更新日:2026/03/15

木造リノベーションの“全”疑問に答える|匠が教える460の知恵:第2部:【耐震編】命を守る、“絶対”の知識(Q31-Q70)

旧耐震の家は基礎補強なしで耐震等級を上げられますか?

耐震診断はいくらかかりますか?どこに頼めばいいですか?
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結論:基礎補強なしでは「本物の耐震」は得られない

 

正直に申し上げます。

旧耐震(1981年以前)の家で、基礎補強なしに耐震等級3を取得することは、ほぼ不可能です。

なぜなら、旧耐震時代の基礎は「無筋コンクリート基礎」や「玉石基礎」が多く、現行基準の耐震性能を満たすための土台がそもそも存在しないからです。

壁を強くしても、基礎が弱ければ意味がありません。それは砂の上に城を建てるようなものです。

なぜ旧耐震の基礎は弱いのか

1981年以前の基礎の特徴

 

項目 旧耐震(〜1981年) 現行基準(2000年〜)
鉄筋 なし(無筋) 必須
基礎形状 布基礎・玉石基礎 ベタ基礎推奨
アンカーボルト なし or 不十分 必須・間隔規定あり
基礎と土台の緊結 弱い 強固

 

 

無筋コンクリート基礎の問題点

 

  1. 引張力に弱い: 鉄筋がないため、地震の横揺れで基礎にひびが入る
  2. 土台との緊結不足: アンカーボルトがないため、建物が基礎から「ずれる」
  3. 経年劣化: 40年以上経過し、コンクリート自体が中性化・劣化

私が500棟以上の解体で見てきた旧耐震の基礎は、約70%に何らかの問題がありました。

基礎補強なしでできること・できないこと

 

できること(限定的な耐震改善)

施工 効果 限界
筋交い追加 壁の強度UP 基礎が持たなければ意味なし
構造用合板追加 壁倍率UP 同上
金物補強 接合部強化 基礎との緊結が弱いまま
制震ダンパー 揺れ軽減 基礎の強度は変わらない

これらは「評点を0.7から1.0に上げる」程度の改善には有効ですが、

耐震等級3(評点1.5相当)には到達できません。

 

できないこと

  • 耐震等級3の取得: 構造計算で基礎が持たないと判定される
  • 長期優良住宅認定: 基礎の耐久性が要件を満たさない
  • 本当の安心: 大地震で基礎が割れれば、上部構造も崩壊

基礎補強の3つの方法

 

旧耐震の基礎を補強する方法は、主に3つあります。

 

方法1: 抱き基礎(増し打ち)

 

既存の基礎の内側または外側に、新しい鉄筋コンクリートを打ち増す方法。

メリット:

  • 確実性が高い(鉄筋コンクリートで補強)
  • 比較的低コスト(150〜250万円程度)
  • 工期が短い

デメリット:

  • 床下高さが低いと施工困難
  • 基礎幅が広がる

私の見解: 旧耐震の無筋基礎補強として、最もバランスが良い方法です。

 


方法2: 炭素繊維・アラミド繊維シート補強

 

既存基礎の表面に高強度の繊維シートを貼り付けて補強する方法。

法的位置づけ(重要):

国土交通省告示第314号で建築基準法上の指定建築材料として認定されています。

ただし、告示の想定は「柱巻き付け補強」が原則であり、基礎補強への適用は「準用」の範囲です。

 

施工形態 法的根拠
三面(コの字型)以上で巻ける 指針の準用で可能性あり
片面(室内側のみ)に貼付け 法的根拠なし(自主改修扱い)

 

実務上の扱い:

  • 日本建築防災協会の技術評価を取得した工法(例:「がんこおやじ」工法)は、各自治体の耐震改修補助の対象になるケースあり
  • 日本建築センター(BCJ)の技術審査証明を取得した個別工法も存在

メリット:

  • 基礎幅が変わらない
  • 床下が狭くても施工可能な場合がある

デメリット・注意点:

  • 布基礎は土中に埋まっている部分があり、完全に巻き付けることが困難
  • 無筋基礎の根本的な補強にはならない
  • アンカーボルト不足の問題は別途対応が必要

 

正直な見解:

