更新日:2026/01/05

木造リノベーションの“全”疑問に答える|匠が教える460の知恵

古い家の「住みながらリフォーム」は可能か?費用・ストレス・施工品質をプロが徹底比較【教えて匠さんQ27】

古い家の「住みながらリフォーム」は可能か?費用・ストレス・施工品質をプロが徹底比較【教えて匠さんQ27】

章の概要:

リノベーションを計画する際、多くの施主様が真っ先に考えるコストカットの手段が「住みながらの工事」です。

「仮住まいの家賃がもったいない」「引越しが面倒だ」という心理は痛いほど分かりますが、断熱等級6や耐震等級3といった「性能向上」を目的としたリノベーションにおいて、住みながらの施工を選択することは、結論から申し上げますと「最大の品質毀損(きそん)リスク」を招くことになります。

リノベーションとは、真っ白な紙に図面を描く新築とは異なり、建物を一度、構造体だけの「骨格」の状態に戻す高度な外科手術です。患者が手術台の上で起き上がったままでは、精密な手術は不可能です。

本章では、500棟以上の解体現場を見てきた私の視点から、住みながらリフォームがなぜ「節約」ではなく「将来の資産価値と生活の質を削る行為」になりかねないのか、その不都合な真実を論理的に解き明かします。

目先の数十万円を浮かす代償として、あなたが失うかもしれない「15年後の満足度」について、プロとしての知的正直さを貫いてお伝えします。

 

木造リノベーションの“全”疑問に答える|匠が教える460の知恵YouTube動画(こちらのコンテンツの動画解説です)

住みながらリフォームvs仮住まい|プロが明かす費用・品質・ストレスの真実比較【築30年以上必見】教えて匠さんQ27

導入部:その「節約」が、リノベーションの質を落としていませんか?

第1章. 【費用比較】「住みながら」の隠れたコストと仮住まいの真実

第2章. 【施工品質】「住みながら」では到達できない性能の壁

第3章. 【生活の質】想像を絶する「工事中のストレス」を検証する

結論:15年後の満足度を買うなら、迷わず「仮住まい」を選べ

導入部:その「節約」が、リノベーションの質を落としていませんか?

導入部:その「節約」が、リノベーションの質を落としていませんか?

導入.1 その「節約」は、本当に賢い選択ですか? ― 性能向上リノベの「聖域」

 

ここでのポイント:

リノベーション中の仮住まい費用を浮かせたいという願いは、一見合理的な節約術に見えますが、建物の骨組みから作り直す「性能向上リノベーション」においては、施工効率の著しい低下と、目に見えない施工精度の悪化を招く「高くつくバグ」でしかありません。

 

築30年、40年と経過した大切な我が家を再生しようと決意したお施主様が、見積書を見て最初に溜息をつくのが「仮住まい費用」です。都内であれば、家族3~4人が数ヶ月暮らすための賃貸家賃、敷金・礼金、そして二度の引越し費用を合わせると、150万円から200万円近い出費になることも珍しくありません。

「このお金があれば、キッチンのグレードを上げられるのに」――そう考えるのは、無理もありません。

 

しかし、増改築.com®で推奨している性能向上リノベーション(建物の基礎や構造を補強し、断熱・耐震性能を現行の省エネ基準や耐震基準以上に引き上げる大規模改修のこと)は、壁紙を張り替えるだけの一般的なリフォームとは、その深度が根本から異なります。

用語定義:性能向上リノベーション 既存の住宅に対し、断熱性能(断熱等級6相当)や耐震性能(耐震等級3相当)を現代の最新基準、あるいはそれ以上にまで物理的に引き上げる大規模な改修工事。家の「寿命」と「資産価値」を根本から更新する行為を指す。

 

 

0.1.1 「建築現場」と「生活の場」は共存できない

 

性能向上を伴うリノベーションでは、建物を一度「スケルトン(建物の構造体である柱・梁・基礎以外の全てを取り払った状態のこと)」にします。この時、家の中には床も天井もなく、断熱材が剥き出しになり、数万個の粉塵が舞い上がります。

この状態を「生活の場」として維持しようとすること自体に、物理的なバグが潜んでいます。

 

 

0.1.2 職人の集中力を削ぐ「気遣い」の代償

 

住みながらの工事において、職人は常に「住人の生活」に気を配る必要があります。

朝、工事を始める前に養生(工事箇所や家具を汚れや傷から守るために保護すること)をし、夕方には生活ができるように片付け、掃除をする。この「非生産的な時間」が、全工期の中で30%以上のロスを生みます。

このロスは、結局のところ工期の延長、つまり「人件費の増大」として施主様の請求書に跳ね返ってくるのです。

 

 


導入.2 リノベーションは「高度な外科手術」である ― 患者は手術台にいるべきだ

 

✔ここでのポイント:

リノベーションの本質は、見えない部分の欠陥を修復し、機能を再生させる「外科手術」であり、手術中に患者が動く(住み続ける)ことは、麻酔なしでメスを入れるような無理強いであり、最善の結果を出すための環境を自ら破壊する行為です。

 

私は四代目として、500棟以上の住宅が解体される瞬間に立ち会ってきました。

そこで目にするのは、壁の裏で泣いている家の姿です。シロアリに食い尽くされた土台、湿気で腐り落ちた柱、地震の揺れで接合部が外れかかった梁。

これらの建物の病巣(目に見えない壁の内部や基礎にある、構造的な欠陥や劣化の総称)を完璧に治癒させるには、現場を「完全な管理下」に置く必要があります。

 

