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更新日:2025/12/11

新築(建て替え) vs リノベーション徹底比較

新築(建て替え)とリフォームどっちがお得?!

序章:2026年、「新築神話」は崩壊しました。

 

結論として、高度経済成長期の「新築を買えば安心」という常識は、2026年のインフレと金利上昇局面においては、家計を圧迫し未来を食いつぶす「危険な信仰」となりつつあります。

 

「どうして新築一択なの?」という経済合理性に基づいた問いこそが、これからの住宅選びの真理です。見栄や固定観念を捨て、資産価値とトータルコストの観点から、冷徹に比較検討する必要があります。

 

 

序章.1 モデルルームの「見栄」にお金を払う時代は終わった

 

あなたは今、新築の住宅展示場に立っています。真新しいフローリング、最新のキッチン設備、まだ誰も触れたことのない壁紙。「新しい」という事実だけで、なぜか心が高揚します。

「やっぱり新築がいいよね」 「中古は誰が住んでたか分からないし…」 「新築なら安心でしょ?」

この感覚、よく分かります。私たちは高度経済成長期以降、「新築=ステータス」「中古=妥協」という価値観の中で育ってきました。新築を買うことが、社会的成功の証であり、家族への愛情の証明であると。

しかし、2026年の今、冷静に考えてください。その「新しさ」に、あなたはいくら払うのでしょうか?

2026年現在、首都圏の注文住宅の平均坪単価は95万円〜120万円です。

30坪の家なら、建物だけで2,850万円〜3,600万円。土地代を含めれば、軽く7,000万円を超えます。

 

一方、築20年の中古住宅を購入し、スケルトンリノベーションで完全に生まれ変わらせる場合、

同じ30坪で総額4,500万円〜5,500万円が相場です。差額は1,500万円〜2,500万円

この差額は何でしょうか? それは「新築プレミアム」、つまり「誰も住んだことがない」という"見栄"への対価なのです。

住宅メーカーの利益率を見れば、この構造は明白です。大手ハウスメーカーの営業利益率は平均8〜12%。つまり、7,000万円の新築住宅のうち、560万円〜840万円は純粋な企業利益です。

 

さらに、この7,000万円の内訳を詳しく見てみましょう。

  • モデルハウス維持費:年間数千万円を、顧客価格に分散転嫁
  • テレビCM・広告費:大手は年間広告費100億円超、1棟あたり50万円〜100万円
  • 営業マンの人件費:歩合給を含め1棟あたり80万円〜150万円
  • 設計の標準化コスト:自由設計と言いながら、実は規格化されたプランの組み合わせ

 

これらすべてが、あなたの支払う「新築価格」に上乗せされています。あなたは「家」を買っているのではなく、「大手ハウスメーカーのブランドイメージと広告費」を買わされているのです。

対して、リノベーション専門業者の利益率は5〜8%程度。

無駄な広告費や展示場維持費がない分、あなたの払ったお金が、そのまま「家の性能」に還元されるのです。

同じ予算なら、断熱材のグレードを上げ、構造用合板を厚くし、窓を高性能樹脂サッシにできる。

つまり、新築は「マーケティング費用」に金を払い、リノベーションは「住宅性能」に金を払うという構造的な違いがあるのです。

 

 

序章.2 あなたが買うのは「30年後の資産」ですか?「一瞬の満足」ですか?

 

もっと残酷な真実をお伝えします。

国土交通省の「令和5年度住宅市場動向調査」によれば、木造戸建住宅の資産価値は、築20年でほぼゼロになります。つまり、あなたが7,000万円で買った新築の家は、20年後には土地代(例:3,000万円)しか評価されません。

建物価値4,000万円が、20年で蒸発するのです。年間200万円、月額約16.7万円の減価償却です。

「いや、それは会計上の話でしょ?」

そう思いたいでしょう。しかし、これは会計上の話ではなく、市場の現実です。

実際に築20年の木造住宅を売ろうとしても、不動産会社は「建物価格ゼロ、土地のみの評価」と査定します。

なぜなら、買主は「どうせ解体して建て替える」と考えるからです。

さらに厳しい現実があります。2025年4月から施行された「建築物省エネ法改正」により、

すべての新築住宅に「省エネ基準適合義務」が課されました。

つまり、2025年以前に建てられた住宅は、すべて「既存不適格建築物」となります。

省エネ基準を満たしていない住宅は、

今後の中古市場において「ローン審査で不利」「資産価値の大幅減少」という厳しい評価を受けることになります。

国土交通省の調査では、省エネ基準適合住宅と非適合住宅の資産価値の差は、**築10年で約15〜20%、築20年で約30〜40%**に達するとされています。

つまり、あなたが今「新築だから安心」と思って買った家も、10年後には「省エネ基準ギリギリ」の評価となり、資産価値下落が加速する可能性があるのです。

しかし、ここに逆転の発想があります。

 

すでに築20年で「価格下落が止まった」中古住宅を購入し、性能向上リノベーションで「令和の最新基準(耐震等級3、HEAT20 G2グレード断熱)」に引き上げた場合、その建物は「性能証明書付き=市場価値のある建物」として再評価されるのです。

国土交通省が推進する「住宅性能表示制度」や「増改築等工事証明書」により、性能が数値で証明された住宅は、築年数に関係なく資産価値が維持される時代になりました。

 

実際、私たちが手がけた築25年の住宅を、耐震等級3・断熱等級7(HEAT20 G3相当)に引き上げ、性能証明書を取得したケースでは、リノベーション後の査定額が工事前の1.8倍に跳ね上がった事例もあります。

 

価格下落が止まった築20年の家に、現代の最高性能を注入する。これが2026年における最も賢い資産形成戦略です。

 

 

序章.3 この記事で、あなたが手に入れる「判断基準」

この記事では、新築(建て替え)とリノベーションを、以下の9つの視点で徹底比較します。

 

  1. リノベーションのメリット - 補助金・コスト・人生の自由度
  2. リノベーションのデメリット - 物件選び・業者選びのリスク
  3. 工期の比較 - 新築より長い?短い?の真実
  4. リフォームとリノベーションの違い - 「消費」と「投資」の違い
  5. 新築自由設計 vs リノベーション - 同じ予算で何が手に入るか
  6. 新築企画型住宅 vs リノベーション - ローコスト新築の落とし穴
  7. 費用比較 - 総額で1,500万円差がつく理由
  8. 税金比較 - 固定資産税・不動産取得税の30年差
  9. 業者選び - 「大工」ではなく「エンジニア」を選ぶ基準

 

感情ではなく、数字とデータで判断してください。あなたの家族の未来がかかっています。

 

第1章:戸建フルリフォーム(リノベーション)のメリット

戸建フルリフォーム(リノベーション)のメリット
結論から申し上げます。2026年において、戸建てリノベーションは「新築神話」を過去のものにする唯一の「勝ち筋」です。 既存の骨組みを活かすことで生まれる「1,000万円規模のコストダウン」に加え、国策による「超大型補助金」をフル活用できるからです。浮いた資金は、住宅という「箱」ではなく、お子様の教育費や老後資金といった「人生の豊かさ」への投資に変わります。
 

 

1-1. 経済的メリット①:窓だけで最大100万円!「先進的窓リノベ2026」の特権

 

2026年度も継続が決定した「住宅省エネ2026キャンペーン」。その目玉であり、リノベーション市場最大の追い風となるのが「先進的窓リノベ2026事業」ですこの制度の核心は、「窓の断熱改修」に対して、工事費の約50%相当(1戸あたり最大100万円)を国が補助するという点にあります

 

【新築 vs リノベーション:窓性能の経済比較】

 

項目
新築(標準仕様)
新築(高性能OP)
リノベーション(補助金活用)
サッシ性能
アルミ樹脂複合など
樹脂サッシ+Low-E
樹脂サッシ+Low-E
イニシャルコスト
建物価格に含む
+約100万円
工事費 約200万円
補助金
基本的になし
基本的になし
▲最大100万円
実質負担感
性能は並
高額な追加負担
半額程度で最高性能

 

大手ハウスメーカーの新築標準仕様では、依然として「アルミ樹脂複合サッシ」が主流です。新築でリノベ同等の高性能樹脂サッシを求めれば、補助金なしで100万円単位のオプション費用が発生します。 一方、リノベーションであれば、国の補助金を使って実質負担を大幅に抑えながら最高グレードの断熱窓を手に入れることが可能です。これは既存住宅の省エネ化を急ぐ国策による「リフォーム優遇」の表れです。
 

 

1-2. 経済的メリット②:「みらいエコ住宅2026」でさらに最大100万円の上乗せ
 

 

メリットは窓だけではありません。2026年からは、旧「子育てエコホーム支援事業」が「みらいエコ住宅2026事業(Me住宅2026)」へと進化しました
この制度では、断熱改修やエコ住宅設備の設置を行うリフォームに対し、最大100万円(※改修前後の性能差による)の補助金が用意されています

 

【リフォームだけの特権:3省連携ワンストップ活用】
リノベーション工事を戦略的に計画すれば、以下の補助金を「総取り」することが可能です。

 

1. 窓・ドア:「先進的窓リノベ2026」で最大100万円

 

2. 給湯器:「給湯省エネ2026」で最大17万円(エネファーム等)

 

3. 全体断熱・設備:「みらいエコ住宅2026」で最大100万円(躯体断熱、バリアフリー等)

 

これらを組み合わせることで、最大200万円〜規模の補助金を獲得できる可能性があります。
一方、新築の場合、長期優良住宅の認定を受けても補助額は75万円〜(一定の条件を満たす場合)です。
「補助金をもらって高性能化する」という点において、2026年はリノベーションが圧倒的に有利な設計になっています。
 
 

 

1-3. 人生のメリット:家という「箱」への投資を適正化し、「暮らし」に資産を残す
 

 

新築価格が高騰する今、リノベーションを選択することで1,000万円〜1,500万円の差額を生み出すことが可能です
50代前後の施主様にとって、これは人生後半の資産形成を左右する重大な決断です。
 

 

【1,500万円の差額がもたらす未来】

 

新築(7,000万円)を選択:月々のローン返済に追われ、老後の蓄えや趣味への投資が制限されるリスクがあります。

 

リノベ(5,500万円)を選択:浮いた1,500万円を年利3%で10年間運用すれば、約2,000万円の資産になります

 

この資金は、「年金2,000万円問題」の解決策になるだけでなく、お子様・お孫様への援助、夫婦での海外旅行、あるいは介護への備えとなります。 家は「見栄を張るための装置」ではなく、「人生を豊かにするための基盤」です。
住宅性能(断熱・耐震)は妥協せず、過剰な広告宣伝費や新築プレミアムにお金を払わない。これが現代の賢い消費者の選択です。

 

1-4. 環境的メリット:「スクラップ&ビルド」からの脱却

 

最後に、社会的な意義についても触れておきます。 既存の基礎・柱・梁を再利用するリノベーションは、新築への建て替えに比べて廃棄物を約1/5〜1/10に抑え、CO2排出量を大幅に削減します 2050年カーボンニュートラルを目指す社会において、既存住宅の性能向上(断熱化)は最も重要視されているアクションの一つです。あなたがリノベーションを選ぶことは、ご自身の資産を守るだけでなく、お子様たちが暮らす未来の地球環境を守る選択でもあるのです。