炭素繊維シートによる基礎補強は「補助的な補強」として位置づけるべきです。片面のみの貼付けを「法的に認定された基礎補強」と説明するのは過大表現のリスクがあります。

採用する場合は、必ず技術評価を取得した工法を選び、お住まいの自治体で補助対象になっているか確認してください。

 


方法3: 基礎打ち直し(ジャッキアップ工法)

 

建物をジャッキで持ち上げ、基礎を全面的に新設する方法。

メリット:

  • 現行基準の基礎に生まれ変わる
  • 耐震等級3取得が確実に可能
  • アンカーボルト問題も完全解決

デメリット:

  • 最も高コスト(400〜600万円程度)
  • 工期が長い(1〜2ヶ月)

私の見解: 旧耐震で本気で耐震等級3を目指すなら、この方法が最も確実です。費用はかかりますが、「本物の基礎」が手に入ります。

500棟の経験から見た「基礎補強の真実」

真実1: 「基礎補強は高い」は誤解

 

基礎補強の費用は150〜600万円。しかし、これを「高い」と見るか「安い」と見るかは視点次第です。

  • 新築の基礎工事: 200〜300万円
  • 建て替え総額: 2,500〜3,500万円

基礎補強は、家全体を守る「保険」です。地震で家が倒壊したときの損失と比べれば、決して高くありません。

 

 

真実2: 基礎補強をしないリフォームは「化粧直し」

 

私が最も危惧するのは、「基礎補強なしで表面だけきれいにするリフォーム」です。

見た目は新築のようになります。しかし、大地震が来たら…。基礎が割れ、柱が傾き、家族の命が危険にさらされます。

本物のリフォームは、見えない部分から始まります。

 

 

真実3: 旧耐震でも「再生」できる

 

「もう古いから建て替えしかない」と諦める必要はありません。

基礎補強 + スケルトンリフォームで、旧耐震の家を現行基準以上の性能に再生できます。私たちは500棟以上でそれを証明してきました。

まとめ

 

旧耐震の家で基礎補強なしに耐震等級を上げることは、極めて限定的です。

 

基礎は家の「命」です。

  • 無筋コンクリート基礎は現行基準を満たさない
  • 壁だけ強くしても、基礎が弱ければ意味がない
  • 本気で耐震等級3を目指すなら、基礎補強は必須
方法 費用目安 確実性 おすすめ度
抱き基礎 150〜250万円 ★★★★☆
繊維シート 100〜200万円 △(条件付き) ★★☆☆☆
基礎打ち直し 400〜600万円 ◎◎ ★★★★★

費用はかかります。

しかし、家族の命を守るための投資として、基礎補強を前向きに検討してください。

 


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< この記事の著者情報 >

稲葉 高志

 

ハイウィル株式会社 四代目社長

1976年生まれ 東京都出身。

【経歴】

家業(現ハイウィル)が創業大正8年の老舗瓦屋だった為、幼少よりたくさんの職人に囲まれて育つ。

中学生の頃、アルバイトで瓦の荷揚げを毎日していて祖父の職人としての生き方に感銘を受ける。 日本大学法学部法律学科法職課程を経て、大手ディベロッパーでの不動産販売営業に従事。

この時の仕事環境とスキルが人生の転機に。  TVCMでの華やかな会社イメージとは裏腹に、当たり前に灰皿や拳が飛んでくるような職場の中、東京営業本部約170名中、営業成績6期連続1位の座を譲ることなく退社。ここで営業力の基礎を徹底的に養うことになる。その後、工務店で主に木造改築に従事し、100棟以上の木造フルリフォームを大工職人として施工、管理者として管理

2003年に独立し 耐震性能と断熱性能を現行の新築の最高水準でバリューアップさせる戸建てフルリフォームを150棟営業、施工管理に従事

2008年家業であるハイウィル株式会社へ業務移管後、 4代目代表取締役に就任。

250棟の木造改修の営業、施工管理に従事

2015年旧耐震住宅の「耐震等級3」への推進、「断熱等級6」への推進を目指し、 自身の通算500棟を超える木造フルリフォーム・リノベーション経験の集大成として、性能向上に特化した日本初の木造フルリオーム&リノベーションオウンドメディア 「増改築com®」をオープン

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