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更新日:2025/5/28
(出典:日経ホームビルダー)
我が国は、四方をプレートに囲まれた地震大国であり、その歴史は繰り返す大地震との戦いの歴史でもありました。そのたびに、私たちは多くの犠牲と引き換えに貴重な教訓を得て、建築物の安全基準、特に「耐震基準」を何度も見直し、強化してきたのです。建築基準法と日本の耐震基準の変遷は、まさに我が国の大地震の歴史そのものと深く連動してきたと言っても過言ではありません。
現行の建築基準法における耐震規定も、1995年に発生し、私たちの暮らしと価値観に大きな衝撃を与えた阪神・淡路大震災の甚大な被害の教訓から、2000年(平成12年)に大幅に改正されたものがベースとなり、今日に至っています。あの震災の際、多くの方が言葉を失うほどの被害が広がりましたが、一方で、当時の比較的新しい耐震基準(1981年改正の新耐震基準)をクリアしていた住宅では、倒壊などの致命的な被害が相対的に少なかったことから、「改正された基準は、一定の効果がある」というのが、私たち建築業界における定説となっていました。 その後、2011年の東日本大震災では、地震そのものの揺れによる被害以上に、巨大な津波(黒い津波)による被害が社会に大きな衝撃を与えましたが、この時は建築基準法の耐震規定そのものに直接的な大きな見直しはありませんでした。
しかし、2016年4月に発生した熊本地震における建物被害の状況は、私たち住まいづくりに携わるプロフェッショナルにとっても、そして多くの国民にとっても、これまでの「常識」を覆し、住宅の耐震性について改めて深く考えさせられる、極めて大きな衝撃をもたらすものとなりました。 その最大の理由は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて2000年に改正された、当時の最新の建築基準法(通称「2000年基準」)で建てられたはずの木造住宅にさえ、甚大な被害(倒壊を含む)が発生してしまったという、にわかには信じがたい事実です。
耐震基準の変遷と、熊本地震が突きつけた課題
これまで我が国では、大地震によって莫大な被害が発生するたびに、都市計画の見直しや、建築物の耐震性に関する様々な基準の強化が行われてきました。 現在、国の建築基準法で定められている耐震基準の基本的な考え方は、1981年(昭和56年)に建築基準法が大きく改正された際に導入された「新耐震設計法(新耐震基準)」がベースとなっています。この大改正の際に、特に木造住宅においては、地震に抵抗するために必要な壁の量(耐力壁の量)や、それぞれの壁が持つ強さ(耐力壁の倍率など)に関する規定が見直され、それ以前の基準と比較して耐震性が大きく向上したとされています。 この1981年6月1日以降に建築確認申請の手続きを経て建てられた建物を「新耐震基準の建物」、それ以前(1981年5月31日以前)に建てられた建物を「旧耐震基準の建物」と呼び、その耐震性能には明確な差がある、というのが一般的な認識です。
そして、この「新耐震基準」が導入された後に発生した最初の大規模な都市型地震が、前述の1995年の阪神・淡路大震災(マグニチュード7.3)でした。この震災では、高速道路が倒壊し、多くのビルが傾くなど、都市インフラにも甚大な被害がありましたが、住宅に関しては、この「新耐震基準」で建てられた比較的新しい建物の多くが、倒壊などの致命的な被害を免れた、とクローズアップされていました。この結果を受け、「新耐震基準の建物は、大地震に対して一定の効果がある」という認識が、社会に広く浸透したのです。そのため、私たちリフォーム業者が、既存住宅の改修やリノベーションを行う際にも、「その建物が『旧耐震』で建てられたものなのか、それとも『新耐震』で建てられたものなのか」ということは、耐震補強の方針を決定する上で、非常に大きな目安となる基準であり続けてきました。 しかし、それはあくまで、「旧耐震基準の建物」と「新耐震基準の建物」を比較した場合の話であり、「新耐震基準だから絶対に安全」という意味ではなかったのです。
その後、この「新耐震基準」は、阪神・淡路大震災での木造住宅の被害状況(特に、柱が土台や梁から引き抜かれる「柱頭柱脚抜け」や、壁の配置バランスが悪いために建物がねじれて倒壊するケースなどが多く見られました)を踏まえ、2000年(平成12年)に、木造住宅に関する規定がさらに強化されました。具体的には、