用語定義:建物の病巣(びょうそう) 築古住宅の壁内や床下に潜む、シロアリ被害、木材の腐朽、基礎の亀裂、不適切な過去の増改築跡などのこと。これらを放置したまま表面だけを綺麗にしても、住宅の寿命は延びない。

 

 

0.2.1 「厚化粧」では治せない病

 

「住みながらでも、一部ずつ直していけばいい」という提案をする業者もいます。

しかし、それは「化粧直しリフォーム(構造の劣化を放置したまま、内装や設備の見た目だけを新しくする不誠実な改修のこと)」の論理です。本物のリノベーションは、家の「心肺機能」である断熱・換気システムを入れ替え、家の「骨格」である構造を強固にする作業です。

 

 

0.2.2 外科医(職人)が100%の力を発揮できる環境

 

外科医が手術室の衛生環境と静寂を求めるように、リノベーションの職人もまた、施工の精度を出すための「集中できる現場」を必要としています。特に、高断熱化に不可欠な気密処理(建物から隙間をなくし、計画的な換気と断熱効果を最大化するための精密な施工のこと)は、数ミリの隙間も許されない繊細な作業です。住人の視線や生活音、夕方の「撤収期限」に追われる環境で、本当に「一生ものの精度」を叩き出せるでしょうか。

用語定義:気密処理(きみつしょり) 専用の部材やテープを用いて、家の隙間を埋める工事。断熱等級6を実現するためには、C値(隙間相当面積)1.0以下という極めて高い精度が求められ、職人の高い技術と集中力を要する。

 


 

導入.3 2025年改正が突きつける「住みながら」の終焉

 

ここでのポイント:

2025年4月の建築基準法改正(4号特例の縮小)により、大規模改修における構造安全性の証明が厳格化されます。これにより、「適当に、住みながら、少しずつ直す」という曖昧な施工は法的に成立しにくくなり、住宅再生はより「一気通貫の精密工事」へとシフトせざるを得なくなります。

 

住宅業界は今、大きな転換点を迎えています。それが4号特例の縮小です。これまで、小規模な木造住宅のリフォームであれば、構造の安全性を証明する手続きが簡略化されていました。

しかし2025年以降、大規模な修繕や模様替えにおいては、最新の基準に基づいた証明がこれまで以上に求められるようになります。

 

用語定義:4号特例の縮小(2025年建築基準法改正) 木造2階建て住宅等の建築確認時に、構造審査を簡略化できた制度が大幅に制限されること。リノベーションにおいても、耐震性能などの数値を科学的に証明し、届出を行う必要性が高まる。

 

 

0.3.1 法改正という「北極星」

 

この法改正は、施主様にとっては「安全な家」が約束される素晴らしい追い風です。

しかし、同時に「工事の難易度」が飛躍的に上がることを意味します。

構造計算に基づき、家全体のバランスを整えながら補強金物を設置していく作業は、部分的に「住みながら」進められるほど甘いものではありません。

 

 

0.3.2 プロとしての「知的正直さ」

 

私は、気に入られるために「住みながらでも大丈夫ですよ」と嘘を言うことはできません。

それは、プロとしての知的正直さ(自社の利益よりも、専門的知見に基づく真実と顧客の長期的利益を優先する誠実な姿勢のこと)に反するからです。

もし、あなたが20年後、30年後も「この家を選んで、稲葉さんに頼んで本当に良かった」と笑っていてほしいと願うなら、工事期間中は家を「建築現場」として解放していただくべきだと確信しています。

 


 

導入部まとめ:迷宮の出口は「ブランド」ではなく「実体」にある

 

リノベーションを巡る業者選びと、施工方法の選択。それはまさに、正解のない迷宮を歩くようなものです。

しかし、その迷宮を抜けるための確かな「北極星」は存在します。

それは、「建物の骨格を正常化する」という、極めてシンプルで重い目的です。

 

  • 「住みながら」は、施工品質に対する妥協である。

  • 「住みながら」は、実はトータルコストを押し上げるバグである。

  • 「住みながら」は、家族の健康と安全をリスクに晒す行為である。

 

本記事では、次章から「費用」「施工品質」「生活の質」という3つの切り口で、住みながらリフォームと仮住まい利用の徹底比較を行っていきます。数値と実例に基づき、どちらがさんにとってみなさんにとって「真に賢い選択」なのか。四代目として500棟の命を繋いできた私の答えを、一つずつ丁寧に提示していきます。

 


専門用語の定義(再掲):

  • 性能向上リノベーション:断熱・耐震・資産価値を新築以上に引き上げる大規模改修。

  • スケルトン:内装・設備・非構造壁をすべて撤去し、建物の骨組みだけにした状態。

  • 建物の病巣:壁内や床下に隠された、家の寿命を縮める腐朽や欠陥。

  • 気密処理:隙間風をなくし、冷暖房効率と換気能力を最大化させる精密施工。

  • 4号特例の縮小:2025年4月から施行される、リフォームの安全性を厳格化する法改正。

  • 知的正直さ:プロとして不都合な真実を隠さず、顧客の利益のために誠実を貫く姿勢。

第1章:【費用比較】「住みながら」の隠れたコストと仮住まいの真実

第1章:【費用比較】「住みながら」の隠れたコストと仮住まいの真実

 

章の概要:

リノベーションの資金計画において、施主様が最も見落としがちなのが「工事費以外に流出する現金」の正体です。

「住みながらなら仮住まい費用を浮かせられる」という判断は、単一の支出だけを見た近視眼的な思考に過ぎません。

結論から申し上げます。性能向上リノベーションにおいて「住みながら」を選択することは、職人の作業効率を30%以上低下させ、結果として「工期の延長」と「人件費の増大」を招く、極めて合理性に欠ける選択です。