第2章:戸建フルリフォーム(リノベーション)のデメリット

 

結論として、最大のデメリットは「物件選び」と「業者選び」を間違えると、資産価値ゼロの「負動産」を抱えるリスクがある点です。しかし、これは技術と知識で完全に回避可能です。

 

「中古は汚い・寒い・弱い」というのは、現代のエンジニアリング(性能向上技術)を知らない人の誤解に過ぎません。

2-1. デメリット①:「負動産リスク」- 人口減少エリアでの購入は、新築・中古問わず致命傷になる

リノベーションの最大のリスクは、「どこに建っているか」が資産価値を決定的に左右するという点です。

新築の場合、「新しい」というプレミアムにより、最初の5〜10年は立地が悪くても何とか売れます。

しかし、中古住宅を購入してリノベーションした場合、立地の良し悪しが即座に資産価値に反映されるのです。

国土交通省の「立地適正化計画」により、

全国の自治体は「居住誘導区域(住むべきエリア)」と「居住誘導区域外(住むべきでないエリア)」を明確化しつつあります。

 

【負動産化するエリアの特徴】

  1. 駅から徒歩30分以上(車がないと生活できない)
  2. 人口減少率が年1%以上(2040年に人口が現在の8割以下)
  3. 浸水想定区域・土砂災害警戒区域内(ハザードマップ赤色エリア)
  4. 空き家率が20%以上(近隣に廃墟が目立つ)
  5. 小学校・スーパーが撤退済み(生活インフラ崩壊)

このようなエリアで中古住宅を購入し、いくら高性能リノベーションをしても、将来的に売却できない・資産価値ゼロになります。

実例をお話しします。

 

茨城県南部の某市で、築18年の中古住宅(購入価格1,200万円)に2,000万円かけてフルリノベーションをしたお客様がいました。

耐震等級3、断熱等級6(HEAT20 G2)、太陽光発電付き。性能は申し分ありません。

しかし、5年後に転勤で売却しようとしたところ、不動産会社の査定額は1,800万円。総投資額3,200万円に対して、1,400万円の損失です。

理由は明白でした。その地域は人口減少率が年1.2%、最寄り駅まで車で15分、小学校は統廃合で隣町まで通学バス。いくら家の性能が高くても、「誰も住みたくないエリア」では資産価値は守れないのです。

逆に、東京都世田谷区で築25年の中古住宅(購入価格5,500万円)に2,500万円かけてリノベーションしたお客様は、7年後に1億1,000万円で売却できました。総投資額8,000万円に対して、3,000万円の利益です。

この差は何か?「立地」です。

リノベーションを選ぶなら、「絶対に資産価値が下がらないエリア」を選ぶことが絶対条件です。

 

【資産価値を守るエリアの選定基準】

  • 駅徒歩15分以内(できれば10分以内)
  • 人口増加または横ばいエリア
  • ハザードマップで安全なエリア(浸水・土砂災害リスクなし)
  • 小学校・スーパー・病院が徒歩圏内
  • 大手企業の社宅・公務員宿舎が多いエリア(安定需要)

このような「勝ちエリア」で中古を買ってリノベーションすれば、資産価値は確実に守れます。

 

 

2-2. デメリット②:「隠れた劣化リスク」- 解体後に判明する雨漏り・シロアリの恐怖

 

リノベーションの第二のリスクは、「解体してみないと分からない」という不確実性です。

新築は真っさらな土地にゼロから建てるため、構造的なリスクはほぼありません。

しかし、中古住宅は「過去の30年間の履歴」を背負っています。

特に恐ろしいのが、「雨漏り」と「シロアリ」です。

【実例:解体後に判明した最悪のケース】

神奈川県横浜市で、築22年の中古住宅(購入価格3,800万円)のリノベーションを請け負った案件がありました。

事前調査では「特に問題なし」と判断され、見積もりは2,200万円。総予算6,000万円でスタートしました。

しかし、スケルトン解体を進めると、天井裏から雨水の浸入跡が大量に発見されました。

外壁の劣化により、過去10年間にわたって雨水が侵入し続けていたのです。

さらに、浴室下の土台と柱にシロアリ被害が広範囲に発覚。構造材の約30%が強度不足の状態でした。

結果、追加工事が発生しました。

  • 雨漏り補修・外壁全面やり替え:+450万円
  • シロアリ被害箇所の構造材交換:+380万円
  • 追加費用合計:+830万円
  • 最終総額:3,030万円(当初見積もり2,200万円から+38%)

このように、「見えないリスク」が潜んでいるのが中古住宅の怖さです。

ただし、これは回避可能なリスクです。以下の対策を徹底すれば、ほぼ100%防げます。

 

【隠れた劣化を見抜く5つの調査項目】

  1. インスペクション(住宅診断)の実施

    • 建築士による構造・雨漏り・シロアリの詳細調査
    • 費用:5万円〜10万円(絶対にケチってはいけない)
  2. 床下・天井裏の目視確認

    • 懐中電灯を持って自分で潜る(業者任せにしない)
    • シロアリの蟻道、雨染み、カビ臭をチェック
  3. 外壁の打診調査

    • 外壁を叩いて浮きや剥離を確認
    • コーキング(シーリング)の劣化状態をチェック
  4. 屋根裏の確認

    • 雨染みの有無、断熱材の状態、野地板の腐食
  5. 過去の修繕履歴の確認

    • 売主から「修繕履歴書」を入手
    • 大規模修繕(屋根・外壁)の実施年を確認

 

これらの調査を購入前に徹底すれば、「買ってはいけない物件」を見抜けるのです。

私たちは5,000棟以上のリノベーション経験から、「購入前の物件調査で90%のリスクは排除できる」と断言します。

問題は、この調査をしない・できない業者に依頼してしまうことです。

 

 

2-3. デメリット③:「性能の誤解」- スケルトンリノベなら「新築そっくり」ではなく「新築以上」になる

 

「中古は寒い」「中古は耐震性が不安」「中古は設備が古い」

このような誤解が、リノベーションを遠ざけています。

しかし、これは現代のリノベーション技術を知らない人の偏見です。

スケルトンリノベーション(骨組みだけを残して全てやり直す)を正しく行えば、

性能は「新築そっくり」ではなく「新築以上」になります。

 

【性能比較:新築 vs スケルトンリノベーション】

性能項目 大手ハウスメーカー新築(標準仕様) スケルトンリノベーション(高性能仕様)
耐震性能 耐震等級2〜3(構造計算なし) 耐震等級3(許容応力度計算実施)
断熱性能 断熱等級5(省エネ基準ギリギリ) 断熱等級6〜7(HEAT20 G2〜G3)
窓性能 アルミ樹脂複合サッシ 樹脂サッシ+トリプルガラス
気密性能 C値=2.0〜5.0(測定なし) C値=0.5以下(全棟測定)
換気性能 第3種換気(自然排気) 第1種換気(熱交換型)

 

なぜ、リノベーションの方が高性能になるのか?

理由は単純です。予算配分の自由度です。

新築は「土地」「建物」「外構」「諸費用」にお金が分散します。

建物に3,600万円かけても、そのうち「性能(断熱・耐震)」に使えるのは500万円程度です。

一方、リノベーションは土地代がかからず(すでに保有または中古で取得済み)、

予算の大部分を「性能向上」に集中投下できるのです。

 

例えば、総額3,000万円のリノベーション工事なら、

  • 耐震補強:500万円
  • 断熱改修(壁・床・天井・窓):800万円
  • 高性能設備(全館空調・熱交換換気):300万円

合計1,600万円を純粋に性能向上に投資できます。これは、新築では絶対に不可能な予算配分です。

 

実際、私たちが手がけた築28年の住宅は、リノベーション後に「新築時の光熱費の1/3」になりました。

冬の室温は全室22℃以上を維持し、夏はエアコン1台で全館冷房。

お客様からは「新築の時より快適。むしろ新築の時がいかに寒かったか思い知った」との声をいただきました。

つまり、「中古=性能が低い」は過去の常識であり、「高性能リノベーション=新築を超える」が2026年の現実なのです。

 

 

2-4. デメリットの本質:「知識のない業者」に任せることが最大のリスク

ここまで読んで気づいたでしょうか。

リノベーションのデメリットは、すべて「知識と技術で回避可能」なのです。

  • 立地リスク → 購入前のエリア調査で回避
  • 劣化リスク → インスペクションで回避
  • 性能不安 → 高性能設計で新築以上に

つまり、リノベーションの真のデメリットは「知識のない業者に依頼してしまうこと」です。

「中古住宅のリフォームやってます」という業者の99%は、

  • 構造計算ができない(耐震性を数値で証明できない)
  • 断熱設計ができない(HEAT20を知らない)
  • 劣化診断ができない(インスペクション未対応)

このような業者に依頼すれば、当然失敗します。

逆に、構造設計一級建築士が在籍し、インスペクション・耐震診断・断熱設計を一貫して行える業者に依頼すれば、

リノベーションのデメリットは限りなくゼロに近づきます。

業者選びこそが、リノベーション成功の99%を決めるのです(詳細は第9章で解説)。

第3章:戸建フルリフォーム(リノベーション)の工期を新築と比較

 

結論として、本物のリノベーションの工期は、新築以上に長くなります。なぜなら、解体後に「見えない爆弾(劣化)」を探し出し、治療するプロセスが不可欠だからです。

 

工期の短さを売りにする業者は、この重要な「治療」を省いている可能性があります。

3-1. 新築の工期:「4〜6ヶ月」は本当か? 実際は「8〜12ヶ月」が現実

まず、新築の工期について正確に理解しましょう。

大手ハウスメーカーの営業マンは「着工から完成まで4ヶ月です」と言います。しかし、これは「基礎着工から引き渡しまで」の期間であり、実際にあなたが動き始めてから住めるようになるまでのトータル期間ではありません。

【新築のリアルな全体スケジュール】

フェーズ 期間 内容
土地探し 1〜6ヶ月 希望エリアで適切な土地が見つかるまで
地盤調査・改良 1ヶ月 地盤が弱ければ改良工事(+2週間)
設計・プラン確定 2〜3ヶ月 間取り打ち合わせ、仕様決定
建築確認申請 1〜2ヶ月 法的手続き、審査期間
解体(既存建物あり) 1ヶ月 建て替えの場合
基礎工事 1ヶ月 配筋・型枠・コンクリート養生
上棟〜完成 3〜4ヶ月 構造・外装・内装・設備
外構工事 1ヶ月 駐車場・庭・門扉
引き渡し・入居 1週間 最終検査・鍵引き渡し
合計 8〜12ヶ月 土地なしの場合は+3〜6ヶ月

 