しかし、2016年の熊本地震では、この「2000年基準」で建てられたはずの比較的新しい木造住宅までもが倒壊してしまったのです。 熊本地震がこれまでの想定と大きく異なっていたのは、地震そのものの揺れ方が、私たちがかつて経験したことのないような、極めて特異なものであったという点です。気象庁の発表でも、震度7という、最も強い揺れが、わずか28時間の間に2回も発生したことが確認されています。多くの建物が、最初の大きな揺れ(前震)には何とか耐えたものの、その直後に襲ってきた、さらに大きな2回目の揺れ(本震)によって倒壊してしまった、というケースが非常に多かったのです。 これは、当時の「2000年基準」が、主に「一度だけ発生する、極めて稀な大地震」に対して倒壊しないことを目標として設計されていたため、このように短期間に強大な揺れが繰り返し襲ってくる「連続地震」に対しては、必ずしも十分な耐力を想定していなかった、という厳しい現実を露呈する結果となりました。
「耐震等級」というもう一つの基準と、熊本地震のさらなる衝撃
さらに、熊本地震の被害は、私たち建築の専門家にとって、もう一つ大きな衝撃をもたらしました。 「2000年基準」が適用された2000年6月の直後、同年10月には、住宅の品質をより客観的かつ分かりやすく評価するための**「住宅性能表示制度(長期優良住宅制度の基礎ともなる制度)」**が制定されました。この制度の中で、建物の耐震性能は、3段階の「耐震等級」という指標で示されるようになり、施主様にもご自身の家の耐震レベルが理解しやすいように、その基準が明確に定められたのです。
熊本地震で、私たち専門家が最も衝撃を受けたのは、この住宅性能表示制度における「耐震等級2」を取得し、建築基準法の最低基準の1.25倍の強度を持つとされ、通常であれば「絶対に倒壊しない」と考えられていたはずの木造住宅が、実際に倒壊してしまったという、信じがたい事実でした。 (ここで、「倒壊」と「全壊」という言葉の意味の違いを明確にしておく必要があります。「倒壊」とは、建物が押し潰されてしまい、居住者の生存空間が失われてしまうような状態を指します。一方、「全壊」とは、建物が大きく傾いたり、構造体に著しい損傷が生じたりして、経済的には修復が困難な状態を指しますが、必ずしも生存空間が完全になくなるとは限りません。つまり、「倒壊」は「全壊」の中でも最も深刻な被害状況であり、人命に直結する危険性が極めて高いのです。) 建築基準法で定められた最低限の耐震基準(耐震等級1)は、あくまで「大地震時に、居住者の生命の安全を守る(つまり、即座には倒壊せず、避難する時間を確保する)ための基準」であるとされています。しかし、熊本地震では、その1.25倍の強度を持つはずの耐震等級2の建物でさえ、倒壊に至ってしまったのです。
建築基準法は「最低限の基準」――施主自身が理解すべき「性能と被害のギャップ」
しかし、ここで私たちは、改めて冷静に考えなければなりません。 建築基準法そのものは、あくまで「国民の生命、健康及び財産の保護を図るため、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、その向上を図ることを目的とする」(建築基準法第1条より抜粋、一部要約)法律である、ということです。 つまり、法律が定めているのは、**「最低限の基準」**であり、「この基準さえクリアしていれば、どんな地震が来ても家は全く損害を受けない」「損傷もしない」とは、どこにも書かれてはいないのです。 仮に、大地震で命が助かったとしても、建物が半壊以上の大きな被害を受けてしまえば、その後の修繕や建て替えにかかる莫大な費用は、原則として全て自己負担となってしまうのが、厳しい現実です。実際に、過去の震災後には、そのような状況で二重ローンに苦しんでおられる被災者の方々も少なくありませんでした。
つまり、「建築基準法をクリアしているから、イコール絶対に安心」というわけではない、ということを、まず施主様ご自身が深く理解しておく必要があるのです。そして、ご自身がこれからリフォームで実現しようとしている、あるいは新築で建てようとしている住まいの「耐震性能のレベル(例えば、耐震等級1なのか、2なのか、3なのか)」と、それが「万が一、本当に大きな地震が来た際に、どの程度の被害を受ける可能性があるのか」という、**「期待する性能」と「実際に起こりうる被害」との間にある「ギャップ」**について、専門家から十分な説明を受け、納得した上で、ご自身の判断と責任において、その性能レベルを選択していく必要がある、ということです。
出典:日経ホームビルダー
熊本地震が私たちに突き付けた、重い教訓とは?
