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リノベーション済み物件の注意点:見た目に騙されない7つのチェックポイント

更新日:2026/01/08

木造リノベーションの“全”疑問に答える|匠が教える460の知恵

リノベーション済み物件の注意点:見た目に騙されない7つのチェックポイント

~「厚化粧」の下に隠された建物の真実。プロが狙う「金の卵」を見極める~
工務店・ハウスメーカー・設計事務所の違い:増改築.comが選ばれる理由(500棟の実績から見る強み)

章の概要: 不動産情報サイトに並ぶ「リノベーション済み物件」の多くは、最新のシステムキッチンや北欧風の内装で彩られ、まるで新築のような輝きを放っています。

しかし、5000棟以上の現場を見てきた私の視点から断言すれば、その「綺麗さ」こそが最も警戒すべき「罠」です。買取再販業者の多くは、販売価格を上げるために「目に見える部分」に予算を集中させ、住宅の寿命と安全を左右する「目に見えない骨格(耐震・断熱・基礎)」を放置、あるいは隠蔽しているケースが後を絶ちません。

本章では、プロが「お宝物件」を鑑定する際の冷徹なロジックを、リノベーション済み物件の「判定基準」へと転換して解説します。

上部構造評点の数値化、UA値の有無、サッシの交換状況など、科学的根拠に基づく7つのチェックポイントを公開します。結論として、あなたが買うべきは「ブランド名」や「意匠」ではなく、15年後も家族の命と健康を守り抜ける「証明された性能」です。この記事を読み終えた時、あなたは表面的な美しさを「無視」し、家の本質を射抜くプロの眼を手にしているはずです。

木造リノベーションの“全”疑問に答える|匠が教える460の知恵YouTube動画(こちらのコンテンツの動画解説です)

【危険】相見積もりで安い業者を選ぶと家族の命が危ない!建築のプロが教える正しい業者選び|耐震・断熱の真実

第1章:視点を180度変えろ!プロが「綺麗」を無視する理由

第2章:【実務家の眼】見た目に騙されないための「7つのチェックポイント」

第3章:プロが実践する最強の戦略「内部ハーフスケルトン」とは?

第4章:結論:あなたが買うべきは「ブランド名」ではなく「証明された性能」

第1章:視点を180度変えろ!プロが「綺麗」を無視する理由

導入部:家づくりの「迷宮」へようこそ。その選択基準、実は間違っていませんか?

 

章の概要:

本章の目的は、中古住宅、特に「リノベーション済み物件(買取再販物件)」を検討する施主様が陥りやすい「表面的な美しさという罠」を完全に解体し、プロの目利きがどこを見ているのかという視点の転換を促すことにあります。

不動産情報サイトで輝いて見える最新のシステムキッチンや、洗練された壁紙、北欧風のインテリア。これらは一見、付加価値に見えますが、住宅再生のプロフェッショナルからすれば、建物の真の健康状態を覆い隠す「遮蔽物」に過ぎないケースが多々あります。

結論から申し上げます。「性能向上リノベーション」を前提として資産を構築する場合、内装や設備の綺麗さは価値ゼロどころか、解体コストを増大させ、真の病巣を見えなくさせる「負債」となり得ます。

本章を通じて、施主様は「綺麗だから良い物件」という既存の物差しを捨て、建物の寿命と家族の命を守る「骨格(OS)」と、後からいくらでも着せ替え可能な「意匠(アプリ)」を峻別(しゅんべつ)する知性を手にすることになります。

500棟の解体現場で私が目撃してきた「厚化粧の下の悲鳴」という真実を基に、賢明な投資家としての物件選びの第一歩を論証します。

 


 

1.1 なぜ「最新設備」は評価に値しないのか:住宅の「OS」と「アプリ」の峻別

ここでのポイント:

 最新の住宅設備や真新しい内装は、住宅をシステムとして捉えた時の「アプリケーション(上澄みの機能)」に過ぎません。解体と性能向上を前提とする場合、これらは全て撤去の対象となるため、そこに支払われる「リフォーム済み価格」の上乗せ分は、資産形成において純粋な損失となります。

リノベーションを検討されている佐藤様にお尋ねします。あなたは、中古住宅の内覧に訪れた際、まずどこに目が向きますか? 「キッチンが対面式で使いやすそう」「壁紙が張り替えられていて、このまま住めそう」。

そう感じたとしたら、その瞬間こそが、最も警戒すべき「思考の罠」の入り口です。

なぜ、我々プロはそれらを「価値ゼロ」と断じるのでしょうか。その背景にある論理を、ITシステムになぞらえて探求してみましょう。

 

1.1.1 UI(ユーザーインターフェース)の美しさと、CPU(中央演算処理装置)の脆弱性

ITプロジェクトにおいて、画面のデザイン(UI)がどれほど美しく、使い勝手(UX)が洗練されていても、そのシステムを動かすサーバーのCPUが20年前の骨董品であったり、メモリが不足して基盤がショート寸前であれば、そのシステムは「ゴミ」と同義です。 住宅における「最新設備」や「綺麗な壁紙」は、まさにこのUIの部分です。

一方で、私たちが「性能向上リノベーション」で再構築しようとしている「耐震性能(耐震等級3・評点1.5以上)」や「断熱性能(断熱等級6・HEAT20 G2相当)」は、システムの根幹であるCPUや基盤そのものです。

 

用語定義:建物の骨格性能(OS) 住宅の寿命、安全性、温熱環境を根本から支える基礎、柱、梁、屋根といった構造体、および断熱材、気密層、計画換気システムの総称。住まいの「オペレーティング・システム」であり、後からの修正が最も困難な領域。

 

1.1.2 「解体費用を払って捨てるもの」にお金を払う矛盾

性能向上リノベーションのプロセスにおいて、床・壁・天井は一度すべて取り払われ、構造躯体が剥き出しになる「スケルトン状態」になります。

 

用語定義:スケルトン 建物の構造体(骨組み)以外の仕上げ材、設備、非構造壁などをすべて撤去した状態。住宅の「素顔」を露わにし、隠れた劣化を診断して性能を再構築するための不可欠な工程。

 

