「資材高騰」記事よりも、実際の見積もり3社比較のほうが、施主の判断にはるかに役立つ。

500棟超の継続実績を持つ業者と、それを持たない業者では、危機局面の価格動向が根本的に違う。

これを業界平均で語ろうとすると、施主の判断は歪む。

工種別に見ても、業界スポット価格と当社実額の乖離は、ナフサ由来素材(塗料・断熱材・配管材)で特に大きい。

逆に、構造・内装(鋼材・木材・石膏ボード)では、業界スポット価格と当社実額の差は小さい。

これは、ナフサショックがナフサ由来素材を直撃しているため、長期契約による値上げ抑制の効果が大きく出る領域だからである。

業界が「資材高騰」と一括で語っている現実は、現場ではここまで複雑である。

 

短期予測のために何を見るべきか

短期の価格を予測しようとするのは、ほぼ不可能である。

これは別稿「ナフサショックの次に何が起こるか」で詳しく書いた。

しかし、もし施主が現状を把握したいなら、以下の3つを見ることをお勧めする。

第一に、自分のリフォーム計画に含まれる主要工種を特定する。

すべての工種が値上がりしているわけではない。自分のリフォームが何の工種を中心とするかを明確にする。

第二に、その工種の主要建材がナフサ由来かどうかを確認する。

塗料・シンナー・断熱材(フェノール樹脂・ウレタン)はナフサ由来。木材・石膏ボード・鋼材は別系統。この区別を持つだけで、業界の煽りに対する免疫が大きく上がる。

第三に、業界の発信ではなく、複数業者の実勢価格(=見積もり)を比較する。

報道や業界誌の「資材高騰」記事よりも、実際の見積もり3社比較のほうが、施主の判断にはるかに役立つ。

これだけで、業界の煽りから距離を取った現実認識が得られる。

スケルトンリフォームを検討する場合の最新の価格動向は、当サイトのスケルトンリフォームでも別途整理しているので、関心のある方は参照していただきたい。

 

関連記事:

 

➡️ナフサショック完全解説2026|石油化学製品が消える日

➡️ナフサショックの次に何が起こるか——歴史的資材危機3度のパターンから見える予測

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➡️ スケルトンリフォームとは?費用・事例を500棟の実績で徹底解説

< この記事の著者情報 >

稲葉 高志

 

ハイウィル株式会社 四代目社長

1976年生まれ 東京都出身。

【経歴】

家業(現ハイウィル)が創業大正8年の老舗瓦屋だった為、幼少よりたくさんの職人に囲まれて育つ。

中学生の頃、アルバイトで瓦の荷揚げを毎日していて祖父の職人としての生き方に感銘を受ける。 日本大学法学部法律学科法職課程を経て、大手ディベロッパーでの不動産販売営業に従事。

この時の仕事環境とスキルが人生の転機に。  TVCMでの華やかな会社イメージとは裏腹に、当たり前に灰皿や拳が飛んでくるような職場の中、東京営業本部約170名中、営業成績6期連続1位の座を譲ることなく退社。ここで営業力の基礎を徹底的に養うことになる。その後、工務店で主に木造改築に従事し、100棟以上の木造フルリフォームを大工職人として施工、管理者として管理

2003年に独立し 耐震性能と断熱性能を現行の新築の最高水準でバリューアップさせる戸建てフルリフォームを150棟営業、施工管理に従事

2008年家業であるハイウィル株式会社へ業務移管後、 4代目代表取締役に就任。

250棟の木造改修の営業、施工管理に従事

2015年旧耐震住宅の「耐震等級3」への推進、「断熱等級6」への推進を目指し、 自身の通算500棟を超える木造フルリフォーム・リノベーション経験の集大成として、性能向上に特化した日本初の木造フルリオーム&リノベーションオウンドメディア 「増改築com®」をオープン

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