熊本地震の甚大な被害状況とその後の詳細な調査・分析結果は、私たち建築業界に、そしてこれから家づくりやリフォームをお考えの全ての施主様に対して、いくつかの非常に重い教訓を突き付けました。
これらの事実は、私たち住まいづくりのプロフェッショナルに対して、これまでの耐震設計に関する認識を根本から改め、より高いレベルの安全性を追求していく必要性を強く迫るものでした。そして同時に、施主様ご自身もまた、ご自身の住まいの耐震性能について、これまで以上に深い関心と正しい理解を持ち、専門家と共に、その向上に真剣に取り組んでいく必要がある、という段階に入ったことを示唆していると言えるでしょう。 もはや、「うちは1981年以降の新耐震基準で建てられているから大丈夫」という安易な考えは通用しません。たとえ新耐震基準で建てられた建物であっても、あるいはこれからリフォームを行う既存の建物(それが旧耐震基準で建てられたものであれ、新耐震基準で建てられたものであれ)においても、その所有者である施主様ご自身が、地震に対する正しい知識と心構えを持ち、そして専門家による適切な診断とアドバイスに基づいて、必要な対策を講じていくことが、何よりも重要であるということを、熊本地震は私たちに教えてくれたのです。
2025年建築基準法改正と、これからのリフォームにおける耐震性能
そして、この熊本地震の教訓は、今回の2025年の建築基準法改正にも、間接的ではありますが、大きな影響を与えていると私は考えています。 法改正によって、これまで建築確認申請が不要とされていた多くの木造2階建て住宅のリフォーム(新2号建築物の大規模修繕・模様替)においても、原則として確認申請が必須となり、その際には、現行の建築基準法(つまり、2000年基準をベースとした耐震性能)への適合が求められるようになりました。これは、既存住宅ストック全体の耐震性能を底上げし、将来の地震被害を少しでも軽減しようという、国としての強い意志の表れです。 しかし、「確認申請をしないリフォーム」という、ある意味で「次善の策」を選択せざるを得ない状況にある施主様にとっては、この「耐震性能の確保」という課題は、より一層、自己責任と専門家の技量が問われる、極めて重要なテーマとなります。 確認申請という公的なチェックを経ずに、いかにして建物の安全性を高め、万が一の地震に備えるのか。それには、まず正確な耐震診断が不可欠であり、そして、その結果に基づいて、たとえ「局所的」な補強であっても、最も効果的で、かつ建物全体のバランスを崩さない、適切な補強計画を、経験豊富な専門家と共に立案し、それを確実に実行していく必要があります。そして、その際には、熊本地震の教訓を踏まえ、単に「建築基準法ギリギリの耐震等級1相当」を目指すだけでなく、可能な範囲で、それ以上の、より高いレベルの安全性を追求する(例えば、耐力壁の量を基準よりも多めに確保する、あるいは接合部の金物をより強固なものにする、など)という視点も、ぜひ持っていただきたいと願っています。 愛着のある我が家を、そして何よりも大切なご家族の命を、いつ襲ってくるか分からない大地震から守るために、私たち専門家も、そして施主様ご自身も、共に知恵を絞り、最善を尽くしていく。それこそが、熊本地震という大きな犠牲の上に得られた、私たちが未来へと繋いでいかなければならない、最も重い教訓なのではないでしょうか。
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2025年(令和7年)4月1日より建築基準法改正が施行されました。現在大変混みあっております。
お問い合わせ・ご相談多数のため、ご返信、プランのご提案までに日数を頂いております。ご了承の程お願い申し上げます。
改正後の新法では、4号特例措置が廃止され、一般住宅の多くの建物である2階建て以下かつ200平方メートル以下の建築物は2号となり、大規模修繕・大規模模様替えを行う場合には、建築確認申請が必要となります。
大規模修繕や大規模模様替えを行う場合、
つまり、主要構造部(壁、柱、床、梁、屋根、階段)の50%を超える修繕工事等を行う場合は、建築確認申請が必要となることが決まりました。
今回の改正では、床の下地を含む張替え、階段の変更、間取りの変更等が含まれます。
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