つまり、あなたが「綺麗だ」と感嘆したそのキッチンも、高価なエコカラットの壁も、すべては私たちの工事において「廃材」として処分される運命にあります。

リノベーション済み物件として売られている価格には、その「いずれ捨てるもの」の購入費と施工費、そして業者の利益が上乗せされています。 これを買うことは、ITサーバーを刷新するプロジェクトにおいて、中身の基盤(OS)を入れ替えるために、わざわざ新品の筐体(ケース)を買って、そのケースをハンマーで壊して捨てることから始めるようなものです。これほど投資効率の悪い選択はありません。

 

1.1.3 500棟の現場で見た「無表情な匠」の真意

私は500棟以上の解体現場に立ち会ってきましたが、どんなに豪華なシャンデリアがあろうと、最新の食洗機があろうと、それらに心を奪われることはありません。私の視線は常に、その裏側にある「柱の含水率」や「基礎の亀裂」に向いています。

 

用語定義:知的正直さ 専門家が自社の利益や感情を排し、科学的根拠や物理的な真実を優先して顧客に伝える誠実な態度のこと。増改築.com®において、物件の短所を包み隠さず指摘する際の根本哲学。

 

リテラシーの高い佐藤様であれば、すでに気づかれているはずです。あなたが求めているのは、2〜3年で型遅れになる「設備(アプリ)」ではなく、15年、30年経っても家族を震災から守り、ヒートショックから救い、資産価値を維持し続ける「強固な箱(OS)」であるはずだ、ということに。

 


 

1.2 「中途半端なリフォーム済み」が最大の負の遺産となる理由:隠蔽された病巣のリスク

ここでのポイント:

不動産会社が販売促進のために行う「化粧直しリフォーム」は、不具合の解決ではなく「隠蔽」として機能してしまいます。真の再生を試みようとすれば、新しくしたばかりの内装を剥がすという、二重のコストと心理的障壁が、あなたの住宅投資を阻害する最大の足かせとなります。

なぜ、私は「リフォーム済み物件」をこれほどまでに警戒するのでしょうか。

そこには、建築実務者としての苦い臨床経験があります。綺麗な壁紙の裏で、家がどのような状態になっているか、その深淵を覗いてみましょう。

 

 

1.2.1 「厚化粧」は建物の死期を早める

想像してください。末期的な疾患を抱えた患者に対し、適切な治療(構造補強や断熱改修)を行わず、顔に厚化粧を施して「元気そうに見える」と診断する医師がいたとしたら。それは医療ではなく、詐欺です。 買取再販業者が行うリフォームの多くは、まさにこの「厚化粧」です。

 

用語定義:化粧直しリフォーム 構造の劣化や断熱不足、給排水管の老朽化といった建物の根幹課題(バグ)を解決せず、壁紙、床材、住宅設備などの目に見える「意匠(アプリ)」のみを新しくする不誠実な改修のこと。

 

リフォーム済み物件の内覧で「床の傾きがありませんね」と安心するのは早計です。

新しい床材を上貼りする際に、下地で無理やり水平を合わせているだけかもしれません。壁が綺麗に塗られていても、その内側の断熱材は湿気でカビ、柱は腐り落ちているかもしれません。化粧直しをされた物件は、これらの「家のSOS」を覆い隠してしまうのです。

 

1.2.2 二重コストという経済的な「バグ」

このような物件を購入し、入居後に「やっぱり冬が寒すぎる」「大きな地震が来たら不安だ」と感じて、私たちのところに相談に来られる施主様が後を絶ちません。

その際、私たちは残酷な真実を告げなければなりません。 「性能を向上させるためには、その新しくて綺麗な壁や床を、すべて剥がして捨てなければなりません」と。 この時、施主様は二つの「高くつく損失」に直面します。

 

  1. 購入時に支払った「綺麗なリフォーム費用」というプレミアムの消滅。

  2. そのリフォームを解体して処分するための追加の解体・廃棄費用。

これが、私が「中途半端なリフォーム済み物件は最悪の選択である」と断じる経済的根拠です。

 

1.2.3 2025年改正建築基準法が暴く「隠蔽」の罪

2025年4月に施行された建築基準法改正、いわゆる「4号特例の縮小」は、これまで曖昧にされてきたリフォームの安全性に一石を投じます。

用語定義:4号特例の縮小(2025年建築基準法改正) 木造2階建て住宅等の建築確認時の構造審査を簡略化できた制度が大幅に制限されること。大規模な改修において構造安全性の確認と証明が厳格化されるため、過去の不適切なリフォームが「不適合」として顕在化するリスクが高まっている。

これからの時代、数値で証明(デバッグ)されていないリフォーム済み物件は、売却時に「性能不明の家」として買い叩かれるリスクを孕んでいます。表面の綺麗さに騙されて「負の遺産」を背負うのか、それとも「骨格」から再生する道を選ぶのか。その「決断」が、佐藤様の将来のキャッシュフローを左右するのです。

 

 


 

1.3 プロが「無視」し、あえて「ボロさ」を歓迎する逆説的な鑑定術

ここでのポイント:

性能向上リノベーションの成功は、物件を見る視点を180度転換し、「内装の汚さ」をメリットとして捉えることから始まります。

内装プレミアムが乗っていない「安価な原石」を手に入れ、浮いた予算を「構造・断熱」というコア・コンポーネントに全投下することこそが、新築を超える資産価値を生む最短ルートです。

では、私たちプロは、どのような物件を「お宝」と定義しているのでしょうか。佐藤様、驚かないでください。私たちが最も歓迎するのは、「長年空き家で、内装はボロボロ、雨漏りの跡すらあるが、主要な骨組み(ウッドストック)に生命力が残っている家」です。なぜ、不快なものとして忌避される要素が、お宝の条件になるのでしょうか。

 

 

1.3.1 「内装ボロボロ=価格交渉の強力な武器」

一般の購入者が「汚いから嫌だ」と敬遠する物件は、市場で長く残り、価格が下落します。

しかし、私たちにとっては、どのみち剥がして捨てるものですから、内装が汚いことは何のデメリットにもなりません。むしろ、その「汚さ」を理由に物件価格を大幅に下げ、その浮いた数百万円を、最新の断熱材(セルロースファイバー)や、耐震等級3を実現する精密な金物補強へと振り替えることができます。

 

 