つまり、「4ヶ月で完成」という宣伝文句は、全体の一部だけを切り取った数字なのです。

実際には、土地探しから入居まで最短8ヶ月、平均12ヶ月、長ければ18ヶ月かかります。

さらに、2024年以降は建築資材の供給不足により、「納期未定」という悪夢が頻発しています。

特に以下の資材は要注意です。

  • 木材(構造材):国産材不足で納期+1〜2ヶ月
  • 住宅設備(キッチン・ユニットバス):半導体不足で納期+2〜3ヶ月
  • 窓サッシ:アルミ供給不足で納期+1ヶ月

これらの遅延が重なると、予定より4〜6ヶ月遅れることもザラにあります。

「春に引っ越し予定だったのに、結局秋になった」というお客様の声を、私たちは何度も聞いています。

 

 

3-2. リノベーションの工期:「調査」と「設計」に時間をかけるのがプロの証

では、リノベーションの工期はどうでしょうか。

【スケルトンリノベーションの全体スケジュール(築20年・30坪想定)】

フェーズ 期間 内容
物件探し 1〜3ヶ月 中古住宅の選定・購入
インスペクション(住宅診断) 1週間 構造・劣化・雨漏り・シロアリ調査
詳細設計・プラン確定 2〜3ヶ月 間取り・性能・仕様の決定、構造計算
建築確認申請(増築時) 1〜2ヶ月 10㎡以上増築する場合のみ必要
仮住まい移転 1週間 工事中の引っ越し(必要に応じて)
解体工事 2週間 スケルトン状態にする
追加調査・補強設計 1週間 解体後に判明した劣化箇所の対策
構造補強・断熱工事 2ヶ月 耐震・断熱・防蟻・配管更新
内装・設備工事 2ヶ月 壁・床・天井・キッチン・バス
外装・外構工事 1ヶ月 外壁・屋根・庭
竣工検査・引き渡し 1週間 性能測定(気密測定等)・最終検査
合計 7〜10ヶ月 物件探しを除けば5〜7ヶ月

新築とほぼ同じか、やや短い印象を受けるかもしれません。

しかし、ここには決定的な違いがあります。

それは、「解体後の追加調査・補強設計」というフェーズです。

 

 

3-3. 「解体して初めて分かる真実」と向き合う誠実さ

新築は、まっさらな土地にゼロから建てるため、「予想外の事態」はほとんど起きません

地盤が軟弱であることが判明しても、それは着工前に分かります。

しかし、リノベーションは違います。解体して初めて分かる劣化が必ず存在します。

 

【実例:解体後に判明した「想定外」の数々】

ケース1:千葉県船橋市・築24年

  • 事前調査では「特に問題なし」
  • しかし解体後、北側外壁の内部に雨水浸入跡を発見
  • 原因:外壁サイディングの継ぎ目のコーキングが劣化
  • 対策:外壁下地の構造用合板を全面張り替え(+50万円)
  • 工期への影響:+2週間

ケース2:埼玉県さいたま市・築19年

  • 事前調査で「床下に若干の湿気」を確認
  • 解体後、浴室下の土台に広範囲なシロアリ被害を発見
  • 対策:土台・柱の交換、防蟻処理の徹底(+80万円)
  • 工期への影響:+3週間

ケース3:東京都練馬区・築27年

  • 事前調査では「屋根は問題なし」
  • 解体後、天井裏の梁に雨染み、野地板の一部が腐食
  • 原因:過去の台風で屋根瓦がズレ、10年間雨漏りしていた
  • 対策:屋根全面葺き替え、梁の補強(+120万円)
  • 工期への影響:+4週間

このように、解体後に2〜4週間の工期延長は、リノベーションでは「想定内」です。

ここで重要なのは、この追加期間を「無駄」と考えるか、「命を守る治療期間」と考えるかです。

雨漏りやシロアリを放置したまま綺麗に仕上げても、5年後には再び劣化が進行し、「安物買いの銭失い」になります。

本物のリノベーション業者は、解体後の調査を徹底し、「今なら治せる病気」をすべて洗い出します

その結果、工期は延びますが、30年後も安心して住める家になるのです。

工期の短さを優先し、劣化を見て見ぬふりをする業者は、「詐欺師」と同じです。

 

 

3-4. 設計期間の長さ:既存の制約の中で、耐震等級3を導き出す高度な計算

 

リノベーションの設計期間が新築より長くなるもう一つの理由は、「既存建物の制約」です。

新築の設計は、白紙のキャンバスに絵を描くようなものです。自由に柱を配置し、壁を作り、窓を設ければいい。

しかし、リノベーションの設計は、「既存の柱・梁・基礎という制約の中で、最適解を導き出すパズル」です。

 

【リノベーション設計の難しさ:実例で解説】

築22年の住宅、1階をLDK一体空間にしたい(壁を撤去して広々と)

  • 新築の場合:構造計算で必要な耐力壁の量を算出し、自由に配置すればOK
  • リノベーションの場合
    1. 既存の柱・梁の位置を実測(図面と実際が違うことが多い)
    2. 既存の基礎の状態を調査(鉄筋の有無、強度)
    3. 現状の耐震性能を計算(多くの場合、等級1未満)
    4. 壁を撤去した場合の耐震性能を再計算
    5. 不足する耐力を、どの位置に補強すれば最小コストで等級3を達成できるかシミュレーション
    6. 基礎の補強が必要か判断(必要なら+200万円)

このプロセスは、構造設計一級建築士でなければ不可能です。

そして、この計算に最低1ヶ月、複雑なケースでは2ヶ月かかります。

「うちは2週間で設計できます」という業者は、構造計算をしていない(耐震性能を数値で証明していない)可能性が高いです。

つまり、リノベーションの設計期間が長いことは、「手抜きをしていない証拠」なのです。

 

 

3-5. トータル期間の比較:「住み始めるまで」で考えれば、リノベーションが有利

では、改めてトータル期間で比較しましょう。

【新築 vs リノベーション:住み始めるまでの期間】

項目 新築(注文住宅) 新築(建売) リノベーション
土地・物件探し 3〜6ヶ月 1〜3ヶ月 1〜3ヶ月
設計・申請 3〜5ヶ月 不要 2〜4ヶ月
工事期間 6〜8ヶ月 即入居 4〜6ヶ月
合計 12〜19ヶ月 1〜3ヶ月 7〜13ヶ月

建売住宅を除けば、リノベーションの方が2〜6ヶ月早いことが分かります。

さらに重要なのは、リノベーションは「仮住まい不要」のケースが多いという点です。

 

  • 自己所有の家をリノベーションする場合、工事中は仮住まいが必要(4〜6ヶ月、家賃50万円〜80万円)
  • 中古購入+リノベーションの場合、現在の家に住み続けながら工事を進め、完成後に引っ越せばOK(仮住まい不要)

 

一方、新築(建て替え)の場合、必ず仮住まいが必要です(8〜12ヶ月、家賃100万円〜150万円)。

つまり、トータルの生活コスト・時間コストで考えれば、リノベーションの方が有利なのです。

 

 

3-6. 「工期の短さ」より「完成後の安心」を選ぶべき理由

最後に、あなたに問いたいのです。

「1ヶ月早く住めるが、耐震性能が不明な家」と「1ヶ月遅いが、耐震等級3が証明された家」、どちらを選びますか?

工期の短さは、「業者の都合」です。早く引き渡せば、早く次の客を取れる。人件費も抑えられる。

しかし、あなたの家族の命と30年間の安心は、1ヶ月の違いより遥かに重要ではないでしょうか。

私たちは5,000棟のリノベーション経験から断言します。

「工期を急ぐ客ほど、5年後に後悔する」 「時間をかけて調査・設計した家ほど、30年後も安心して住める」

工期の長さを「デメリット」と捉えるのではなく、「家族の未来への投資期間」と捉えてください。

第4章:リフォームとリノベーションの違い

結論として、2026年基準において、リフォームは「消費(消耗品)」であり、性能向上リノベーションは「投資(資産)」です。

 

単に綺麗にするだけの工事にお金を払うのはやめましょう。国が評価するのは「省エネ・耐震性能」だけです。

 

 

4-1. リフォームとは:「見た目を整える消費行為」

 

まず、一般的な「リフォーム」の定義を明確にしましょう。

リフォームとは、「老朽化した設備や内装を、新しいものに交換・修繕する工事」です。

英語の "reform" は「改良・改善」を意味しますが、日本の住宅業界では「原状回復」に近い意味で使われています。

 

【典型的なリフォーム工事の例】

  • キッチンの交換(古いキッチンを最新モデルに)
  • ユニットバスの交換(20年前のものを新品に)
  • トイレの交換(洋式→温水洗浄便座付き)
  • 壁紙(クロス)の張り替え
  • フローリングの張り替え
  • 外壁の塗り替え
  • 屋根の塗装

 

これらは確かに「新しく」なり、「綺麗に」なります。しかし、家の基本性能(耐震性・断熱性・気密性)は一切向上しません

例えば、300万円かけてキッチンとユニットバスを最新モデルに交換したとします。確かに見た目は劇的に変わります。しかし、

  • 冬の寒さは変わらない(断熱性能ゼロ改善)
  • 地震に対する強さは変わらない(耐震性能ゼロ改善)
  • 光熱費は変わらない(省エネ性能ゼロ改善)
  • 資産価値は上がらない(不動産査定では「設備は消耗品」扱い)

 

つまり、リフォームは「生活の快適性」を一時的に高めるが、「家の資産価値」には寄与しないのです。

国土交通省の「既存住宅の評価に関するガイドライン」でも、

設備交換や内装リフォームは「経年劣化の原状回復」と見なされ、資産価値の加点要素にはなりません。

さらに厳しい現実があります。

設備機器の寿命は10〜15年です。

つまり、300万円かけてキッチンとバスを交換しても、15年後にはまた交換が必要になります。

300万円は「消費」であり、「投資」ではないのです。

 

 

4-2. リノベーションとは:「性能を向上させる投資行為」

一方、リノベーションとは、「住宅の性能を、現行基準またはそれ以上に引き上げる工事」です。

英語の "renovation" は「刷新・修復」を意味し、単なる原状回復ではなく、価値の再生・向上を指します。

 

【性能向上リノベーションの具体例】

  • 耐震性能の向上:耐震診断 → 構造計算 → 耐力壁・筋交い・金物の追加 → 耐震等級3取得
  • 断熱性能の向上:壁・床・天井に高性能断熱材(グラスウール16K相当 → セルローズファイバーまたはウレタン吹付)
  • 窓性能の向上:アルミサッシ → 樹脂サッシ+Low-Eガラス(U値4.65 → 1.3以下)
  • 気密性能の向上:気密テープ・気密シートの施工 → C値5.0以上 → C値0.5以下
  • 換気性能の向上:第3種換気(自然排気) → 第1種換気(熱交換型、換気による熱損失70%削減)
  • 省エネ設備の導入:ガス給湯器 → エコキュート(ヒートポンプ給湯)、LED照明、太陽光発電

 

これらの工事は、すべて「数値で証明できる性能向上」です。

そして、この性能向上は、国が公式に評価する「住宅性能表示制度」により、資産価値として認められます。

 