さらに、キッチンや浴室が使えない期間の「外食・銭湯代」といった生活維持費、そして工事の長期化に伴う「二重払いの金利負担」を合算すると、仮住まい費用を上回る「隠れた出費」が発生するケースが多々あります。

本章では、ファイナンシャル・アーキテクト(建築と金融を統合して設計する専門家)の視点から、目に見える家賃の裏側に隠されたコストの構造を白日の下に晒し、賢明な施主様が選ぶべき、トータルコストを最小化するための真実の比較表を提示します。


 

1.1 工期延長という見えない出費:家具の移動や養生に追われる現場が、あなたの財布を蝕む

 

✔ここでのポイント:

住みながらのリフォームでは、毎日発生する「家具の移動」「徹底した養生」「清掃・片付け」という非生産的な作業が全工期の3割を占め、その分の職人の人件費が「目に見えない形」で工事価格に上乗せ、あるいは工期延長というリスクとなって施主様に降りかかります。

 

「住みながら」の現場において、職人が朝最初に行うのは、工事を始めることではありません。

生活空間を傷つけないための「守りの作業」です。これを間接工事費(建物本体の完成には直接寄与しないが、工事を遂行するために必要な付帯的費用のこと)と呼びます。

 

用語定義:間接工事費 建築工事において、材料費や直接の加工賃(直接工事費)以外にかかる、現場管理費や仮設費、養生費などのこと。住みながらのリフォームでは、この比率が極端に高くなる傾向がある。

 

 

1.1.1 職人の「実稼働時間」が削られる構造

 

空き家状態の現場であれば、職人は朝8時から17時まで、一心不乱に柱を立て、断熱材を詰め込むことができます。

しかし、住みながらの現場ではそうはいきません。

 

  1. 朝:生活家電や家具を移動させ、通路を養生する(約1時間)

  2. 夕:木屑や埃を完全に清掃し、養生を剥がし、家具を戻す(約1時間)

  3. 日中:住人様の移動に合わせて作業を一時中断する(断続的に発生)

 

この「準備と片付け」だけで、1日の稼働時間の20~30%が奪われます。

つまり、本来10日間で終わるはずの工程が13日間かかることになります。

この3日分の人件費は、誰が負担するのでしょうか。

それは、見積書の中に「住みながら加算」として、あるいは高めの「諸経費」として紛れ込んでいるのが現実です。

 

 

1.1.2 「工期の長期化」が招く金利のバグ

 

工期が1ヶ月延びれば、その分住宅ローンの「つなぎ融資」の利息や、現在の住まいの維持費が余計にかかります。

用語定義:つなぎ融資 住宅ローンの実行(入居時)までに必要となる、土地購入代金や着工金・中間金を一時的に立て替えて借りる融資のこと。期間が長くなるほど利息負担が増大する。

リノベーションを資産形成の一環として捉えるならば、この機会損失(ある選択をしたために、別のより有利な選択ができなかったことで失われた利益のこと)を無視してはいけません。

短期間で高品質な「箱」を完成させ、一刻も早く新しい生活(=高い断熱性能による光熱費削減生活)を始めることこそが、最も経済的なのです。

 


 

1.2 設備が使えない「不自由」の換算:キッチン、風呂、トイレが消える生活のリアルな支出

 

✔ここでのポイント:

水回りの全面改修を含む性能向上リノベでは、最低でも数週間にわたり「家としての機能」が停止します。その間の外食費、銭湯代、ランドリー代といった「生活維持費」は、1ヶ月で数十万円に達することもあり、仮住まい費用を節約したつもりが、現金流出を加速させる結果に繋がります。

 

性能向上リノベーションにおいて、給排水管(家の血管)の更新は避けて通れません。

これは、キッチン、浴室、トイレといった全ての住宅設備を一時的に「切断」することを意味します。

このインフラ停止期間(生活に不可欠な電気・水道・ガス等の機能が工事のために遮断される期間のこと)のコストを、多くの施主様は過小評価しています。

 

用語定義:インフラ停止期間 リノベーション工事において、給排水管の交換や設備の据え付け替えのために、水回りや電気が使用不能になる期間。特に性能向上リノベでは、配管を基礎からやり直すため、停止期間が長期化しやすい。

 

1.2.1 「外食と銭湯」が家計を圧迫する

 

数週間にわたってキッチンを使えない生活を想像してみてください。

  • 3食すべて外食、あるいはコンビニや惣菜の購入(家族3人で1日1万円の増加)

  • 家族で毎日通う銭湯代(1回1,500円~2,000円)

  • コインランドリーの利用(1回1,000円程度)

これらを積み上げると、1ヶ月で30万円以上の「見積書に載らない支出」が発生します。都内でマンスリーマンションを借りる費用と、どちらが安いかは一目瞭然です。

 

 

1.2.2 ストレスによる「生産性の低下」

 

工事の騒音と埃(ほこり)の中で、満足に風呂にも入れない生活が仕事に与える影響は無視できません。

用語定義:付帯費用(ふたいひよう) 工事費そのものではなく、工事に伴って発生する諸々の費用の総称。仮住まい費、引越し費、駐車場代、トランクルーム代などが含まれる。

 

家は本来、心身を癒やす場所であるべきです。

その機能が損なわれた状態で無理に住み続けることは、家族の健康と仕事のパフォーマンスを削り取る行為に他なりません。

これこそが、目に見えない最大の間接コスト(直接的な支出ではないが、結果として損失を招く負の影響のこと)なのです。

 