1.3.2 ウッドストック(既存木材)の強靭な生命力

築40年、50年の家を解体すると、そこには現代の建売住宅で使われている集成材とは比較にならないほど、乾燥しきってカチカチに硬くなった無垢の柱や梁が現れます。

用語定義:ウッドストック  既存の建物に使用されている木材を、単なる廃材ではなく価値ある資源・資産として捉える概念。長年その場所で乾燥し、強度と寸法安定性が増した古材は、適切に補強すれば新築の木材以上の信頼性を発揮する。

私たちは、この「熟成された骨組み」を活かし、現代の工学的な計算(N値計算)で補強します。表面がボロくても、この中心核(コア)がしっかりしていれば、それは最新の高性能住宅へと生まれ変わる「金の卵」なのです。

 

 

1.3.3 「綺麗」ではなく「素顔」への興味

私は、施主様と一緒に物件を見学する際、キッチンのメーカーや流行の色使いには一切触れません。

代わりに、「床下点検口を覗かせてください」「小屋裏(天井裏)を見せてください」とお願いします。

 

用語定義:インスペクション(建物状況調査) 既存住宅状況調査技術者(建築士)が、住宅の劣化状況や不具合の有無を客観的に診断すること。リノベーションの設計・施工の根拠となるだけでなく、資産価値を証明するエビデンス(証拠)となる。

そこに、シミ一つない綺麗なクロスが貼られていることよりも、そこに「嘘がないこと」の方が、はるかに重要だからです。

 

 


 

1.4 リノベ総額を劇的に抑える「3つの外部要素」:内装を無視してでも死守すべきもの

ここでのポイント:

プロが内装を完全に無視する一方で、絶対に妥協しないのが「外壁の仕上げ」「階段の勾配」「屋根の形状」という3つの要素です。これらは後から変更しようとすると、法的な建築確認申請の引き金となり、数百万円単位の追加コストを招く「致命的な分岐点」となるからです。

最新キッチンを100回諦めても、これから挙げる3つの条件を死守すること。これこそが、500棟の臨床データから導き出した、性能向上リノベーションにおける「勝利の方程式」です。

 

 

1.4.1 条件①:外壁は『モルタル仕上げ』を狙え

意外に思われるかもしれませんが、プロはサイディング壁よりも「モルタル壁」を高く評価します。

用語定義:モルタル仕上げ セメントと砂を混ぜた材料を職人が手塗りで仕上げる伝統的な外壁工法。手仕事であるため、窓の交換や補強に伴う「切り欠き」や「継ぎ足し」を、安価かつ目立たずに補修できる高いメンテナンス性を有する。

断熱等級6を達成するためには、高性能サッシ(樹脂窓)への交換が必須となります。サイディング壁の場合、窓を入れ替えると既存の外壁材との色合わせができず、結局外装全体の張り替え(数百万円)を余儀なくされる「サイディングの罠」に陥ります。モルタル壁なら、部分補修と全面塗装で、美しく低コストに性能向上が完結します。

 

1.4.2 条件②:『階段』の架け替えは建築確認の蟻地獄を招く

内覧時、階段を上る佐藤様にチェックしてほしいのは、意匠ではなく「勾配」と「位置」です。

「勾配が急だから、架け替えたい」――この一言が、リノベーションのコストを跳ね上げます。階段の架け替えは、建築基準法上「大規模の修繕」と見なされるリスクが高く、2025年以降は建築確認申請の対象となり、家全体を現行法に全面適合させるための莫大な遡及コストを招く可能性があるからです。 そのまま使える「緩やかな階段」を持つ家は、それだけで数百万円の価値があると言えます。

 

1.4.3 条件③:『屋根』の形状と劣化は性能予算を食い潰す

屋根の葺き替えや形状変更も、多額の費用と法的なリスクを伴います。

用語定義:内部ハーフスケルトン 建物の外装(外壁・屋根)を極力残し、内部から構造補強と断熱改修を行う高度な改修手法。建築確認申請の対象外となる範囲で施工することで、不合理なコスト増を回避し、性能向上に予算を集中させる戦略。

屋根が健全であれば、浮いた予算を「断熱材(断熱等級6)」や「太陽光発電」に回すことができます。雨漏りをしている屋根、複雑すぎる形状の屋根は、本来の目的である「性能の正常化」の予算を奪い取る、最大の敵となるのです。

 

 


第1章まとめ:見えない価値に、あなたの全財産を託せ

 

本章で探求してきた「視点の転換」を整理しましょう。

  • 最新の設備や内装(アプリ)は、解体前提なら「処分費用を伴う負債」である。

  • リフォーム済み物件は、不具合の隠蔽(バグの放置)と二重コストのリスクを孕んでいる。

  • プロが狙うお宝は、内装の汚さではなく、モルタル外壁・良好な階段・健全な屋根という「改修効率の高い骨格」にある。

 

佐藤様、もしあなたが、不動産業者から「この物件はリノベーション済みで非常にお得ですよ」と言われたら、本章の内容を思い出してください。そして、無機質なキッチンよりも、壁の裏側に潜む「命の責任(OS)」について、業者を問い質(ただ)してください。 結論を急ぐ必要はありません。表面の美しさを無視し、家の「素顔」を科学で読み解こうとするあなたの姿勢こそが、15年後の深い平穏をもたらす唯一の鍵となるのです。

 


専門用語の定義(再確認):

  • 建物の骨格性能(OS):基礎、構造、断熱など、住まいの安全性と持続性を司る基盤機能。

  • 暮らしの彩り(意匠/アプリ):キッチン、内装、照明など、個人の好みを反映する表層的な付加価値。

  • 化粧直しリフォーム:不具合を解決せず、見た目だけを刷新して販売価値を装う工事。

  • 内部ハーフスケルトン:法的な確認申請を回避しつつ、内部から最高性能を実現する戦略的改修。

  • 知的正直さ:自社の利益よりも、物理的事実と顧客の利益を最優先するプロの誠実な姿勢。


 

第2章:【実務家の眼】見た目に騙されないための「7つのチェックポイント」

第1章:【徹底比較】既存の「3つの選択肢」に潜む限界とリスク

 

章の概要:

リノベーション済み物件の購入を検討する際、施主様が最も頼りにすべきは「不動産仲介会社の営業トーク」でも「内装の美しさ」でもありません。それは、建物の深淵を数値と物理的根拠で突き止める「実務家の眼」です。