【住宅性能表示制度における評価項目】

性能項目 リフォーム後 性能向上リノベーション後 資産価値への影響
耐震等級 不明(計算なし) 等級3(許容応力度計算) 査定+10〜15%
断熱等性能等級 等級2〜3(無断熱〜最低限) 等級6〜7(HEAT20 G2〜G3) 査定+5〜10%
一次エネルギー消費量等級 等級3〜4 等級6(ZEH相当) 査定+5%

つまり、性能向上リノベーションを行うと、資産価値が合計20〜30%向上するのです。

 

具体例を挙げましょう。

  • 築25年の中古住宅、購入価格2,500万円(土地1,500万円、建物1,000万円)
  • 性能向上リノベーション費用2,000万円
  • 総投資額4,500万円

この住宅が、耐震等級3・断熱等級7を取得し、性能証明書を得た場合、不動産査定額は以下のようになります。

  • 土地:1,500万円(不変)
  • 建物:1,000万円 × 1.25(性能向上による加点) = 1,250万円
  • 総査定額:2,750万円(工事前2,500万円から+250万円)

一方、同じ2,000万円を「リフォーム」に使った場合、

  • 土地:1,500万円(不変)
  • 建物:1,000万円(性能証明がないため加点なし)
  • 総査定額:2,500万円(変化なし)

つまり、同じ2,000万円でも、性能向上に使えば250万円資産価値が上がり、見た目だけのリフォームに使えば0円なのです。

 

 

4-3. 2026年の決定的な違い:「増改築等工事証明書」があるか、ないか

2026年現在、リフォームとリノベーションを分ける最も重要な境界線は、

「増改築等工事証明書」を取得できるかどうかです。

この証明書は、国土交通省が定める基準に基づき、

「この工事により、住宅の性能が確実に向上した」ことを公的に証明する書類です。

 

【増改築等工事証明書の取得条件】

  1. 耐震性能の向上:現行の耐震基準(2000年基準)を満たす、または耐震等級1以上
  2. 省エネ性能の向上:省エネ基準(断熱等級4以上)を満たす
  3. 工事費用100万円超:一定規模以上の工事であること
  4. 建築士による証明:第三者の建築士が性能向上を確認・証明

この証明書があると、以下の圧倒的なメリットが得られます。

 

【増改築等工事証明書のメリット】

メリット項目 内容
住宅ローン減税 中古住宅でも最大13年間、借入限度額3,000万円(長期優良住宅なら4,500万円)
登録免許税の軽減 所有権移転登記の税率 2.0% → 0.3%(約85%減)
不動産取得税の軽減 控除額が拡大(最大1,200万円控除)
リフォーム減税 所得税から最大62.5万円控除(耐震+省エネ工事)
固定資産税の減額 翌年度の固定資産税が1/3〜2/3減額(1〜2年間)
金融機関の評価向上 住宅ローン審査が有利に(金利優遇の可能性)

一方、「増改築等工事証明書」のない単なるリフォームでは、これらのメリットは一切受けられません

 

実例を見てみましょう。

【ケースA:増改築等工事証明書あり(性能向上リノベーション)】

  • 中古住宅購入価格3,000万円 + リノベーション2,000万円 = 総額5,000万円
  • 住宅ローン減税(13年間):年間最大21万円 × 13年 = 273万円
  • 登録免許税の軽減:約30万円
  • 不動産取得税の軽減:約50万円
  • リフォーム減税:62.5万円
  • 合計税制メリット:約415万円

【ケースB:増改築等工事証明書なし(通常リフォーム)】

  • 中古住宅購入価格3,000万円 + リフォーム2,000万円 = 総額5,000万円
  • 住宅ローン減税:対象外(築年数・性能基準を満たさない)
  • その他の税制優遇:すべて対象外
  • 合計税制メリット:0円

同じ5,000万円を使っても、415万円の差がつくのです。

つまり、2026年においては、「増改築等工事証明書を取得できる性能向上リノベーション」だけが、経済合理性のある選択なのです。

 

 

4-4. 「BELS(ベルス)」で、あなたの家の価値を「見える化」する

 

さらに、性能向上リノベーションでは、「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)」という評価書を取得することで、住宅の省エネ性能を5段階の星マークで表示できます。

 

BELSは、国土交通省が定める公的な評価制度であり、住宅の省エネ性能を第三者機関が客観的に評価します。

【BELS評価の星ランク】

星ランク 省エネ性能 該当する住宅
省エネ基準相当 2025年以降の新築最低ライン
☆☆ 省エネ基準より10%削減 一般的な省エネ住宅
☆☆☆ 省エネ基準より20%削減 高性能住宅
☆☆☆☆ 省エネ基準より30%削減 ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
☆☆☆☆☆ 省エネ基準より40%以上削減 LCCM住宅(ライフサイクルカーボンマイナス)

性能向上リノベーションでBELS☆☆☆☆(ZEH相当)を取得すれば、築25年の中古住宅でも、

「新築のZEH住宅と同等の省エネ性能」であることが証明されます。

この評価書があることで、

  • 不動産売却時に「高性能住宅」として高値で売れる
  • 賃貸に出す場合、「光熱費が安い」という強力な訴求点になる
  • 金融機関から「環境配慮型住宅ローン」の金利優遇を受けられる

つまり、BELSは「家の通信簿」であり、資産価値を市場に証明する武器なのです。

一方、通常のリフォームでは、BELSを取得することはできません(性能向上がないため)。

 

 

4-5. リフォームとリノベーションの本質的な違い:「消費」か「投資」か

 

ここまで読んで、気づいたでしょうか。

リフォームとリノベーションの違いは、単に「工事の規模」や「金額」の問題ではありません。

 

本質的な違いは、「消費」か「投資」かなのです。

  • リフォーム:見た目を整えるための「消費」。10〜15年で価値ゼロ。資産価値への寄与なし。
  • リノベーション:性能を向上させるための「投資」。30年以上価値が持続。資産価値20〜30%向上。

 

あなたが2,000万円を使うとき、

「10年後に価値ゼロになる消費」に使いますか? それとも、 「30年後も資産価値を生み出す投資」に使いますか?

答えは明白です。

 

2026年の今、国が推進しているのは「性能向上リノベーション」です。

だからこそ、補助金も税制優遇も、すべて「性能向上」に集中しているのです。

単に綺麗にするだけの工事にお金を払うのは、もうやめましょう。

第5章:新築自由設計 vs フルリフォーム(リノベーション)

 

結論として、インフレ時代の残酷な方程式により、同じ予算なら「新築=狭くて低品質」、「リノベ=広くて高品質」となります。

 

建築費高騰の中で新築にこだわれば、断熱材を薄くし、窓を小さくするしかありません。

リノベーションなら、既存の資源を活かして最高グレードの仕様が手に入ります。

 

 

5-1. 「自由設計」という幻想:実は8割が「規格化されたプランの組み合わせ」

 

大手ハウスメーカーの営業マンは、必ずこう言います。

「当社は完全自由設計です。お客様のご要望を100%実現します」

しかし、これはマーケティング上の「自由」であり、構造的な意味での自由ではありません。

大手ハウスメーカーの「自由設計」の実態は、以下のようなものです。

 

【新築自由設計の制約】

  1. 構造システムの制約

    • 木造軸組工法なら「910mmまたは1,000mmモジュール」に柱が固定
    • 2×4工法なら「壁で支える構造」のため、大空間(柱のない広いLDK)は困難
    • 鉄骨造なら「3尺・6尺グリッド」に柱位置が固定
  2. 標準プランからの派生

    • カタログに掲載された「基本プラン30種類」の組み合わせ
    • 「完全オリジナル」は可能だが、設計料+50万円〜100万円
    • さらに、構造計算の都合上、「できません」と言われることも
  3. コストの制約

    • 標準仕様から外れると、すべて「オプション料金」
    • 「吹き抜けが欲しい」→ +80万円(2階床面積が減るのに追加料金)
    • 「大開口の窓が欲しい」→ +120万円(構造補強費用)
    • 「無垢フローリングにしたい」→ +150万円(標準は合板フローリング)

つまり、「自由」には金がかかるのが新築の現実です。

 

さらに、2024年以降の建築費高騰により、「標準仕様でギリギリ予算内」という状況が常態化しています。

オプションを追加する余裕など、ほとんどの人にはありません。

 

 

5-2. 同じ予算5,500万円で比較:新築は「28坪・標準仕様」、リノベは「35坪・高性能仕様」

 

では、具体的な数字で比較しましょう。

 

予算5,500万円(土地なし、建物+工事費のみ)で、何が手に入るか?

【パターンA:新築自由設計(大手ハウスメーカー)】

項目 内容 金額
建物本体(28坪) 坪単価110万円 × 28坪 3,080万円
付帯工事 地盤改良・外構・照明・カーテン等 800万円
設計料 標準プランのカスタマイズ 150万円
諸費用 登記・ローン手数料・火災保険等 250万円
消費税 上記合計の10% 428万円
合計   4,708万円
予算残 オプション追加可能額 792万円

オプションで追加したい項目:

  • 高性能樹脂サッシ(全窓):+100万円
  • 無垢フローリング(LDKのみ):+80万円
  • 造作キッチン:+150万円
  • 太陽光発電(5kW):+180万円
  • 断熱グレードアップ(HEAT20 G2):+120万円
  • 外壁タイル仕様:+200万円

合計+830万円 → 予算オーバー

結果:標準仕様の28坪住宅しか手に入らない。

標準仕様の内容:

  • 断熱:グラスウール(10K〜16K)、断熱等級5ギリギリ
  • 窓:アルミ樹脂複合サッシ
  • 床:合板フローリング(プリント柄)
  • 耐震:耐震等級2(構造計算なし)
  • 換気:第3種換気(自然排気)

 

【パターンB:性能向上リノベーション】

項目 内容 金額
中古住宅購入(35坪) 築20年、駅徒歩12分、好立地 2,800万円
スケルトンリノベーション 耐震・断熱・設備すべて刷新 2,500万円
諸費用 登記・ローン手数料・火災保険等 200万円
合計   5,500万円
補助金 先進的窓リノベ+子育てエコホーム ▲200万円
実質負担   5,300万円

リノベーション後の仕様:

  • 延床面積:35坪(新築比+7坪 = +25%)
  • 断熱:セルローズファイバー200mm、断熱等級7(HEAT20 G3)
  • 窓:樹脂サッシ+Low-Eトリプルガラス(全窓)
  • 床:無垢フローリング(ナラ・パイン等)
  • 耐震:耐震等級3(許容応力度計算済み)
  • 換気:第1種換気(熱交換型、換気効率90%)
  • 太陽光:5kW搭載可能(構造・屋根が対応済み)
  • 気密性能:C値0.5以下(全棟気密測定実施)

 

【比較表:新築 vs リノベーション】

項目 新築自由設計(28坪) 性能向上リノベ(35坪)
延床面積 28坪(92.4㎡) 35坪(115.5㎡) +7坪
断熱性能 等級5(省エネ基準) 等級7(G3) +2等級
窓性能 アルミ樹脂複合 樹脂トリプル U値1/3
耐震性能 等級2(計算なし) 等級3(計算済み) +1等級
気密性能 C値3.0〜5.0 C値0.5以下 1/6〜1/10
床材 合板 無垢 質感◎
実質負担 4,708万円 5,260万円 +552万円

たった552万円の差(月々約1.5万円)で、7坪広く、性能は2段階上の家が手に入るのです。

 

 

5-3. インフレ時代の残酷な方程式:新築は「削る」しかない

なぜ、このような逆転現象が起きるのか?