 

1.3 仮住まいを選択した際の「トータルコスト」の最適解:最短・最速で資産を確定させる財務戦略

 

✔ここでのポイント:

仮住まいを借りて現場を「空き家」にすることは、職人の最高のパフォーマンスを引き出し、工期を最短化させます。これにより、住宅ローン控除の早期適用や光熱費の大幅削減を前倒しで実現でき、15年、30年という長期スパンで見れば、最もキャッシュが手元に残る「勝てる資金計画」となります。

 

ファイナンシャル・アーキテクトとして私が推奨するのは、仮住まい費用を「コスト(消費)」ではなく、工事の精度とスピードを担保するための「投資」と考える思考の転換です。

 

 

1.3.1 「一体型ローン」で仮住まい費用をハックする

 

リノベーション費用と物件購入費、あるいは借換資金を一つにまとめる一体型ローンを利用する場合、資金計画の中に「諸経費」として仮住まい費用や引越し費用を組み込むことが可能なケースがあります。

 

用語定義:一体型住宅ローン 中古住宅の購入代金とリノベーション費用を一つの金利(主に低利な住宅ローン金利)でまとめて借り入れられるローン商品。リフォームローンを別で組むよりも、月々の返済額と総支払額を劇的に抑えることができる。

 

自己資金(キャッシュ)を削って仮住まいに充てるのではなく、低金利なローンの中に組み込み、手元の現金を温存する。

これにより、万が一の予備費や将来の教育費、老後資金を守りながら、最高品質の住まいを最短で手に入れることが可能になります。

 

 

1.3.2 2026年改正と「入居日」のデッドライン

 

前述の通り、2026年度(令和8年度)の税制改正による住宅ローン減税の拡充を受けるには、定められた期間内に工事を完了させ、入居を済ませる必要があります。

 

用語定義:住宅ローン控除の適用要件 住宅ローン減税を受けるために満たさなければならない条件。居住用であること、床面積が一定以上であることのほか、「工事完了から6ヶ月以内の居住」などの期限管理が厳格に求められる。

 

住みながらの工事で予想外のトラブルが発生し、工期が2ヶ月延びたために減税の適用年度がズレてしまったら――。それだけで、最大409.5万円の控除チャンスを逃す、あるいは減額されるという致命的な損失を被ります。現場を職人に預け、一気に完成させることは、この「税制上の利益」を確実に掴むための最強のリスクヘッジなのです。

 

 

1.3.3 断熱性能による「利回り」を前倒しする

 

断熱等級6(HEAT20 G2相当)の家に1ヶ月早く住み替えることは、その月の電気代が1.5万円~2万円安くなることを意味します。

これを「投資の回収」と捉えるならば、工期を短縮することは、あなたの家のエネルギー・リターン(省エネによって得られる経済的還元のこと)を最大化する行為に他なりません。

 


第1章まとめ:目先の「出ないお金」に惑わされるな

 

「住みながら」リフォームが魅力的に見えるのは、通帳から一度に大きな金額(家賃)が引き落とされないからです。しかし、ここまで解説した通り、その代償として「職人の手間賃(人件費)」と「過酷な生活維持費」が、じわじわとあなたの資産を削り取っていきます。

 

  • 「住みながら」は、人件費のバグを招く。

  • 「住みながら」は、外食・銭湯という現金の垂れ流しを招く。

  • 「住みながら」は、税制優遇や光熱費削減という利益を遠ざける。

 

四代目の私が現場で培った「積算の真実」は、「現場を空けて、プロを集中させることこそが、最も安上がりである」という極めてシンプルな結論です。

 

 


専門用語の定義(再掲):

  • 間接工事費:現場の安全や清掃、近隣対策など、建物本体以外にかかる必須経費。

  • つなぎ融資:住宅ローンの実行前に、一時的に工事資金などを借りるための融資。

  • 機会損失:より良い選択肢を逃したことで生じる、潜在的な利益の損失。

  • インフラ停止期間:水道、ガス、電気が使用できなくなる、生活維持の空白期間。

  • 一体型住宅ローン:物件費とリノベ費を合算し、低金利で長期間借りられるローン。

  • エネルギー・リターン:断熱改修などの投資によって得られる、将来の光熱費削減効果。

第2章:【施工品質】「住みながら」では到達できない性能の壁

第2章:【施工品質】「住みながら」では到達できない性能の壁

 

章の概要:

リノベーションにおいて、施主様が最も優先すべきは「断熱等級6」や「耐震等級3」といった、目に見えないが命と健康に直結する基礎性能の確保です。

しかし、これらの最高スペックを「住みながら」の工事で実現しようとすることは、物理的・技術的な観点から言えば、不可能に近い極めて困難な挑戦となります。

結論から申し上げます。性能向上リノベーションの魂は、建物全体を隙間なく包み込む「連続性」と、家全体の強度バランスを整える「同時性」にあります。生活空間を維持するために工事を細切れに分断した瞬間、断熱欠損や構造的な歪みが生じるリスクが劇的に高まり、結果として「高い金を払ったのに性能が出ない」という最悪の事態を招きます。

本章では、500棟の現場で精密な数値を叩き出してきた実務家の視点から、なぜ「住みながら」では最高品質の「箱」を造り上げることができないのか、その技術的な裏側を徹底的に解説します。

 


 

2.1 断熱・気密の「連続性」を守れるか:継ぎ目だらけの防護服では、冬の寒さは防げない

 

ここでのポイント:

断熱等級6(HEAT20 G2相当)を実現するための肝は、家全体を高性能な断熱材と気密シートで「一筆書き」のように隙間なく包み込むことにありますが、住みながらの分割施工では、この「連続性」が物理的に断絶され、目に見えない熱の逃げ道(熱橋)を無数に作ることになります。

 

高性能な住宅を造ることは、極めて高性能な「防護服」を家に着せるようなものです。

もしその防護服のファスナーが半分開いていたり、袖口に大きな隙間があったりすれば、どんなに厚い生地(断熱材)を使っていても、冷気は容赦なく侵入します。

これが、性能向上リノベーションにおいて最も重視される断熱・気密の連続性(建物の外周部を途切れることなく断熱材と気密層で覆い、熱の出入りと隙間風を完全にコントロールする状態のこと)です。

 

用語定義:断熱・気密の連続性

住宅の床・壁・天井(屋根)を繋ぐ接合部において、断熱材と気密シートが隙間なく連続している状態。これが途切れると「断熱欠損」や「気密漏れ」となり、冷暖房効率の低下や壁内結露の原因となる。

 

 

2.1.1 「ゾーン分け」が招く断熱のバグ

 

「住みながら」の工事では、必然的に「1階を直している間は2階で過ごす」といったゾーン分けが発生します。

しかし、断熱材を1階の壁に入れた後、2階の工事が始まるまでの数週間、あるいは数ヶ月間、その境界線はどうなっているでしょうか。

分割して工事を行うと、1階と2階の接合部で気密シートを完全に一体化させることが極めて困難になります。

この「継ぎ目」こそが、将来の内部結露(壁の内部で暖かい空気が冷やされ、水滴となって構造材を腐らせる現象のこと)の温床となるのです。

 

 

2.1.2 C値(隙間相当面積)1.0以下の絶対条件

 

断熱等級6を機能させるには、C値(家全体にどれくらいの隙間があるかを示す数値のこと)を1.0以下、できれば0.5前後まで追い込む必要があります。

 

用語定義:C値(隙間相当面積)

家の気密性能を数値化したもの。建物全体の隙間の合計面積($cm^2$)を延床面積($m^2$)で割って算出する。数値が小さいほど隙間が少なく、高性能であることを示す。

 

空き家状態であれば、家全体の隙間を一度にチェックし、目視できない小さな穴まで専用の気密テープや部材で塞ぐことができます。しかし、家具が置かれ、生活の養生がなされた現場で、この「一分の隙もない施工」を徹底することは物理的に不可能です。

住みながらのリフォームで「C値」を実測し、高い数値を担保している業者が皆無に近いのは、このためです。

 


 

2.2 耐震補強の「同時性」の重要性:建物全体のバランスを整える補強が、部分改修で歪むリスク

 

✔ここでのポイント:

耐震等級3(評点1.5以上)の安全性を確保するには、建物全体の重心と剛心のズレを計算し、家全体を「一つの強固な箱」として同時に固める必要があります。住みながらの部分的な補強は、かえって特定の部位に負荷を集中させ、大地震時に予期せぬ破壊を招く「構造的な歪み」を生む危険性があります。

 

地震に強い家を造るということは、単に「強い壁を増やす」ことではありません。

建物全体の剛性バランス(建物が揺れに対してどれだけ均一に抵抗できるかという均衡状態のこと)を整える高度なエンジニアリングです。

 

用語定義:剛性バランス(偏心率)

建物の重さの中心(重心)と、硬さの中心(剛心)のズレの割合。このズレが大きいほど、地震の際、建物はねじれるように揺れ、一部の柱や壁に過度な負担がかかって倒壊リスクが高まる。

 

 

2.2.1 「同時施工」でなければ計算通りに動かない

 

耐震等級3(建築基準法の1.5倍の強度)を実現するためには、基礎、柱、梁、そしてそれらを繋ぐ金物を、計算に基づいた適切な位置に、同時に配置しなければなりません。

「住みながら」で1階だけを先に補強し、2階を後回しにする。

あるいは南側だけを強くして北側をそのままにする。このような段階的施工は、計算上の「設計値」と現場の「実力値」に大きな乖離(かいり)を生みます。

不完全なバランスのまま強い地震に見舞われれば、補強していない部分に力が集中し、そこから家が引き裂かれる「ねじれ破壊」が起こるリスクを、私は四代目として誰よりも危惧しています。

 

 

2.2.2 基礎の連続性が命を守る

 

耐震補強の要は基礎です。古い家の「無筋基礎」を補強する場合、既存の基礎に沿って新しい鉄筋コンクリートを抱かせる「増し打ち」を行いますが、これも一度に一体で打設(コンクリートを流し込むこと)することで、最大の強度を発揮します。

 

用語定義:基礎の増し打ち補強

既存の布基礎などの横に、新しく鉄筋を配したコンクリート基礎を一体化させるように造ること。建物を支える耐力を劇的に向上させ、地震時の沈み込みや浮き上がりを防ぐ。

 

住みながらの工事で、一部ずつ基礎を継ぎ足していく工法では、この「一体性」が損なわれます。コンクリートの打ち継ぎ部分は、構造上の弱点になりやすく、最高スペックである耐震等級3を名乗るには、あまりにも頼りない施工と言わざるを得ません。

 


 

2.3 埃(ほこり)とアレルギー:生活空間と解体現場を遮断することの物理的な限界

 

ここでのポイント:

築30年以上の住宅の解体現場では、数十年前の有害な粉塵、カビの胞子、シロアリの死骸、さらには断熱材の繊維などが大量に舞い上がります。これらを生活空間から完全に遮断(シール)することは不可能であり、家族の健康、特に呼吸器系への深刻な「環境的二次被害」を招くリスクが極めて高いのが現実です。