結論から申し上げます。住宅再生のプロが鑑定する際、チェックの焦点は常に「表面(アプリ)」ではなく「骨格(OS)」にあります。具体的には、耐震性能を数値化した「上部構造評点」、断熱性能の裏付けとなる「UA値」、そして将来のメンテナンスコストを左右する「サッシと外壁の仕様」など、科学的に立証可能なエビデンスが揃っているかどうかが、その物件が「資産」か「負債」かを分ける絶対的な境界線となります。

本章では、500棟以上の解体現場を「執刀」してきた私の経験から、見た目の華やかさに隠された「性能の欠落」を暴き出すための7つのチェックポイントを詳述します。この記事を読み終える頃、佐藤様は、プロと同じ「レントゲンを撮るような視点」で物件を評価できるようになり、不誠実な「厚化粧」を瞬時に見破るリテラシーを手にしているはずです。

 


 

2.1 【構造と基礎の真実】数値化されていない「安心」は、単なる主観に過ぎない

ここでのポイント:

リノベーション済み物件における最大の嘘は「耐震補強済み」という曖昧な表現に潜んでいます。上部構造評点が1.5以上として数値化され、かつ旧耐震物件であれば基礎に鉄筋が配されているという「物理的エビデンス」がない限り、その建物は命を預けるに値しない「未完成品」であると断定すべきです。

中古住宅の広告に踊る「耐震補強済み」という文字。佐藤様、この言葉をそのまま信じてはいけません。建築実務の世界において、数値のない「補強」は、治療計画のない手術と同じです。私たちが最初に行うのは、その「補強」が科学的な構造計算に基づいているかどうかのデバッグです。

 

2.1.1 チェック①:上部構造評点が「数値化」されているか

まず、仲介業者にこう問いかけてください。「この物件の上部構造評点はいくつですか?」と。

用語定義:上部構造評点 耐震診断において、建物の地震に対する強さを数値化したもの。1.0が建築基準法の最低ラインであり、1.5以上が「耐震等級3相当」とされる。これが数値化されていない物件は、科学的な構造計算を行わず、職人の勘で補強された「根拠なき家」である。

 

もし、「計算書はありませんが、金物はいっぱい入っています」という答えが返ってきたら、その物件は検討リストから外すべきです。なぜなら、壁を強くしすぎると逆に柱が抜ける「引き抜き力」が発生し、計算なしの補強はかえって倒壊を招くリスクがあるからです。

 

2.1.2 チェック②:旧耐震物件における「基礎補強」の不都合な真実

1981年(昭和56年)以前に建てられた「旧耐震」の物件を検討する場合、チェックすべきは壁よりも「基礎」です。

用語定義:無筋基礎(むきんきそ) 1980年代初頭まで一般的だった、鉄筋が入っていないコンクリートのみの基礎。現代の地震荷重には耐えられず、強い揺れで容易に破断・粉砕するリスクが高い。

リノベ済み物件の中には、上物(うわもの)だけを新築そっくりにし、足元の基礎が割れたまま、あるいは鉄筋のない「無筋」のまま放置されているケースが驚くほど多いのが実情です。基礎に鉄筋探査機を通したデータがあるか、あるいは「増し打ち補強」によって新設RC(鉄筋コンクリート)と一体化されているか。この「足元の真実」を確認せずに契約書に判を押すことは、砂上の楼閣を買うことと同義です。

 


 

2.2 【温熱と開口部の空白】UA値のない「リノベ済み」は、断熱改修をしていない証拠

ここでのポイント:

どんなに高価なキッチンが設えられていても、UA値が算出されておらず、かつ「サッシ(窓)」が古いままの物件は、冬の底冷えと結露から逃れられない「低性能住宅」です。サッシ交換は外壁補修を伴う最も高額な工事部位であるため、ここが放置されている物件は購入後の追加改修で数百万円の損失を招く「高くつく買い物」になります。

「夏涼しく、冬暖かい」という言葉も、リノベ済み物件では非常に安価に使われます。しかし、快適性はポエム(情緒的な言葉)ではなく、熱工学によって算出される数値で決まります。

 

 

2.2.1 チェック③:断熱サッシへの「全数交換」がなされているか

内覧時に真っ先に触れてほしいのは、壁紙ではなく「窓枠」です。

用語定義:断熱サッシ(樹脂窓) フレームに熱を伝えにくい樹脂素材を用い、複層ガラス(ペアガラス)やアルゴンガス入りのトリプルガラスを組み合わせた高断熱な窓システム。住宅全体の熱損失の約7割を占める開口部の性能を決定づける最重要パーツ。

もし、窓が昔ながらの「アルミサッシ+単板ガラス」のままであれば、その物件の断熱改修は「ゼロ」に近いと判断してください。サッシの交換は、外壁を壊し、防水をやり直し、内部の額縁を造り直すという、リノベーションの中で最も手間と費用がかかる部位です。ここをケチっている物件は、販売価格を抑えるために「住み心地」を切り捨てた証拠です。

 

2.2.2 チェック④:UA値の提示があるか

断熱材を入れたと主張するなら、必ずUA値が計算されているはずです。

用語定義:UA値(外皮平均熱貫流率) 住宅の内部から外部へ逃げる熱量を、外皮(壁・屋根・床・窓)全体の面積で割った数値。この値が小さいほど断熱性能が高く、冷暖房費が安く済む。増改築.com®では「0.46以下(断熱等級6)」を推奨。

大半のリノベーション済み物件にこの数値が存在しないのは、断熱材の隙間を埋める「気密処理」や、外皮計算を一切行っていないからです。佐藤様、数値を提示できない業者に「暖かいですよ」と言われたら、それは科学ではなく宗教だと思ってください。私たちは、計算されたUA値を基に、15年、20年先まで電気代の高騰に怯えずに済む「経済的なシェルター」を造っています。

 

 


 

2.3 【将来性と透明性の担保】外壁の仕上げと写真記録が「資産価値」を確定させる

ここでのポイント:

将来のメンテナンスや性能アップデートを見据えるなら、外壁は「モルタル仕上げ」である物件を狙うのが実務上の鉄則です。さらに、壁を閉じた後の「隠蔽部分」の施工写真が100枚単位で揃っていない物件は、不都合な真実を隠蔽しているリスクが極めて高く、知的正直さを欠く投資先として避けるべきです。