答えは、建築費高騰です。

2020年から2026年にかけて、新築建築費は以下のように高騰しています。

 

【建築費の推移(坪単価)】

  • 2020年:70万円〜85万円
  • 2022年:85万円〜100万円(ウッドショック)
  • 2024年:100万円〜120万円(資材高・人件費高)
  • 2026年:105万円〜125万円(高止まり)

つまり、わずか6年で坪単価が約40%上昇したのです。

30坪の家なら、2020年は2,550万円で建てられたものが、2026年には3,600万円かかる計算です。+1,050万円

しかし、あなたの年収は6年で40%上がりましたか? 上がっていませんよね。

つまり、同じ予算なら、家を小さくするか、性能を下げるか、どちらかを選ぶしかないのです。

実際、大手ハウスメーカーの営業マンは、こう言い始めています。

「30坪は厳しいですね。28坪に抑えれば、何とか予算内に収まります」

「断熱材のグレードを一つ下げれば、50万円浮きますよ」

「窓の数を減らせば、構造も簡単になってコストダウンできます」

これが、新築の現実です。予算に合わせて、家を削っているのです。

 

一方、リノベーションは違います。

既存の建物(基礎・柱・梁・屋根)は、タダで手に入る資源です。

この「埋蔵金」を活用することで、新築と同じ予算で、広さと性能の両方を手に入れられるのです。

 

 

5-4. 「自由」の本当の意味:制約の中でこそ、創造性が生まれる

ここで、あなたに問いたいのです。

「自由」とは何でしょうか?

新築のように「何でもできる(が、金がかかる)」ことでしょうか?

それとも、 リノベーションのように「制約の中で、最適解を見つける」ことでしょうか?

私たちは5,000棟のリノベーション経験から、「制約こそが創造性を生む」と確信しています。

 

【実例:横浜市・築23年住宅のリノベーション】

お客様の要望:

  1. LDKを広く(できれば20畳以上)
  2. 子供部屋2つ(各6畳)
  3. 主寝室(8畳)
  4. 書斎(4畳)

既存の間取り:

  • 1階:狭い個室が3つ(各6畳)+ 台所(4畳)
  • 2階:和室2つ(各6畳)+ 洋室1つ(6畳)

この住宅、新築なら「1階の3部屋の壁を全部取って、大空間LDKにする」という安易な設計になります。しかし、それでは構造的に不安定になり、耐震等級3を取得できません。

そこで、私たちは以下の設計をしました。

 

【リノベーション設計の工夫】

  1. 1階の2部屋の壁を撤去(残り1部屋の壁は耐力壁として残す)
  2. 撤去した壁の代わりに、構造用合板を2階床下に追加して水平剛性を確保
  3. 基礎に構造用鋼材を埋め込み、横方向の力に抵抗
  4. 1階天井を一部吹き抜けにし、2階の床面積を0.5坪減らすことで、構造負担を軽減

結果:

  • LDK22畳(お客様の希望を実現)
  • 耐震等級3取得(構造計算で証明)
  • コスト増なし(削った壁材と追加した構造材が相殺)

これが、「制約の中での創造性」です。

新築の「自由設計」では、このような高度な構造計算は行いません。

なぜなら、「標準プランの組み合わせ」で済ませるからです。

リノベーションこそが、真の意味での「オーダーメイド設計」なのです。

 

 

5-5. 「広さ」vs「性能」ではなく、「広さ」も「性能」も手に入れる

 

最後に、重要なポイントをお伝えします。

多くの人は、「広い家」と「高性能な家」を、トレードオフ(どちらか一方)の関係だと思っています。

しかし、リノベーションなら、両方手に入ります

なぜなら、既存の建物という「埋蔵金」があるからです。

  • 基礎・柱・梁:1,000万円〜1,500万円相当(新築なら必要なコスト)
  • 屋根・外壁の骨格:500万円〜800万円相当(再利用可能)

この「埋蔵金」を活用し、断熱・耐震・設備に予算を集中投下することで、

新築では不可能な「広さ+性能」が実現するのです。

 

【お客様の声:東京都世田谷区・50代夫婦】

「新築で28坪、断熱等級5が限界と言われました。でも、リノベーションなら35坪で断熱等級7。

しかも、無垢フローリングに造作キッチン。夢のようです。新築にこだわらなくて本当に良かった」

これが、2026年の現実です。

第6章:新築企画型住宅 vs フルリフォーム(リノベーション)

 

結論として、コスト重視で「ローコスト新築」を選ぶと、2026年の税制改正で「住宅ローン減税ゼロ」の憂き目に遭う可能性が高いです。

安物買いの銭失いにならないよう、税制の「逆転現象」を知ってください。

 

 

6-1. 企画型住宅(ローコスト新築)とは:「規格化で安くする」ビジネスモデル

 

企画型住宅とは、間取り・仕様・設備をあらかじめパッケージ化し、

大量発注によるコストダウンで低価格を実現した新築住宅です。

 

代表的なブランドとしては、

  • タマホーム「大安心の家」(坪単価40万円〜)
  • アイダ設計「ブラーボ」(坪単価45万円〜)
  • レオハウス「Vit」(坪単価50万円〜)
  • アキュラホーム「超空間の家」(坪単価55万円〜)

これらの企画型住宅は、「坪単価40〜60万円」という圧倒的な低価格で、新築一戸建てを提供しています。

 

【企画型住宅が安い理由】

  1. 間取りの規格化:用意された10〜20パターンから選ぶだけ(設計費削減)
  2. 資材の大量一括発注:年間数千棟の建築実績で、メーカーから大幅値引き
  3. 工法の標準化:職人の作業手順をマニュアル化し、工期短縮・人件費削減
  4. 広告の効率化:TV CMではなく、ネット広告・紹介に特化
  5. 仕様の限定:選べる設備・仕上げ材を最小限に絞る

この仕組みにより、30坪の家を坪単価50万円 × 30坪 = 1,500万円で提供できるのです。

一見すると、非常に魅力的です。「新築が1,500万円なら、リノベーション(2,500万円)より1,000万円も安い!」と思うでしょう。

しかし、ここには3つの落とし穴があります。

 

 

6-2. 落とし穴①:「坪単価」に含まれない「別途工事費」が800万円〜1,200万円

 

企画型住宅の広告に書かれている「坪単価40万円〜」という価格は、建物本体のみの価格です。

実際に住めるようになるまでには、以下の「別途工事費」が必要です。

 

【別途工事費の内訳(30坪の場合)】

項目 金額 説明
地盤調査・改良 50〜150万円 軟弱地盤なら200万円超も
外構工事 150〜300万円 駐車場・門扉・フェンス・植栽
解体工事 100〜150万円 建て替えの場合
水道引込工事 50〜100万円 敷地内に水道管がない場合
照明器具 30〜50万円 全室分(企画型は本体に含まれない)
カーテン・ブラインド 20〜40万円 全窓分
エアコン 50〜80万円 全室分(企画型は本体に含まれない)
設計料 0〜50万円 標準プランから変更する場合
諸費用 150〜200万円 登記・ローン手数料・火災保険
消費税 建物本体の10% 1,500万円なら150万円
合計 800〜1,200万円  

つまり、「建物本体1,500万円」の企画型住宅は、実際には総額2,300万円〜2,700万円かかるのです。

 

これを知らずに契約すると、後から「予算が足りない!」となり、

  • 外構を安物にする(砂利敷きだけ、フェンスなし)
  • エアコンを減らす(1階のLDKのみ)
  • 照明を最小限にする(ダウンライト削減)

といった「削る」選択を強いられます。

 

【企画型住宅の本当の坪単価】

  • 建物本体:坪50万円
  • 別途工事:平均1,000万円 ÷ 30坪 = 坪33万円
  • 実質坪単価:83万円

これなら、大手ハウスメーカーの標準仕様(坪90万円)と、そこまで変わりません。

 

 

6-3. 落とし穴②:省エネ基準ギリギリで、2026年の税制改正で「減税ゼロ」

企画型住宅の最大の落とし穴は、「省エネ性能が最低ライン」であることです。

2025年4月から、すべての新築住宅に「省エネ基準適合義務」が課されました。

つまり、断熱等級4(省エネ基準)を満たさない家は、建築確認が下りないのです。

企画型住宅は、この「法律ギリギリ」のラインで設計されています。

なぜなら、断熱性能を上げると、コストが上がるからです。

 

【企画型住宅の一般的な断熱仕様】

  • 断熱等級:等級4(省エネ基準ギリギリ)
  • 壁断熱材:グラスウール10K・100mm厚
  • 天井断熱材:グラスウール10K・100mm厚
  • 床断熱材:押出法ポリスチレンフォーム・50mm厚
  • 窓:アルミ樹脂複合サッシ+単板ガラスまたは複層ガラス
  • 気密性能:C値3.0〜5.0(測定なし)

この仕様では、2026年の住宅ローン減税では「最低ランク」に分類されます。

 

【2026年の住宅ローン減税の借入限度額】

住宅の性能 借入限度額 13年間の最大減税額
長期優良住宅・低炭素住宅 4,500万円 409.5万円
ZEH水準省エネ住宅 3,500万円 318.5万円
省エネ基準適合住宅 3,000万円 273万円
その他の住宅 0円 0円

企画型住宅は、ギリギリ「省エネ基準適合住宅」に該当するため、借入限度額は3,000万円です。

しかし、ここに罠があります。

企画型住宅は、「省エネ基準ギリギリ」のため、少しでも施工不良があれば基準を満たさないのです。

実際、以下のようなケースで基準不適合と判定されることがあります。

 

  • 断熱材の施工不良(隙間・圧縮)
  • 気密シートの破れ
  • 窓の性能不足(安価な輸入サッシを使用)

この場合、住宅ローン減税は「その他の住宅=0円」に転落します。

つまり、273万円の減税を失うのです。

一方、性能向上リノベーションで「断熱等級6以上(HEAT20 G2)」を取得すれば、

ZEH水準省エネ住宅として認定され、借入限度額は3,500万円、最大減税額は318.5万円です。

 

【減税額の比較】

  • 企画型新築(基準適合):273万円
  • 企画型新築(基準不適合):0円
  • 性能向上リノベ(ZEH水準):318.5万円

リノベーションの方が、45.5万円〜318.5万円も有利なのです。

 

 

6-4. 落とし穴③:10年後の光熱費で、トータルコストが逆転する

企画型住宅は「初期費用が安い」ことが最大の売りです。

しかし、ランニングコスト(光熱費)を考えると、トータルでは高くつくのです。

 