 

リノベーションは「壊す」ことから始まります。この解体工程で発生する粉塵(ふんじん)の量は、新築現場の比ではありません。私は解体現場に立ち会う際、必ず高性能な防塵マスクを着用します。それほどまでに、古い家の壁の裏側は、環境的リスク(住む人の健康を害する可能性のある物理的・化学的要因のこと)に満ちています。

 

用語定義:環境的リスク(リノベーション現場における)

壁内や天井裏に蓄積された数十年分のハウスダスト、古いグラスウールの細かな破片、カビ、ダニの糞、シロアリの防蟻剤の残留成分などが、解体によって空気中に飛散すること。

 

 

2.3.1 目に見えない「微細粒子」の侵入

 

ビニールシートで「養生」をすれば大丈夫だ、と多くの業者は言います。しかし、空気の流れを完全に止めることはできません。

  • 職人が出入りする際の気圧の変化

  • 工具(サンダーや丸ノコ)から発生する超高速の粉塵

  • 換気扇を通じた微細なカビ胞子の循環

これらは、どんなに丁寧に養生をしても、必ず佐藤さんの食卓や寝室へと忍び込みます。特に喘息(ぜんそく)やアレルギーをお持ちのご家族がいる場合、この「住みながらの解体」は、文字通り健康の資産を削り取る行為に他なりません。

 

 

2.3.2 施工品質を下げないための「クリーンな現場」

 

実は、現場の「埃」は施工品質にも直結します。

例えば、気密テープを貼る際、木材の表面に微細な粉塵が乗っていれば、粘着力は劇的に低下し、数年で剥がれてしまいます。

あるいは、高性能な住宅設備の内部に工事の砂埃が入り込めば、初期不良や故障の原因となります。

 

用語定義:施工品質の純度

工事期間中、現場がいかに清潔に保たれ、部材本来の性能(粘着、嵌合、潤滑など)が損なわれずに組み上げられているかの度合い。空き家状態であれば、一日の終わりに「完全清掃」が可能だが、住みながらではその精度が落ちる。

 

私は四代目として、「良い家は、現場が綺麗である」と教わってきました。

住まい手の大切な生活と、私たちのプライドである精密な施工。

この二つを、同じ屋根の下で、同じタイミングで成立させることは、誠実な技術者であればあるほど「避けるべき博打」であると考えるはずです。

 


 

第2章まとめ:「箱の完成度」が、あなたの余生を決定づける

 

「住みながら」リフォームが、なぜ断熱等級6や耐震等級3という高みへ到達できないのか。

その理由は、職人の腕の良し悪し以前に、「建築物理学的な制約」にあります。

 

  • 断熱・気密: 継ぎ目という「弱点」を自ら作り出してしまう。

  • 耐震: バランスという「全体最適」を分断してしまう。

  • 環境: 健康という「最も大切な価値」を危険に晒してしまう。

 

リノベーションの完成度は、15年後の佐藤さんの満足度、そしてその家の「リセールバリュー(売却価格)」に直結します。

目先の仮住まい費用を浮かすために、これらの本質的な価値を損なうことは、ファイナンシャル・アーキテクトの視点で見れば「極めて利回りの悪い投資」です。

 


専門用語の定義(再掲):

  • 断熱・気密の連続性:外皮を隙間なく魔法瓶のように包み込む、高性能住宅の基本。

  • 内部結露:壁の中で起こる結露。建物の寿命を縮める「目に見えないガン」。

  • C値:家の隙間の量。住みながらの工事では、この数値を追い込むことは不可能。

  • 剛性バランス:建物全体の揺れに対する強さの均衡。部分改修はこのバランスを壊す。

  • 増し打ち補強:基礎を一体的に強くする、耐震リノベの生命線。

  • 施工品質の純度:清浄な現場環境がもたらす、精密施工の信頼性。


 

 

 

第3章:【生活の質】想像を絶する「工事中のストレス」を検証する

第3章:【生活の質】想像を絶する「工事中のストレス」を検証する

 

章の概要:

リノベーションの検討段階で、図面や見積書からは決して読み取ることができない最大の不確定要素、それが「住みながら工事を行うことによる精神的・身体的ストレス」です。

多くの施主様は「数ヶ月の辛抱だから」と軽く考えがちですが、建物の骨格を作り直すレベルの性能向上リノベーションにおいて、住みながらの生活を維持することは、結論から申し上げますと「家族の平穏と絆を壊しかねない過酷な試練」となります。

プライバシーが完全に消失した空間での見知らぬ職人との共生、断熱材を剥がした極寒・酷暑の室内環境、そして日常生活の至る所に潜む物理的な危険。これらは数値化こそ困難ですが、ご家族にとって、仕事のパフォーマンスや心身の健康を著しく損なう「見えない負債」となります。

本章では、数多くの現場で施主様のリアルな疲弊を見てきた私の経験に基づき、住みながらリフォームが生活の質にいかに致命的なダメージを与えるのか、その生々しい実態を断定的に解説します。

 


 

3.1 騒音とプライバシーの消失:朝8時から始まる「非日常」の連続が、心の安寧を奪う

 

✔ここでのポイント:

住みながらのリノベーションは、本来最も安らげるはずの「聖域」である自宅に見知らぬ他人が毎日入り込み、逃げ場のない騒音と視線に晒され続けることを意味し、これが数ヶ月続くことで、施主様の精神的な疲弊は限界に達し、家庭内の不和や健康被害を招くリスクを飛躍的に高めます。