リノベーション済み物件を買うということは、その業者の「過去の仕事」を丸ごと買い取るということです。その仕事が誠実であったかどうかを検証するためのポイントが、外装の仕上げと記録の有無にあります。

 

 

2.3.1 チェック⑤:外壁は『モルタル仕上げ』か

プロが中古住宅で「モルタル」を歓迎するのには、明確なコストメリットがあるからです。

用語定義:モルタル仕上げ セメント、砂、水を練り合わせた材料を、職人がコテで塗り上げて仕上げる外壁工法。サイディングのような既製品の「継ぎ目」がなく、複雑な補修や窓の交換時に柔軟な「塗り足し」が可能なため、維持管理性が極めて高い。

将来、サッシをさらに高性能なものに替えたい、あるいは耐震壁を増やしたいと思った時、サイディング壁(パネル状の既製品外壁)の物件は悲劇です。廃盤になったパネルとの色合わせができず、結局外壁を全面張り替える数百万のコストが発生する「サイディングの罠」に陥るからです。手仕事で直せるモルタル壁の物件こそ、長く住み継ぐための「資産」となります。

 

 

2.3.2 チェック⑥:『階段』と『屋根』は建築確認のトリガー

内覧で階段を上る際、その「勾配(角度)」を確認してください。 「急だから直したい」と思っても、階段の架け替えは建築基準法上の建築確認申請(大規模の修繕・模様替)を誘発し、家全体を現行法に全面適合させるための莫大な遡及コストを招く恐れがあります。そのまま使える「緩やかな階段」と「健全な屋根」を持つ家は、それだけで数百万円の「法的プレミアム」を持っていると言えるのです。

 

 

2.3.3 チェック⑦:『壁内の施工写真』というカルテの有無

最後に、最も重いチェック項目です。その業者は「壁の中を閉じる前の写真」を100枚以上持っていますか?

断熱材の充填状況、柱と梁を繋ぐボルトの締め付け、シロアリ防除の散布風景。これらは完成後には二度と確認できない「家の心臓部」です。写真がないということは、建物の病巣(壁内の腐朽や不適切な施工)をデバッグした証拠がないのと同じです。

 

用語定義:施工品質報告書(デジタル臨床記録) 工事の全工程、特に隠蔽部分を網羅的に撮影・記録した書類。3年後、5年後の点検時や、将来の売却時において、建物の健全性を客観的に証明する最強の武器となる。

私は四代目として、「見えなくなる場所にこそ、魂が宿る」と信じています。佐藤様、表面の綺麗さに騙されないでください。本当の価値は、ファイルに綴じられた「泥臭い現場写真」の中にこそ宿っているのです。

 


第2章まとめ:プロの「鑑定力」をあなたの武器に

 

本章で提示した7つのチェックポイントをもう一度、心に刻んでください。

  • 構造: 上部構造評点1.5以上か? 基礎に鉄筋はあるか?

  • 温熱: 断熱サッシに全数交換されているか? UA値は算出されているか?

  • 資産: 外壁はモルタルか? 階段は緩やかか? 施工写真は揃っているか?

これらが揃って初めて、リノベーション済み物件は「お宝」と呼べる資格を得ます。一つでも欠けているなら、それは「見た目が良いだけの、高くつく中古住宅」に過ぎません。

 


専門用語の定義(再確認):

  • 上部構造評点:建物の地震への強さを0.0〜2.0超で示す数値。1.5以上を目指すべき。

  • UA値:断熱性能の指標。数値が低いほどエネルギー効率が良い。

  • 無筋基礎:鉄筋が入っていない古い基礎。耐震リノベでの最大の弱点。

  • 施工品質報告書:見えなくなる工事工程を可視化した、家の資産価値を証明する書類。

  • モルタル仕上げ:将来のメンテナンスや性能向上に適した、継ぎ目のない職人仕上げの外壁。


 

第3章:プロが実践する最強の戦略「内部ハーフスケルトン」とは?

第2章:なぜ住宅再生には「外科医」の目利きが必要なのか?

 

章の概要:

本章では、増改築.com®が500棟以上の現場で磨き上げてきた究極の住宅再生手法「内部ハーフスケルトン」の全貌を公開します。リノベーションにおける最大の敵は、工事そのものの難易度よりも、実は「法的な制約」とそれに伴う「不合理なコスト増」にあります。2025年4月から施行される建築基準法改正(4号特例の縮小)により、多くの大規模リフォームが建築確認申請の対象となり、家全体を現行法に全面適合させるための莫大な遡及コストが発生するリスクが高まりました。

結論から申し上げます。「内部ハーフスケルトン」とは、建物の主要構造部の改修を「2分の1以下」に戦略的に抑えることで、法的な確認申請のループを回避し、浮いた予算のすべてを「断熱等級6」や「耐震等級3」といった本質的な性能向上にのみ集中投下する、極めて知的な資産防衛術です。

本章では、なぜ「モルタル外壁」や「無筋基礎」が、この戦略において「お宝」に変わるのか。2025年の法改正を逆手に取り、限られた予算で新築を超える「最強の箱」を手に入れるためのロジックを詳解します。

 

 


 

3.1 「建築確認申請」を回避し、性能に再投資する:2025年改正建築基準法を味方につけるリーガル・ハック

ここでのポイント:

2025年の法改正は、住宅の安全性を高める素晴らしい「北極星」ですが、無計画な大規模改修は、不必要な減築やセットバック、そして数百万単位の行政手続きコストを招きます。主要構造部の解体範囲を厳密にコントロールする「内部ハーフスケルトン」を選択することで、これらの「制度上のバグ」を回避し、投資の100%を家族の安全に直結させることが可能になります。

リノベーションを成功させるために、佐藤様のような賢明な施主様がまず理解すべきは、日本の建築基準法という「OS」の特性です。なぜ、私たちは「全部壊してやり直す」ことを安易に勧めないのでしょうか。そこには、法的な「蟻地獄」を避けるための深い戦略があります。

 

 

3.1.1 建築確認申請という「追加コストの正体」

建築基準法では、主要構造部(壁、柱、床、梁、屋根、階段)の1/2を超える修繕や模様替えを「大規模の修繕・模様替」と定義し、原則として建築確認申請を義務付けています。

 