【光熱費シミュレーション(30坪・4人家族・東京)】

住宅の種類 年間光熱費 30年間の光熱費 初期費用 30年トータル
企画型新築(断熱等級4) 25万円 750万円 2,500万円 3,250万円
性能向上リノベ(断熱等級7) 10万円 300万円 2,760万円 3,060万円
差額   ▲450万円 +260万円 ▲190万円

 

つまり、初期費用では260万円高いリノベーションですが、30年間の光熱費では450万円安くなり、

トータルで190万円リノベーションが有利になるのです。

さらに、2026年以降は電気代の高騰が続くと予想されています。

2020年から2026年までに、電気代は約40%上昇しました。

この傾向が続けば、30年間の光熱費差は600万円〜800万円に広がる可能性もあります。

「安物買いの銭失い」とは、まさにこのことです。

 

 

6-5. 中古の優遇:高性能リノベなら、中古でも「最大4,500万円」の借入が減税対象に

ここで、驚くべき事実をお伝えします。

2026年の税制では、「性能」が高ければ、新築・中古の区別なく優遇されるのです。

つまり、築20年の中古住宅でも、

性能向上リノベーションで「長期優良住宅(増改築)」の認定を取得すれば、借入限度額は最大4,500万円になります。

 

【長期優良住宅(増改築)の認定基準】

  1. 耐震性:耐震等級2以上(できれば等級3)
  2. 省エネ性:断熱等級5以上
  3. 劣化対策:構造の耐久性確保(防蟻・防腐処理)
  4. 維持管理:配管・設備の点検・交換が容易
  5. 可変性:将来の間取り変更が可能な構造

これらの基準を満たすリノベーションを行えば、築20年でも**「新築の最高ランク」と同等の税制優遇**が受けられるのです。

 

【新築 vs リノベーションの減税比較(総額5,000万円の場合)】

住宅の種類 借入限度額 13年間の減税額 実質負担
企画型新築(基準適合) 3,000万円 273万円 4,727万円
企画型新築(基準不適合) 0円 0円 5,000万円
性能向上リノベ(ZEH水準) 3,500万円 318.5万円 4,681.5万円
性能向上リノベ(長期優良) 4,500万円 409.5万円 4,590.5万円

リノベーション(長期優良)なら、企画型新築(基準適合)より136.5万円も実質負担が少ないのです。

もし企画型新築が基準不適合になった場合、差額は409.5万円にもなります。

 

 

6-6. 「安さ」の罠から抜け出す:本当のコストパフォーマンスとは

企画型住宅は、確かに「初期費用」は安いです。しかし、

  • 別途工事費で+1,000万円
  • 税制優遇で▲136万円不利
  • 30年光熱費で+450万円

これらを合計すると、トータルで1,314万円高くつくのです。

一方、性能向上リノベーションは、

  • 初期費用が透明(別途工事費が少ない)
  • 税制優遇が最大(長期優良なら409.5万円)
  • 光熱費が最小(年間10万円以下)

真のコストパフォーマンスは、「30年トータル」で考えるべきです。

 

あなたは今、「目先の安さ」に騙されようとしていませんか?

家は30年、40年と住み続けるものです。初期費用の200万円の差を気にして、30年で1,314万円損するのは、愚かな選択です。

 

賢い選択をしてください。

 

第7章:建替えと戸建フルリフォーム(リノベーション)費用比較

 

結論として、25坪の家で比較した場合、リノベーションは「新築プレミアム(業者の利益・広告費)」と「捨ててしまうお金(解体・地盤改良)」がかからない分、圧倒的に投資対効果が高いです。

 

新築プレミアムの正体を知れば、「鍵を受け取った瞬間に2割下がる価値」にお金を払う愚かさに気づくはずです。

 

 

7-1. 建替えの「見えないコスト」:捨てるお金が500万円〜800万円

建替えとは、既存の住宅を解体し、同じ土地に新築を建てることです。

一見すると「古い家が新しくなる」というシンプルな話に思えますが、実は「捨てるお金」が膨大なのです。

【建替えで消えていくお金(25坪の場合)】

項目 金額 説明
解体工事費 150〜200万円 建物解体・廃材処分・整地
解体廃材処分費 50〜80万円 産業廃棄物処理(木材・石膏ボード・瓦等)
仮住まい費用 100〜150万円 8〜10ヶ月の賃貸住宅(月12万円×10ヶ月)
引っ越し費用 30〜50万円 仮住まいへ+新居へ(2回分)
地盤調査・改良 50〜150万円 既存建物の基礎撤去後、地盤が軟弱と判明するケース多数
旧家の固定資産税 10〜20万円 解体から新築完成まで「更地」扱いで税額6倍
合計 390〜650万円 この金額は「何も残らない」

特に注目すべきは、「地盤改良」のリスクです。

既存の家が建っていた土地だから「地盤は問題ない」と思いがちですが、実際は違います。30年前の建築基準では、地盤調査なしで建てることが可能でした。そのため、解体後に初めて地盤の軟弱性が判明するケースが多いのです。

 

【実例:神奈川県藤沢市・建替えプロジェクト】

  • 築28年の木造住宅を解体
  • 解体後、地盤調査を実施
  • 結果:地盤支持力不足(許容応力度30kN/㎡以下)
  • 対策:柱状改良工事(深さ5m、20本)
  • 追加費用:180万円(当初予算外)

このように、建替えでは「予想外のコスト」が発生しやすいのです。

一方、リノベーションは既存の基礎・地盤をそのまま使うため、解体費・地盤改良費・仮住まい費がかからない、または大幅に削減できます。

 

【リノベーションの場合】

  • 解体工事費:0円(スケルトンまで解体するが、基礎・柱・梁は残す)
  • 地盤改良費:0円(既存の基礎を補強するだけ)
  • 仮住まい費用:0円(中古購入の場合)または100〜150万円(自己所有の場合)

つまり、建替えで消える500万円〜650万円が、リノベーションでは「家の性能向上」に使えるのです。

 

 

7-2. 「新築プレミアム」の正体:鍵を受け取った瞬間に2割下がる価値

 

建替えのもう一つの「見えないコスト」は、「新築プレミアム」です。

不動産業界では常識ですが、新築住宅は「引き渡しの瞬間に中古住宅になり、価格が約20%下落する」という現象があります。

【新築プレミアムのメカニズム】

例:建物本体価格3,000万円の新築住宅

内訳(推定):

  • 実際の建築コスト(資材・職人):2,200万円(73%)
  • ハウスメーカーの利益:300万円(10%)
  • 広告宣伝費:150万円(5%)
  • 営業マンの人件費・歩合給:150万円(5%)
  • モデルハウス維持費・本社経費:200万円(7%)

つまり、3,000万円のうち、800万円(27%)は「建物そのものの価値」ではないのです。

この800万円は、「新築」という「誰も住んでいない」というブランド価値に対して支払う対価です。

しかし、あなたが鍵を受け取り、1日でも住んだ瞬間、その家は「中古」になります。

不動産市場では、「新築プレミアム」は瞬時に消滅します。

 

【新築の資産価値の推移(建物のみ)】

  • 引き渡し時:3,000万円
  • 入居1日後(中古扱い):2,400万円(▲20%)
  • 築5年:2,100万円(▲30%)
  • 築10年:1,800万円(▲40%)
  • 築15年:1,200万円(▲60%)
  • 築20年:300万円(▲90%)
  • 築25年:0円(▲100%)

つまり、3,000万円で建てた新築は、入居した瞬間に600万円の価値を失うのです。

一方、リノベーションは「すでに価値下落が止まった築20年の中古」を購入し、性能を向上させるため、

「新築プレミアム」という無駄なコストを払わずに済むのです。

 

 

7-3. 実質負担の比較:建替え vs リノベーション(25坪の家)

 

では、具体的に数字で比較しましょう。

【シナリオ】

  • 土地:所有済み(評価額2,000万円)
  • 既存建物:築28年・木造2階建て・延床面積25坪
  • 希望:耐震等級3、断熱等級6以上、無垢フローリング、対面キッチン

【パターンA:建替え(新築)】

項目 金額
解体工事 180万円
地盤調査・改良 120万円
建物本体(25坪×坪110万円) 2,750万円
付帯工事(外構・照明・カーテン等) 500万円
設計料 100万円
諸費用(登記・火災保険等) 150万円
仮住まい・引越し費用 130万円
消費税(建物本体+付帯工事) 325万円
合計 4,255万円
補助金(地域型グリーン化) ▲50万円
実質負担 4,205万円

 

【パターンB:性能向上リノベーション】

項目 金額
スケルトンリノベーション 2,300万円
内訳:  
- 耐震補強(等級3) 400万円
- 断熱改修(等級6・G2) 600万円
- 窓交換(樹脂サッシ) 280万円
- 設備(キッチン・バス・トイレ) 450万円
- 内装・電気・給排水 570万円
設計料(構造計算含む) 150万円
諸費用(性能証明書等) 50万円
合計 2,500万円
補助金(窓リノベ+エコホーム) ▲240万円
実質負担 2,260万円

 

【差額】

  • 建替え:4,205万円
  • リノベーション:2,260万円
  • 差額:1,945万円(建替えが高い)

つまり、同じ土地・同じ広さで、リノベーションなら約2,000万円安く、しかも性能は同等以上なのです。

 

 

7-4. 「投資対効果」で考える:1,945万円の差をどう使うか

 

では、この1,945万円の差額を、あなたはどう使いますか?

 

【1,945万円の使い道シミュレーション】

 

選択肢1:住宅ローンの借入額を減らす

  • 建替え:4,205万円借入(35年・金利1.0%)
    • 月々返済:約11.8万円
    • 総返済額:約4,956万円
  • リノベーション:2,260万円借入(35年・金利1.0%)
    • 月々返済:約6.4万円
    • 総返済額:約2,664万円
  • 差額:月5.4万円 = 年間64.8万円 = 35年で2,268万円

この差額で、あなたは老後の安心を手に入れられます。

 

選択肢2:差額を運用する

  • リノベーションで2,260万円借入
  • 差額1,945万円を年利3%で運用(つみたてNISA等)
  • 20年後:約3,514万円
  • 老後資金として3,514万円確保
  •  

選択肢3:差額で子供の教育に投資

  • 私立大学4年間の学費:約800万円
  • 差額1,945万円なら、2人分の大学費用+余裕

どの選択肢を選んでも、リノベーションの方が人生の自由度が高いことは明白です。

 

 

7-5. 建替えを選ぶべきケース:「構造的に救えない家」だけ

 

ここまで読んで、「じゃあ建替えは絶対ダメなのか?」と思うかもしれません。

いいえ、建替えを選ぶべきケースもあります。それは、「構造的に救えない家」です。

 

【建替えを選ぶべきケース】

  1. 基礎が致命的に劣化:基礎のクラック幅5mm以上、鉄筋の腐食が進行
  2. 主要構造材の腐朽・蟻害が広範囲:柱・梁の50%以上が交換必要
  3. 違法建築:建ぺい率・容積率オーバー、接道義務違反(再建築不可)
  4. 地盤沈下が進行中:不同沈下により建物が傾いている(修正不可)
  5. 増築を繰り返し構造が複雑:耐震診断・補強設計が不可能