 

家とは、外の世界の緊張から解放され、心身をリセットするための場所です。

しかし、「住みながら工事」を選択した瞬間、その自宅の聖域性(住まい手が誰にも邪魔されず、心からリラックスできる不可侵な空間としての価値のこと)は完全に崩壊します。

 

用語定義:自宅の聖域性 住居が持つ、外部の社会的ストレスから住まい手を隔離し、精神的な回復を促す機能。リノベーションにおける「住みながら施工」では、この機能が物理的・心理的に遮断される。

 

3.1.1 「見知らぬ他人」との終わりのない共生

 

想像してみてください。朝8時、チャイムと共に数人の職人が家の中に入ってきます。

あなたがパジャマでコーヒーを飲んでいようと、奥様が家事をしていようと、工事は始まります。

 

  • トイレに行くにも職人の視線を気にする。

  • 廊下ですれ違うたびに、あるいは作業の音を聞くたびに「気を遣う」。

  • 貴重品やプライベートな空間を常に意識し、施錠や管理に追われる。

 

この「他人が常に家にいる」というストレスは、数日なら耐えられても、2ヶ月、3ヶ月と続くうちに、じわじわと心の余裕を削り取っていきます。

特に管理職として外部で常に気を張っている方にとって、帰宅後も「現場」である自宅に身を置くことは、慢性的な心理的摩耗(継続的なストレス要因により、精神的なエネルギーが枯渇し、感情のコントロールが困難になる状態のこと)を引き起こします。

 

 

3.1.2 容赦ない騒音と振動の「暴力」

 

性能向上リノベーションにおける解体や構造補強の音は、一般的な家具の組み立て音などとは次元が違います。コンクリートを砕く振動、金属を切断する高周波音、柱を叩く衝撃音。

 

用語定義:工事騒音の不快指数 工事中に発生する断続的な大きな音や振動が、住まい手の聴覚や神経に与える不快感の度合い。特に在宅ワークや休息が必要な時間帯において、精神的苦痛を増幅させる要因となる。

 

ビニールカーテン1枚隔てた先で、これらの音が1日中鳴り響く環境。テレビの音は聞こえず、会話も成立しません。この環境下で「普通に暮らす」ことは、物理的にも精神的にも不可能であると断言せざるを得ません。

 


 

3.2 冬の寒さと夏の暑さ:断熱性能を「ゼロ」にするプロセスの過酷さ

 

✔ここでのポイント:

断熱等級6という究極の快適さを手に入れる過程では、既存の壁や天井を剥がし、一時的に「断熱材が全くない状態」を耐え忍ぶ必要があります。住みながらの工事において、この「無断熱期間」の過酷な室内環境は、家族の免疫力を低下させ、深刻な健康リスクを招く致命的なバグとなります。

 

私たちが提唱する「性能向上リノベーション」は、最終的に「冬でも魔法瓶のような暖かさ」を実現します。

しかし、その魔法を実現するためには、一度、今ある古い断熱材をすべて取り除き、建物の骨格を丸裸にしなければなりません。

このサーマル・ボイド(断熱層が撤去され、外気温がダイレクトに室内に影響を及ぼす空白期間のこと)の過酷さを、多くの施主様は計算に入れていません。

 

用語定義:サーマル・ボイド(熱的空白) リノベーションの工程上、古い断熱材を撤去してから新しい高性能断熱材を充填するまでの期間。壁や天井の遮熱・断熱機能が喪失し、室内が外気温とほぼ同等になる極めて過酷な環境を指す。

 

3.2.1 「エアコンが効かない」という絶望

 

断熱材を剥がした壁の裏は、すぐに外気です。冬であれば、冷気が壁紙(あるいは養生のビニール)を透過して、室温を一気に奪います。エアコンを最強にしても、温められた空気は隙間から逃げ出し、足元には氷のような冷気が溜まり続けます。

夏であれば、屋根裏の熱気が天井を突き抜け、室温は40度近くまで上昇します。

この環境で、佐藤さんの大切なご家族に「寝ろ」というのは、あまりにも酷な話ではないでしょうか。

 

 

3.2.2 健康への二次被害:免疫力の低下

 

特に55歳を過ぎ、身体の調整機能が変化してくる時期において、激しい室温の変化は心臓や血管への負担を増大させます。

用語定義:温熱ストレス 暑さや寒さという物理的環境が、生体の維持機能に負荷をかけること。工事中の不安定な温熱環境は、深い睡眠を妨げ、風邪、血圧上昇、心血管疾患の引き金となるリスクがある。

 

「住みながら」で断熱等級6を目指すことは、いわば「冬の吹雪の中で、防寒着を脱いで新しい服を仕立てるのを待つ」ような矛盾した行為です。

四代目の私が見てきた成功事例は、すべて「工事期間中は快適な仮住まいで英気を養い、完成した瞬間に最高の温熱環境へと移り住む」という、合理的な判断に基づいたものばかりです。

 


 

3.3 家族の安全管理:日常生活の至る所に潜む「物理的な罠」

 

✔ここでのポイント:

リノベーション現場は、常に「剥き出しの危険」に満ちた場所であり、段差、釘、工具、粉塵といったリスクを生活空間から完全に排除することは不可能です。高齢のご両親や小さなお子様、さらには健康な大人にとっても、一瞬の不注意が取り返しのつかない事故に繋がる「罠」が日常生活の動線に組み込まれてしまいます。

 

現場監督としての視点から言えば、工事現場は「プロが安全靴を履き、ヘルメットを被って初めて安全が担保される場所」です。そこに、スリッパや裸足で生活する家族が立ち入ること自体に、本質的な安全性のバグが潜んでいます。