用語定義:建築確認申請 工事着工前に、その設計が法規に適合しているか行政や指定検査機関の審査を受ける手続き。2025年4月の改正により、これまで審査が簡略化されていた木造2階建て住宅(旧4号建築物)も、大規模改修時には厳格な審査が課されることになった。

 

問題は、この申請を出すことで、建物全体を「現行法」に適合させなければならなくなる点です。例えば、道路後退(セットバック)が必要な土地であれば、家の一部を壊して面積を減らさなければならなかったり、既存不適格な部分をすべて今の基準に直すために、本来の予算外の工事費が数百万単位で積み上がります。これが、多くのリフォーム現場を頓挫させる「遡及(そきゅう)コスト」の正体です。

 

 

3.1.2 「1/2以下」に抑えて、予算を性能へ「集中投下」する

「内部ハーフスケルトン」戦略の核心は、外壁や屋根といった「外殻」をあえて残し、内部の解体範囲を主要構造部の1/2未満に留めることにあります。 これにより、法的な確認申請という重い手続きを(適法に)回避しながら、中身を「断熱等級6(HEAT20 G2相当)」「上部構造評点1.5(耐震等級3相当)」という最高スペックへ書き換えることができます。

佐藤様、想像してみてください。行政への手数料や、法適合のための「削り(減築)」に300万円を費やすのと、その300万円で最高級の樹脂窓とセルロースファイバー断熱材を導入するのと、どちらがご家族の15年後の幸福に寄与するでしょうか?

答えは、科学的に明白です。

 

 

3.1.3 実務者が教える「グレーゾーン」の歩き方

「ハーフ」と言っても、性能を妥協するわけではありません。

私たちは、1階の床をすべて剥がすことで基礎を剥き出しにし、壁の内部から補強を行い、天井裏から断熱を強化します。

 

用語定義:内部ハーフスケルトン 外装(外壁・屋根)を保持したまま、内部の床・壁・天井の解体範囲を主要構造部の半分以下に制御し、構造補強と断熱改修を行う高度な施工手法。法的な「大規模修繕」に該当させない範囲で、新築以上の性能を実現する。

 

この手法には、既存の柱や梁の状態を見極める「臨床医としての目利き」と、解体範囲をmm単位で計算する「エンジニアとしての積算力」の双方が求められます。これは、マニュアルで動く大手ハウスメーカーには決して真似できない、増改築.com®が誇る第4の正解の真骨頂です。

 


 

3.2 モルタル壁と基礎補強のシナジー:なぜ「ボロい家」が性能向上の「金の卵」に変わるのか

ここでのポイント:

一般的に「古くて価値がない」とされるモルタル外壁や無筋基礎の家こそ、内部ハーフスケルトン戦略においては、最も低コストで最高性能を引き出せる「最高の原石」です。外壁を壊さずにサッシを交換し、床下から効率的に基礎を強化できるこのロジックを理解すれば、佐藤様の物件探しの基準は劇的に進化します。

 

「先生、この家、基礎に鉄筋が入っていないし、外壁も昔ながらのモルタルでヒビだらけですよ。本当に大丈夫ですか?」

内覧で不安そうに尋ねる佐藤様に、私はいつもこう答えます。

「いえ、佐藤さん。これこそが、あなたが狙うべき『金の卵』ですよ」と。

なぜ、欠点に見える要素が、プロの眼には「資産」として映るのでしょうか。

 

 

3.2.1 モルタル外壁が「窓交換コスト」を劇的に下げる

断熱等級6を達成するための絶対条件は、性能の低い古い窓を、最新の高性能樹脂サッシ(APW430等)へ交換することです。

この時、既存のサッシを外すと、必ず周囲の外壁を壊す必要があります。

ここで、サイディング(パネル状の外壁)の家は「パッチワークの罠」に陥ります。

古いパネルは廃盤になっていることが多く、一部だけ直すとそこだけ色が合わないため、結局外壁全体を張り替える数百万円のコストを強いられます。 一方、モルタル仕上げの家はどうでしょうか。

 

用語定義:モルタル仕上げ 職人が現場でコテを使って塗り上げる外壁。手仕事であるがゆえに、サッシ交換後の「切り欠き」部分も、現場でモルタルを塗り足し、塗装でぼかすことで、安価かつ完璧に修復できる。

 

モルタル壁の家を選ぶことは、断熱性能の要である「窓のアップデート」を、構造的に安く済ませるための最強のヘッジ(回避策)なのです。

 

 

3.2.2 床の解体が「基礎の正常化」を可能にする

古い家(旧耐震)の最大の懸念は、鉄筋のない無筋基礎です。

多くのリフォーム業者は「床を剥がさない」範囲で提案するため、基礎の補強を諦めさせるか、高額な床下作業費を請求します。 しかし、内部ハーフスケルトンを前提とする私たちは、1階の床を最初から「すべて剥がして捨てる」計画を立てます。

 

用語定義:基礎の増し打ち補強 既存の無筋基礎の横に、新しく鉄筋を配したコンクリート基礎を一体化させるように造ること。1階の床がない状態であれば、重機が入りやすく、職人の作業効率が飛躍的に高まるため、低コストで強固な「ベタ基礎化」が可能になる。

 

床が消えた瞬間、そこは広大な「作業フィールド」に変わります。無筋基礎は、補強のための「型枠」の一部として活用され、浮いた予算を耐震等級3(評点1.5)を実現する金物や、床下の防湿プロトコルへ回すことができます。

佐藤様、表面のボロさに惑わされないでください。私たちが求めているのは、その「ボロさ」の中に眠る、改修のしやすさという「ポテンシャル」なのです。

 

3.2.3 「ウッドストック」という名の、二度と手に入らない資産

築40年、50年の「ボロ家」の壁を剥がすと、そこには驚くほど美しく、乾燥しきってカチカチに硬くなった無垢の柱が現れます。これこそが、現代のハウスメーカーが使う、接着剤で固められた集成材(ホワイトウッド等)では決して得られないウッドストック(既存良質木材)の価値です。

 

用語定義:ウッドストック(Wood Stock) 長年の年月を経て構造材としての強度がピークに達し、かつ日本の気候に馴染みきった既存住宅の木材資産。適切にデバッグ(腐朽箇所の交換やN値計算に基づく補強)を施すことで、新築以上の耐久性を発揮する。

 