これらのケースでは、リノベーションのコストが建替えを上回るため、建替えの方が合理的です。

 

しかし、私たちの5,000棟の経験では、「構造的に救えない家」は全体の5%以下です。残りの95%は、リノベーションで新築同等以上の性能に引き上げられます。

 

【判断基準】

  • インスペクション(住宅診断)で、構造の劣化度を正確に把握
  • 耐震診断で、補強の可否と費用を算出
  • リノベーション総額が「建替え総額の80%以上」なら、建替えを検討

この判断を、購入前・着工前に行うことが絶対条件です。

 

 

7-6. トータルコストの真実:「初期費用」だけで判断する愚かさ

最後に、重要なメッセージをお伝えします。

家のコストは、「初期費用」だけではありません。

  • 初期費用(建築・購入費)
  • ランニングコスト(光熱費・メンテナンス費)
  • 税金(固定資産税・都市計画税)
  • 資産価値(売却時の価格)

これらすべてを含めた「ライフサイクルコスト(生涯コスト)」で比較すべきです。

 

【50年間のライフサイクルコスト比較】

項目 建替え(新築) 性能向上リノベ 差額
初期費用 4,205万円 2,260万円 ▲1,945万円
光熱費(50年) 1,250万円 500万円 ▲750万円
固定資産税(50年) 750万円 450万円 ▲300万円
メンテナンス費(50年) 800万円 600万円 ▲200万円
合計 7,005万円 3,810万円 ▲3,195万円

50年間で3,195万円の差。この差が、あなたの人生の質を決めます。

 

目先の「新しさ」に騙されず、トータルで賢い選択をしてください。

 

第8章:建替えと戸建フルリフォーム(リノベーション)税金比較

 

結論として、「新築は資産になる」は幻想です。木造新築の建物価値は20年でほぼゼロになります。資産価値を残す唯一の方法は、「好立地の土地」にお金をかけ、「建物」の固定資産税を上げないことです。

 

減価償却の罠を知れば、「価格下落が落ち着いた築20年を買う」のが最強の投資戦略だと分かります。

 

 

8-1. 固定資産税の残酷な真実:新築は「高評価=高税金」、中古は「低評価=低税金」

 

多くの人が誤解していますが、固定資産税は「実際の市場価値」ではなく、「固定資産税評価額」に基づいて課税されます。

そして、この評価額の計算方法が、新築に極めて不利なのです。

 

【固定資産税評価額の仕組み】

固定資産税評価額は、3年ごとに見直される「再建築価格」に「経年減点補正率」を乗じて算出されます。

  • 再建築価格:その建物を今建て直したらいくらかかるか(建築費相場に連動)
  • 経年減点補正率:築年数に応じて価値が減少する割合(木造は20年でほぼ0.2=2割)

【木造住宅の経年減点補正率(財務省基準)】

築年数 経年減点補正率 評価額(新築時3,000万円の場合)
新築 1.0 3,000万円
5年 0.76 2,280万円
10年 0.58 1,740万円
15年 0.41 1,230万円
20年 0.26 780万円
25年 0.20(下限) 600万円

つまり、新築時に3,000万円だった建物評価額は、25年後には600万円(20%)まで下がるのです。

 

【固定資産税の計算(建物のみ)】

固定資産税 = 固定資産税評価額 × 1.4%(標準税率) × 都市計画税0.3%の場合は+0.3% = 合計1.7%

築年数 評価額 年間固定資産税(1.7%)
新築 3,000万円 51万円
5年 2,280万円 38.8万円
10年 1,740万円 29.6万円
15年 1,230万円 20.9万円
20年 780万円 13.3万円
25年 600万円 10.2万円

新築時と築25年では、年間40.8万円の差。30年間で約1,000万円の差になります。

 

 

 

8-2. ランニングコストの逆転:建て替えで跳ね上がる固定資産税、その差額は30年で数百万円

 

では、建替えとリノベーションで、固定資産税がどれだけ違うか比較しましょう。

【シナリオ】

  • 土地評価額:2,000万円(固定)
  • 既存建物:築28年・評価額600万円
  • 建替え:新築・評価額3,000万円
  • リノベーション:築28年→築30年・評価額700万円(性能向上による若干の加点)

【建替えの場合の固定資産税(30年間)】

土地 建物評価額 建物税額 合計年税額
1年目 34万円 3,000万円 51万円 85万円
10年目 34万円 1,740万円 29.6万円 63.6万円
20年目 34万円 780万円 13.3万円 47.3万円
30年目 34万円 600万円 10.2万円 44.2万円
30年合計       約1,700万円

【リノベーションの場合の固定資産税(30年間)】

土地 建物評価額 建物税額 合計年税額
1年目 34万円 700万円 11.9万円 45.9万円
10年目 34万円 700万円 11.9万円 45.9万円
20年目 34万円 700万円 11.9万円 45.9万円
30年目 34万円 700万円 11.9万円 45.9万円
30年合計       約1,380万円

【30年間の差額】

  • 建替え:約1,700万円
  • リノベーション:約1,380万円
  • 差額:約320万円(建替えが高い)

つまり、建替えを選ぶだけで、30年間で320万円も余計に税金を払うのです。

 

 

8-3. 不動産取得税の差:新築は「軽減あり」でも、リノベーションは「ほぼゼロ」

 

不動産取得税は、不動産を取得した時に一度だけ課される税金です。

 

【不動産取得税の計算式】 不動産取得税 = 固定資産税評価額 × 3%(土地・住宅)

しかし、ここにも新築とリノベーションで大きな差があります。

 

【建替え(新築)の場合】

土地:評価額2,000万円

  • 計算:2,000万円 × 1/2(軽減) × 3% = 30万円
  • 軽減措置:▲30万円(一定条件を満たす住宅用地)
  • 実質:0円

建物:評価額3,000万円

  • 計算:3,000万円 × 3% = 90万円
  • 軽減措置:▲1,200万円(長期優良住宅の控除)
  • (3,000万円 - 1,200万円) × 3% = 54万円

合計:54万円

 

【リノベーション(中古購入)の場合】

土地:評価額2,000万円

  • 計算:2,000万円 × 1/2 × 3% = 30万円
  • 軽減措置:▲30万円
  • 実質:0円

建物:評価額700万円(築28年)

  • 計算:700万円 × 3% = 21万円
  • 軽減措置(増改築等工事証明書あり):▲1,200万円控除
  • (700万円 - 700万円) × 3% = 0円

合計:0円

つまり、不動産取得税でも54万円の差がつくのです。

 

 

 

8-4. 登録免許税の差:性能証明書があれば、中古でも0.3%に軽減

 

登録免許税は、不動産の所有権を登記する際に課される税金です。

 

【登録免許税の税率】

登記の種類 原則税率 軽減税率(新築) 軽減税率(中古・性能証明あり)
所有権保存登記 0.4% 0.15% -
所有権移転登記 2.0% - 0.3%
抵当権設定登記 0.4% 0.1% 0.1%

 

【建替え(新築)の場合】

建物評価額:3,000万円

  • 所有権保存登記:3,000万円 × 0.15% = 4.5万円
  • 抵当権設定登記(借入4,000万円):4,000万円 × 0.1% = 4万円

合計:8.5万円

 

【リノベーション(中古購入・性能証明あり)の場合】

建物評価額:700万円

  • 所有権移転登記:700万円 × 0.3% = 2.1万円
  • 抵当権設定登記(借入2,500万円):2,500万円 × 0.1% = 2.5万円

合計:4.6万円

差額:3.9万円(リノベーションが有利)

 

 

 

8-5. 減価償却の罠:「築20年」は資産価値の底値、ここから買うのが最強

ここまで見てきて気づいたでしょうか。

 

木造住宅の建物価値は、築20〜25年でほぼ底を打つのです。

つまり、

  • 新築を買う = これから20年かけて価値が減少していく
  • 築20年を買う = すでに価値減少が止まっている
  •  

【資産価値の推移比較(建物のみ)】

購入時点 購入時評価 10年後 20年後 30年後
新築購入 3,000万円 1,740万円 780万円 600万円
築20年購入 700万円 700万円 700万円 700万円
価値減少額 - ▲1,260万円 ▲2,220万円 ▲2,400万円

新築を買った人は30年で2,400万円の価値喪失。 築20年を買った人は30年で価値維持(リノベーションにより逆に上昇の可能性)。

これが、「築20年の中古を買ってリノベーション」が最強の資産戦略である理由です。

 

 

 

8-6. 税金トータル比較:30年間で400万円以上の差

では、すべての税金をトータルで比較しましょう。

 

【30年間の税金総額比較】

税金項目 建替え(新築) リノベーション(中古+性能向上) 差額
不動産取得税 54万円 0円 ▲54万円
登録免許税 8.5万円 4.6万円 ▲3.9万円
固定資産税(30年) 1,700万円 1,380万円 ▲320万円
都市計画税(30年) 含む 含む -
合計 1,762.5万円 1,384.6万円 ▲377.9万円

30年間で約380万円の差

 

さらに、住宅ローン減税を加えると、

  • 建替え(省エネ基準適合):+273万円
  • リノベーション(長期優良認定):+409.5万円
  • 差額:+136.5万円(リノベーションが有利)
  •  

【税制面でのトータル差額】

  • 納税での差額:▲377.9万円(リノベーション有利)
  • 減税での差額:+136.5万円(リノベーション有利)
  • 合計:514.4万円(リノベーションが有利)

つまり、税制面だけで約500万円の差がつくのです。

 

 

 

8-7. 「資産」として残るのは土地だけ:建物にお金をかけすぎる愚かさ

 

最後に、資産形成の本質をお伝えします。

不動産投資の鉄則は、「土地は資産、建物は消耗品」です。

あなたが7,000万円で新築を買ったとして、30年後に残る資産価値は、

  • 土地:3,000万円(立地が良ければ維持または上昇)
  • 建物:600万円(ほぼゼロ)
  • 合計:3,600万円(▲3,400万円)

一方、築20年の中古3,000万円を購入し、リノベーション2,500万円をかけた場合、

  • 土地:3,000万円(同じ立地なら同じ価値)
  • 建物:1,200万円(性能証明により高評価)
  • 合計:4,200万円(▲1,300万円)

つまり、同じ立地・同じ予算でも、リノベーションの方が2,100万円も資産が残るのです。

 

賢い人は、「建物」ではなく「土地」にお金をかけます。

そして、建物は必要最小限の性能向上だけを行い、固定資産税を上げないようにする。これが、資産を守る唯一の戦略です。

第9章:戸建フルリフォーム(リノベーション)業者選び

 

結論として、2026年を勝ち抜く家づくりができるのは、「大工」ではなく「エンジニア」です。見栄や感情論ではなく、数値(耐震・断熱)で家を語れるパートナーを選んでください。

 

業者選びこそが、リノベーション成功の99%を決めるのです。

 

 

9-1. 業者選びの失敗=1,000万円の損失:「安さ」で選ぶ恐怖

 