 

 

3.3.1 日常動線に潜む「地雷」

 

住みながらの工事では、昨日まで平らだった床に突然段差ができたり、廊下の一部が合板(仮の床)になったりすることが日常茶飯事です。

 

  • 夜中、トイレに起きた際、暗がりの中で養生シートに足を滑らせる。

  • 柱からわずかに飛び出したビス(ネジ)の頭に服や肌を引っ掛ける。

  • 解体時に発生した微細な木片や釘を、スリッパの裏で踏み抜く。

 

これらは、職人がどれだけ丁寧に片付けをしても、100%防ぐことはできません。特に視力が低下し始めた高齢のご両親がいる場合、これらの小さな変化は致命的な家庭内事故(住宅内での転倒、転落、負傷などのこと。リノベーション中はこれらのリスクが通常時の数倍に跳ね上がる)を誘発します。

 

3.3.2 呼吸器を蝕む「目に見えない微粒子」

 

第2章でも触れましたが、解体時に舞い上がる数十年分のハウスダストやカビの胞子、断熱材の微細な繊維。これらは、養生で完全に封じ込めることはできません。

 

用語定義:建設由来粉塵(ふんじん) 工事中に発生する、セメント、石膏、木材、断熱材などの微細な破片や、解体によって飛散する古い汚染物質。これらを吸い込み続けることは、アレルギー、喘息、化学物質過敏症の原因となる。

ご家族が、この粉塵が浮遊する空間で食事をし、睡眠をとる。その身体的な負担は、工事が終わった後も後遺症として残る可能性があります。私は、施主様の健康を第一に考える知的正直さ(顧客の身体的・精神的安全を、コストや利便性よりも優先して伝える誠実さ)から、このリスクを看過することはできません。

 

結論:15年後の満足度を買うなら、迷わず「仮住まい」を選べ

結論:15年後の満足度を買うなら、迷わず「仮住まい」を選べ

 

まとめ: 部分的な内装リフォームなら「住みながら」も可能ですが、建物の骨格を直す「性能向上リノベーション」では、仮住まいが最も合理的で高品質な近道です。

 

ここまで読んでいただければ、お分かりのはずです。「住みながら」という選択が浮かす目先の数十万円の家賃。その代償として支払うのは、家族の健康、心の平穏、そして最も重要な「施工品質の完成度」です。

 

  • 「住みながら」は、プライバシーという心の資産を破壊する。

  • 「住みながら」は、温熱環境という身体の資産を破壊する。

  • 「住みながら」は、安全という命の資産を破壊する。

 

リノベーションを終えた15年後、佐藤様が「あの時のリノベは大成功だった」と胸を張って言えるかどうか。それは、工事期間中の数ヶ月を「苦行」にするか、あるいは「未来への期待を膨らませるワクワクした時間」にするかという、最初の選択にかかっています。

 

次なるステップ: まずは「住みながら」でどこまで直せるのか、具体的な施工範囲を数値でシミュレーションしましょう。

私たちのインスペクションでは、物理的な建物の診断だけでなく、佐藤様のライフスタイルに合わせた「最適な施工計画」も提案します。無理な「住みながら」で後悔する前に、まずはプロの視点でのリスク診断を受けてください。それが、後悔しない家づくりの第一歩です。

 


専門用語の定義(再掲):

  • 自宅の聖域性:誰にも邪魔されず、心身を癒すことができる住宅本来の機能。

  • 心理的摩耗:終わりのないストレス要因により、精神が疲弊しきってしまうこと。

  • サーマル・ボイド:断熱材を剥がしたことで生じる、室内が外気温と同じになる過酷な期間。

  • 温熱ストレス:急激な温度変化が身体に与える過大な負荷。

  • 建設由来粉塵:解体や加工時に発生し、アレルギーや呼吸器疾患の原因となる微細なゴミ。

  • 家庭内事故:工事中の現場特有の危険箇所で発生する怪我や転倒。


 

< この記事の著者情報 >

稲葉 高志

 

ハイウィル株式会社 四代目社長

1976年生まれ 東京都出身。

【経歴】

家業(現ハイウィル)が創業大正8年の老舗瓦屋だった為、幼少よりたくさんの職人に囲まれて育つ。

中学生の頃、アルバイトで瓦の荷揚げを毎日していて祖父の職人としての生き方に感銘を受ける。 日本大学法学部法律学科法職課程を経て、大手ディベロッパーでの不動産販売営業に従事。

この時の仕事環境とスキルが人生の転機に。  TVCMでの華やかな会社イメージとは裏腹に、当たり前に灰皿や拳が飛んでくるような職場の中、東京営業本部約170名中、営業成績6期連続1位の座を譲ることなく退社。ここで営業力の基礎を徹底的に養うことになる。その後、工務店で主に木造改築に従事し、100棟以上の木造フルリフォームを大工職人として施工、管理者として管理

2003年に独立し 耐震性能と断熱性能を現行の新築の最高水準でバリューアップさせる戸建てフルリフォームを150棟営業、施工管理に従事

2008年家業であるハイウィル株式会社へ業務移管後、 4代目代表取締役に就任。

250棟の木造改修の営業、施工管理に従事

2015年旧耐震住宅の「耐震等級3」への推進、「断熱等級6」への推進を目指し、 自身の通算500棟を超える木造フルリフォーム・リノベーション経験の集大成として、性能向上に特化した日本初の木造フルリオーム&リノベーションオウンドメディア 「増改築com®」をオープン

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