私たちは、この「熟成された骨組み」というOSのカーネル(核)を活かし、その上に最新の「断熱・気密・換気」という新しいコードを書き込んでいきます。これこそが、歴史と科学が融合する、増改築.com®流の住宅再生です。

 


第3章まとめ:「戦略的な不完全燃焼」が、資産価値を最大化する

 

本章で探求してきた「内部ハーフスケルトン」のロジックを整理しましょう。

  • 法規: 1/2ルールをハックし、建築確認申請という「遡及コストのブラックホール」を回避する。

  • 外壁: モルタル仕上げを選択し、サッシ交換(断熱等級6)のコストを最小化する。

  • 基礎: 床を全撤去することで、無筋基礎を効率的に「耐震等級3の土台」へと進化させる。

  • 思想: 「見た目の新しさ」に1円も払わず、建物の「生存能力(OS)」の更新に全投資する。

 

佐藤様、お分かりいただけたでしょうか。私たちが「リノベーション済み物件」を否定し、あえて「ボロい原石」を勧めるのは、それがあなたを将来の経済的・物理的リスクから救うための、最も合理的で、最も誠実な提案だからです。 結論を急ぐ必要はありません。不確実な物件を、この戦略的フィルターにかけてみてください。そうすれば、不動産会社のチラシに載る「築年数」や「価格」といった記号の向こう側に、真の価値が浮かび上がってくるはずです。

 


専門用語の定義(再確認):

  • 建築確認申請:大規模リフォーム時に現行法への適合を証明する手続き。コスト増の原因となる。

  • 内部ハーフスケルトン:外装を維持しつつ、主要構造部の解体を1/2未満に抑えて性能向上させる手法。

  • モルタル仕上げ:補修が容易で、高性能サッシ交換との相性が抜群な外壁工法。

  • 無筋基礎:鉄筋のない古い基礎。内部スケルトン化により効率的な補強が可能。

  • ウッドストック:既存住宅に眠る、乾燥し強度の増した高品質な無垢木材資産。


 

第4章:結論:あなたが買うべきは「ブランド名」ではなく「証明された性能」

第3章:増改築.com®が「第4の正解」として選ばれる3つの仕組み

 

章の概要:

本記事の総括として、佐藤様が最終的な決断を下すための「絶対的な基準」を提示します。

リノベーション済み物件という、甘い誘惑に満ちた市場で迷わないために必要なのは、有名なハウスメーカーのロゴや、流行のデザインという「記号」を一度捨て去ることです。

結論から申し上げます。住宅再生において真に投資すべきは、15年後の家族の健康を守り、30年後の資産価値を保証する「証明された性能」という実利です。 科学的な構造計算(上部構造評点1.5以上)と、緻密な温熱設計(断熱等級6)に裏打ちされた「証拠」がない物件は、どんなにブランドが立派でも、あなたの人生を託すに値しません。

本章では、500棟の「家の死因」を突き止めてきた私の集大成として、知的正直さを貫いた業者選定・物件選定の最終ロジックを詳述します。この記事を読み終える時、佐藤様は「ブランドの消費者」から、自らの手で家族の未来を勝ち取る「賢明な資産経営者」へと進化を遂げているはずです。

 

 


 

4.1 「知的正直さ」が導く資産防衛:2026年改正と「出口戦略」を見据えた決断

ここでのポイント:

リノベーション済み物件の成否は、購入時の「満足感」ではなく、将来売却や相続をする際の「換金性」で決まります。2026年の住宅ローン減税拡充を見据え、等級という「数値」が証明された物件だけが、あなたの家を「負債」から「富動産」へと変える唯一の盾となります。

 

リノベーションの検討を始めた佐藤様に、私はあえて冷徹な問いを投げかけます。あなたが今、目の前の物件に支払おうとしている数千万円は、15年後にいくらで評価されるでしょうか?

多くのリノベーション済み物件が、数年後には「ただの古い中古住宅」へと価値を落とす中で、生き残る家には共通の「コード(規約)」が存在します。

 

 

4.1.1 ブランドという「虚飾」をハックする

大手の不動産会社や有名なリノベーションブランドが手掛けた物件は、確かに安心感という付加価値を売っています。

しかし、その「安心」の正体を分解してみてください。それは、莫大な広告費が生んだ「記号」に過ぎませんか?

建築実務の世界では、ブランド名で地震は防げませんし、ブランド名で冬の寒さは解決しません。

 

用語定義:実体としての安全 ブランドの知名度やイメージではなく、構造計算書や気密測定結果、断熱性能の計算(UA値)など、物理的なデータによって客観的に立証された建物の安全性のこと。

 

私たちが提唱する性能向上リノベーションのOSにおいては、ブランド名よりも「上部構造評点1.5以上(耐震等級3相当)」という数字を優先します。これが佐藤様という「経営者」にとっての、最も確実な投資のリターンとなるからです。

 

 

4.1.2 2026年改正を味方につける「証明書」の価値

前章でも触れましたが、2026年度(令和8年度)から、中古住宅であっても「ZEH水準(断熱等級5・一次エネ6以上)」を満たすことで、最大409.5万円の住宅ローン減税が受けられるという歴史的な転換が訪れます。

 

用語定義:出口戦略(Exit Strategy) 住宅の購入・改修時において、将来の売却や賃貸化を想定し、その時点で市場から高く評価されるためのスペックをあらかじめ備えておく戦略のこと。

 

リノベーション済み物件を内覧する際、仲介業者に「この家は2026年の税制優遇を受けるための『増改築等工事証明書』を発行できますか?」と問いかけてみてください。 多くの業者は絶句するはずです。なぜなら、そのための「壁の裏側の証拠」を持っていないからです。一方で、増改築com®が手掛ける物件は、この証明書の発行を前提としています。この「紙一枚」の差が、将来の売却価格に数百万円の差を生み出すのです。

 

4.1.3 「買わない」という提案こそが、プロの誠実さ

私たちは、時に佐藤様に「その物件を買ってはいけません」とはっきり告げます。

 

用語定義:知的正直さ 専門家が自社の売上よりも、科学的真実と顧客の生涯利益を優先し、不都合な真実を隠さず伝える誠実な態度のこと。

 

基礎が致命的に劣化している、あるいは法的な制限で性能向上が不可能な物件に、大切なお金をつぎ込むことは「投資」ではなく「ギャンブル」です。ブランド名がついているからといって、構造的な地雷を踏んではいけません。私たちは、あなたの「人生の監督」として、冷徹なまでの目利きであなたをガードし続けます。