リノベーションで最も多い失敗は、「業者選びのミス」です。

私たちのもとには、毎月のように「他社でリノベーションしたが失敗した。やり直してほしい」という相談が寄せられます。その9割が、「安さ」で業者を選んだ結果です。

 

【実例:埼玉県川口市・Kさん(52歳)の悲劇】

Kさんは、築24年の中古住宅(購入価格2,800万円)のリノベーションを検討していました。A社(地元工務店)とB社(リノベーション専門)の2社から見積もりを取得。

  • A社(地元工務店):1,800万円「安くやりますよ!」
  • B社(リノベーション専門):2,500万円「構造計算と断熱設計が含まれます」

Kさんは、700万円の差額に目がくらみ、A社を選びました。

工事開始から3ヶ月後、悲劇が起きました。

  • 解体後、雨漏り跡を発見 → A社「想定外です。追加100万円」
  • 断熱材の施工が雑(隙間だらけ) → A社「これで十分です」
  • 耐震補強の設計図なし → A社「経験でやってます」
  • 気密測定なし → A社「必要ないでしょ」

完成後、Kさんは冬の寒さに愕然としました。「新築より寒い...」

後日、B社に再調査を依頼したところ、以下の問題が判明。

  1. 断熱材の施工不良:壁の30%に隙間、天井裏は断熱材が半分しかない
  2. 耐震補強が不十分:構造計算なし、耐震等級1未満の可能性
  3. 気密性能が最悪:C値7.0(新築の標準が2.0〜5.0)
  4. 換気計画がない:第3種換気の設計ミスで、冬に結露・カビ発生

やり直し費用の見積もり:1,200万円

Kさんは泣きました。「700万円ケチったせいで、1,200万円余計にかかる...」

これが、「安さ」で業者を選んだ結果です。

 

 

9-2. 選定基準①:「構造設計一級建築士」が在籍しているか

リノベーション業者を選ぶ際の絶対条件は、「構造設計一級建築士」が在籍していることです。

【構造設計一級建築士とは】

建築士法に基づく国家資格で、以下の条件を満たす者だけが取得できます。

  • 一級建築士の資格保有
  • 構造設計の実務経験5年以上
  • 国土交通大臣が指定する「構造設計講習」を修了
  • 全国で約7,500人しかいない(建築士全体の約2%)

この資格者がいる業者は、「許容応力度計算(最も厳密な構造計算)」が可能です。

 

【構造計算の3つのレベル】

レベル 計算方法 精度 対応業者
レベル1 壁量計算(簡易) 低(耐震等級1程度) ほとんどの工務店
レベル2 性能表示計算 中(耐震等級2〜3) 設計事務所の一部
レベル3 許容応力度計算 高(耐震等級3を厳密に証明) 構造設計一級建築士のみ

 

壁量計算は、「この面積なら、この長さの壁があればOK」という簡易的な方法です。既存建物の複雑な構造には対応できません。

許容応力度計算は、すべての柱・梁・基礎の強度を個別に計算し、地震時の応力(ストレス)が許容範囲内かを検証します。この計算ができるのは、構造設計一級建築士だけです。

 

【業者を見分ける質問】

「耐震等級3を取得できますか?」と聞いたとき、

  • ダメな業者:「できます!(壁量計算で)」
  • 良い業者:「許容応力度計算で、耐震等級3を証明します。構造設計一級建築士が担当します」

この違いを聞き分けてください。

 

 

9-3. 選定基準②:「HEAT20」を理解し、断熱設計ができるか

 

次の選定基準は、「HEAT20」を理解し、断熱設計ができるかです。

【HEAT20とは】

一般社団法人「20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」が定める、省エネ基準を大きく上回る断熱性能の指標です。

グレード 断熱性能(UA値) 冬の室温(暖房なし) 該当する住宅
省エネ基準 0.87(6地域) 8℃以下 法律の最低ライン
HEAT20 G1 0.56 10℃以上 高性能住宅
HEAT20 G2 0.46 13℃以上 超高性能住宅
HEAT20 G3 0.26 15℃以上 最高性能住宅

「省エネ基準ギリギリ」の家は、冬の朝、暖房を消すと室温が8℃以下に下がります。これでは、ヒートショックのリスクが高く、健康を害します。

一方、HEAT20 G2なら、暖房を消しても13℃以上を維持できます。この差が、「住みやすさ」と「光熱費」を決定的に左右します。

しかし、この断熱設計ができる業者は、全体の10%以下です。

 

【業者を見分ける質問】

「断熱性能はどのくらいですか?」と聞いたとき、

  • ダメな業者:「省エネ基準を満たしてます」「グラスウール100mm入れてます」
  • 良い業者:「HEAT20 G2を目指します。UA値0.46以下に設計します。断熱材はセルローズファイバー200mmです」

数値で語れない業者は、断熱設計ができていない証拠です。

 

 

9-4. 選定基準③:「インスペクション(住宅診断)」を必ず実施するか

 

リノベーションの成否を分けるのは、「購入前のインスペクション」です。

インスペクションとは、建築士が既存住宅の劣化状況を詳細に調査することです。

【インスペクションで調査する項目】

  1. 構造の劣化:基礎のクラック、柱・梁の腐朽・蟻害、不同沈下
  2. 雨漏りの痕跡:天井裏・壁内の雨染み、外壁の劣化
  3. 設備の状態:配管の劣化、電気配線の老朽化
  4. 法令違反の有無:建ぺい率・容積率オーバー、接道義務違反
  5. 耐震性の予備診断:壁量・配置バランスの確認

この調査を物件購入前に行うことで、「買ってはいけない物件」を見抜けます。

 

【実例:東京都杉並区・Mさんの成功体験】

Mさんは、築22年の中古住宅(売出価格4,200万円)に興味を持ちました。しかし、私たちのインスペクションで以下が判明。

  • 浴室下の土台に広範囲なシロアリ被害
  • 北側外壁内部に雨水浸入の痕跡
  • 2階床の構造材が一部腐朽

修繕費用の見積もり:+500万円

Mさんは、この情報をもとに売主と交渉。値引き400万円を獲得し、3,800万円で購入。さらに、リノベーション時に確実に修繕を実施しました。

インスペクション費用は10万円でしたが、400万円の値引きを引き出したのです。

一方、インスペクションをしない業者に依頼すると、これらの劣化を見逃し、工事中に「追加費用が必要です」と言われる羽目になります。

 

【業者を見分ける質問】

「購入前にインスペクションをしてもらえますか?」と聞いたとき、

  • ダメな業者:「必要ないですよ。見た感じ大丈夫です」
  • 良い業者:「必ず実施します。建築士が床下・天井裏まで調査します。購入の可否を判断する材料を提供します」

 

 

 

9-5. 選定基準④:「施工実績」と「性能証明書」の提示ができるか

 

業者のホームページには、「施工実績5,000棟!」と書かれていても、リノベーションの実績とは限りません

確認すべきは、以下の3点です。

 

【確認ポイント】

  1. 性能向上リノベーションの実績数:単なるリフォームではなく、耐震・断熱の性能向上を行った実績
  2. 性能証明書の取得実績:増改築等工事証明書、BELS、長期優良住宅(増改築)の認定取得数
  3. 気密測定の実施率:全棟で気密測定(C値測定)を行っているか

特に重要なのは、「気密測定の実施率」です。

断熱性能(UA値)は、設計図上で計算できますが、気密性能(C値)は、実際に測定しないと分かりません。気密測定をしない業者は、施工品質に自信がない証拠です。

 

【良い業者の基準】

  • 性能向上リノベーション実績:年間50棟以上
  • 増改築等工事証明書取得率:80%以上
  • 気密測定実施率:100%(全棟)
  • C値の平均:0.7以下(1.0以下なら合格、0.5以下なら優秀)

 

【業者を見分ける質問】

「気密測定はしてもらえますか?」と聞いたとき、

  • ダメな業者:「気密測定? 別に必要ないですよ」
  • 良い業者:「全棟で実施します。C値0.5以下を保証します。測定結果は報告書でお渡しします」

 

 

9-6. 選定基準⑤:「新築そっくり」ではなく「性能向上」の実績があるか

 

最後の選定基準は、「新築そっくり」を売りにするのではなく、「性能向上」を売りにしているかです。

リノベーション業界には、2つのタイプがあります。

 

【タイプA:「新築そっくり」を売りにする業者】

  • キャッチコピー:「まるで新築! 内装ピカピカ!」
  • 強み:デザイン、見た目の美しさ
  • 弱み:性能(耐震・断熱)は二の次

【タイプB:「性能向上」を売りにする業者】

  • キャッチコピー:「耐震等級3、HEAT20 G2、C値0.5以下」
  • 強み:数値で証明できる性能
  • 弱み:デザインは機能美重視(派手ではない)

あなたが選ぶべきは、タイプBです。

なぜなら、見た目の美しさは10年で飽きますが、性能は30年間あなたの生活を守るからです。

 

【私たちの約束:匠からのメッセージ】

私たちは、あなたの家の「見栄」ではなく「資産価値」と「家族の未来」を守ります。

  • 構造設計一級建築士が、許容応力度計算で耐震等級3を証明します
  • HEAT20 G2以上の断熱設計を行います
  • インスペクションで、購入すべき物件を見極めます
  • 全棟で気密測定を行い、C値0.5以下を保証します
  • 増改築等工事証明書を取得し、税制優遇を最大化します

私たちは「大工」ではなく「エンジニア」です。感覚ではなく、数値で家を語ります

あなたが、30年後も安心して住める家を求めているなら、私たちにご相談ください。

 

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< この記事の著者情報 >

稲葉 高志

 

ハイウィル株式会社 四代目社長

1976年生まれ 東京都出身。

【経歴】

家業(現ハイウィル)が創業大正8年の老舗瓦屋だった為、幼少よりたくさんの職人に囲まれて育つ。

中学生の頃、アルバイトで瓦の荷揚げを毎日していて祖父の職人としての生き方に感銘を受ける。 日本大学法学部法律学科法職課程を経て、大手ディベロッパーでの不動産販売営業に従事。

この時の仕事環境とスキルが人生の転機に。  TVCMでの華やかな会社イメージとは裏腹に、当たり前に灰皿や拳が飛んでくるような職場の中、東京営業本部約170名中、営業成績6期連続1位の座を譲ることなく退社。ここで営業力の基礎を徹底的に養うことになる。その後、工務店で主に木造改築に従事し、100棟以上の木造フルリフォームを大工職人として施工、管理者として管理

2003年に独立し 耐震性能と断熱性能を現行の新築の最高水準でバリューアップさせる戸建てフルリフォームを150棟営業、施工管理に従事

2008年家業であるハイウィル株式会社へ業務移管後、 4代目代表取締役に就任。

250棟の木造改修の営業、施工管理に従事

2015年旧耐震住宅の「耐震等級3」への推進、「断熱等級6」への推進を目指し、 自身の通算500棟を超える木造フルリフォーム・リノベーション経験の集大成として、性能向上に特化した日本初の木造フルリオーム&リノベーションオウンドメディア 「増改築com®」をオープン

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