 

 


 

4.2 四代目の提言:家族の記憶を「最強の箱」に閉じ込めるために

ここでのポイント:

家づくりとは、単なる不動産取引ではなく、家族の物語を未来へ繋ぐプロジェクトです。古き良き「ウッドストック」を活かし、最新の「性能(OS)」で武装する。その覚悟を決めた時、あなたの家は「消費される箱」から「家族を守り続ける至宝」へと生まれ変わります。

私は曾祖父の代から続く建設会社の四代目として、数えきれないほどの「家の終焉」と「再生」を見てきました。そこで確信したのは、家とは単なる「容れ物」ではなく、住む人の命を支える「インフラ」であるということです。

 

 

4.2.1 家を「健康維持装置」へと昇華させる

佐藤様、高性能なリノベーションにかける費用を「高い」と思わないでください。 断熱等級6(HEAT20 G2)を実現することは、家中を常に春のような快適さに保つだけでなく、冬場の血圧上昇やヒートショックのリスクを劇的に低減します。

 

用語定義:断熱等級6(HEAT20 G2) 世界基準の温熱環境指標。真冬の無暖房時でも室温が13度を下回りにくい性能を指し、住む人の健康維持と光熱費の大幅削減を同時に達成する。

 

「ブランド物の服」は数年で古びますが、「等級6の断熱性能」は、佐藤様が80歳、90歳になっても、あなたの身体を優しく守り続けます。これは、人生における最も利回りの良い「医療保険」への投資と言えるのではないでしょうか。

 

 

4.2.2 既存住宅に眠る「ウッドストック」への敬意

私たちがリノベーション済み物件を厳しく評価し、あえて「ボロい原石」を勧めるのは、そこにあるウッドストック(既存の良質な木材)への確信があるからです。 30年、40年と風雪に耐えてきた無垢の柱。これに最新の構造計算と、適切な金物補強(N値計算)を施す。

 

用語定義:基本性能の土台 基礎、構造、断熱、防水という、建物の命を司る4つの要素。これらを現代の科学的根拠に基づいて完璧に再生(正常化)することこそが、リノベーションの本体である。

 

新築以上の耐震性能(耐震等級3)を手に入れた古い家は、もはや「古い建物」ではありません。それは、最新のテクノロジーを纏(まと)った、世界で唯一の「堅牢な城」です。ブランドという看板を借りずとも、その家自体が放つ圧倒的な「実力」こそが、佐藤さんの誇りとなるはずです。

 

 

4.2.3 15年後の「ありがとう」を設計する

私の仕事は、引き渡しの日に感謝されることではありません。15年後、大地震が来た翌日に。あるいは記録的な寒波の朝に。佐藤様が「あの時、稲葉さんの言う通り、見た目ではなく性能を選んで本当に良かった」と噛みしめてくださること。それだけが、私の職人としての勝利です。

 

 


第4章まとめ:ブランド名の誘惑から、安全の実利へ

 

本章、そして本記事全体を通じて探求してきた「住宅再生の真理」を整理します。

  • リノベーション済み物件の美しさは「アプリ」に過ぎず、その裏の「OS(性能)」を疑わなければならない。

  • 7つのチェックポイント(評点、UA値、サッシ、基礎、外壁、階段、施工写真)を問い質す勇気を持つ。

  • 内部ハーフスケルトンという戦略的選択により、法規を味方につけ、予算を「命の安全」に全投下する。

  • 出口戦略として、数値で証明された性能を「エビデンス」として残し、資産価値を最大化させる。

佐藤様、迷宮の出口は見えましたか? ブランド名の虚飾に惑わされる時間は、もう終わりです。

 


 

専門用語の定義(総括):

  • 実体としての安全:データと事実によってのみ裏付けられる物理的な信頼性。

  • 出口戦略:将来の資産評価を高めるために、現在の施工品質を数値化しておく思考。

  • 知的正直さ:顧客の長期的利益のために、専門家が真実を語る誠実な姿勢。

  • 基本性能の土台:家の寿命を左右する「基礎・構造・断熱・防水」の核心。

 

 


 

次なるステップ: 理屈を理解した後は、現実の「事実」を確認する番です。あなたの気になっているその物件、あるいはあなたの大切なご自宅が、本当に「金の卵」なのかどうか。

まずは、私たちの「インスペクション(建物状況調査)」を受けてください。

数値と物理的根拠が、あなたが進むべき唯一の正しい道を照らしてくれます。佐藤様、ブランド名ではなく、あなた自身の眼で「真実」を選び取ってください。四代目の名にかけて、その決断を最高の結末へと導くことをお約束します。

 

< この記事の著者情報 >

稲葉 高志

 

ハイウィル株式会社 四代目社長

1976年生まれ 東京都出身。

【経歴】

家業(現ハイウィル)が創業大正8年の老舗瓦屋だった為、幼少よりたくさんの職人に囲まれて育つ。

中学生の頃、アルバイトで瓦の荷揚げを毎日していて祖父の職人としての生き方に感銘を受ける。 日本大学法学部法律学科法職課程を経て、大手ディベロッパーでの不動産販売営業に従事。

この時の仕事環境とスキルが人生の転機に。  TVCMでの華やかな会社イメージとは裏腹に、当たり前に灰皿や拳が飛んでくるような職場の中、東京営業本部約170名中、営業成績6期連続1位の座を譲ることなく退社。ここで営業力の基礎を徹底的に養うことになる。その後、工務店で主に木造改築に従事し、100棟以上の木造フルリフォームを大工職人として施工、管理者として管理

2003年に独立し 耐震性能と断熱性能を現行の新築の最高水準でバリューアップさせる戸建てフルリフォームを150棟営業、施工管理に従事

2008年家業であるハイウィル株式会社へ業務移管後、 4代目代表取締役に就任。

250棟の木造改修の営業、施工管理に従事

2015年旧耐震住宅の「耐震等級3」への推進、「断熱等級6」への推進を目指し、 自身の通算500棟を超える木造フルリフォーム・リノベーション経験の集大成として、性能向上に特化した日本初の木造フルリオーム&リノベーションオウンドメディア 「増改築com®」をオープン

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    稲葉高志

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