日々耐震診断等をさせて頂いていただき補強計画を作成している中で、窓というパーツが、どうしても耐震上ウィークポイントとなってしまうという悩み所が、構造の数値を出していて感じるところでありました。窓の開口が広ければ広い程、その壁面は弱点になるという理屈です。単純にお話するとこのようになるわけです。住宅の多くは、南面には大半の住宅は1間以上の掃き出し窓、もしくは腰窓が設計されております。
これらの住宅を診断し補強計画をすると、多くは窓を壊さずその他の壁を補強することで数字を上げていくことになります。そのため、建物にもよりますがかなり多くの壁を壊し、筋交いを入れたり、構造用合板を張る耐震補強工事が必要になります。
今回ご紹介する工法は、そんな開口部(窓)自体を耐力壁として計算ができる開口部補強のお話になります。
床・壁・天井を壊す普通の耐震補強と違い、窓まわりを「外側施工」で補強する「マド耐震」です!そして、なによりも施工がかんたんで「2日でできる耐震」になります。
この開口部である窓自体を耐力として耐震リフォームできてしまう「マド耐震」について、実際の施工写真を使って、順に解説していきますね。
なお、こちらの新商品を開発したのは、あの鋼製建具メーカーのYKK-ap社になります。
商品名「フレームプラスG2」今回こちらの商品がリリースされるにあたり、弊社ハイウィルが日本で最初の事例となりましたため、弊社の施工事例がメーカー内でも使用されております。
設置をしたのはこちらの建物にになります。
【Before写真】
さて、Beforeはこんな状態です。築●年の2階建てです。これを一棟まるごとリノベーションしました。
こちらの事例は外壁も全部、貼り替えています。
もともとはモルタル塗りの壁でしたが、今回のリフォームでは新しくサイディング貼りにしたところ、見違えるようにきれいになりました。
窓もすべて、交換しています。写真は道路に面した、南側ファサードです。窓のすぐ上についているのは、シャッターボックスです。窓を交換したついでに、シャッター付サッシをつけて、防犯対策を万全にしました。
道路沿いの1階は、やはり、防犯上、不安ですよね。外出中や夜間は、シャッターを下ろしておけば、泥棒はかんたんに侵入できません。一階部にシャッターを設置するのはリフォームでも大変多くなっています。
またシャッターは、雨戸の替わりにもなります。開け閉めは電動式であれば、室内から操作できるので、ラクチンです。面倒な雨戸の開け閉めが要らなくなるんです。そしてシャッターがあると、台風のときにも威力を発揮します。こちらのお施主様のシャッターを採用した一番の理由はこの台風対策でした。
強い風が吹くと、モノが飛んできて、窓を割ってしまったり、家を壊したりしますが、シャッターがあると、安心です。ということで、シャッターには、防犯・防災効果があるので、リフォームのアイテムとして、おススメです。
さて、現場の職人たちが見上げている、シャッターボックスの上の横溝に注目してください。外壁サイディングを切り欠いたようになっていますね。じつはこれ、今回こちらの建物に搭載する「マド耐震」のための下準備なんです。
そもそも「マド耐震」って何?
という問いがあるかと思いますが、「マド耐震」とは窓まわりを強化・補強する耐震工法です。
防災といえば...台風対策ももちろん大事ですが、何といっても災害のなかで最も怖いのは、「地震」ですよね。
東日本大震災のときは、東京もものすごく揺れました。家具が倒れたり、家にひびが入ったり、塀が崩れたり、などなど、自宅が被害に遭われた方も多かったのではないでしょうか。こちらの建物も玄関前のブロックが崩れ落ちそうになったそうです。
それから、去年は、熊本地震、鳥取地震...テレビや新聞で被災状況を観たことのないひとはいないでしょう。
熊本地震の写真を少し見てみましょう。
これは、1階がつぶれてしまった家。
この家も、1階がつぶれています。
1階がつぶれた家がいたるところに...
1階はつぶれてしまっているのに、2階は比較的、元のカタチを残していますね。何故でしょうか?
この家(上の写真)は、幸いにして倒壊を免れましたが、1階は大きくゆがんでいますね。
でも、2階は、一見、無傷のように見えます。
1階と2階で、何が違うのでしょうか?
被災していない普通の木造戸建の写真(下)を見ると、重要なことが分かります。
答え:「窓の大きさ・数」です。
1階は、窓が大きく、窓の数も多いのです。
「窓が大きい・多い」ということは、言い換えると、
「壁が小さい・少ない」ということです。
木造住宅の構造は、このようになっています。
図は、一般的な、在来工法(在来軸組構法)の基本的な構造です。
上の図には表れていませんが、地震や台風の力(横からの力)から建物を支え、倒れないようにしているのは、柱ではなく、「耐力壁」と言われる部分です。
この図の、黄色い部分が、「耐力壁」です。
「窓が多い」1階は、「耐力壁」がプラン上どうしても少なくなりがちです。だから、大地震が来ると、大きな被害を受けてしまいます。
では、地震で被害に遭わないようにするにはどうすればいいでしょう。それが「耐震」です。「地震に耐える」ということですね。
古い家も、耐震補強すれば、「安心・安全な住まい」になります。「耐震リフォーム」が必要なのはこのためなのです。
耐震リフォームで一般的な方法は、先ほど説明した「耐力壁」をつくることになります。筋かい、金物、構造用合板を使って、「耐力壁」をつくり、家を補強します。
「東京都耐震ポータルサイト」にも載っていますが、「窓をつぶして、耐力壁に替える」方法が耐震リフォームの一般的な方法です。
しかし、最大のデメリットは耐力壁を追加していくと、窓が減ってしまうということです。部屋が暗くなったり、風通しが悪くなったり、出入りしにくくなったりと… いろいろ不便が生じます。
耐震、つまり、安心・安全のために、快適性・利便性を犠牲にするのは、仕方がないのでしょうか。ここが今までの悩みの部分でもったわけです。
今までの耐震リフォームは、家の強度を高めるために、壁を多くつくる反面、窓を犠牲にしてきました。 (弊社のリノベーションでも、耐震補強をする場合は、そうでした。) が、あのYKK APが、画期的な商品を出してくれました。
それが耐震補強フレーム「フレームプラス G2」という商品です。
このYKKAPの耐震補強フレーム「フレームプラス G2」の最大の特長は、「いまある窓やドアはそのままに、耐震リフォームが可能である」という点です。
従来、鉄でのフレームやブレース工法は存在しましたが、重さと耐用年数の問題、費用が高いこと、工期がかかる点でなかなか踏み切ることができないケースが多かったのが実情としてありました。
今回リリースされた新商品はこれらのウィークポイントを払拭する商品になっていると思います。アルミサッシメーカーらしく、フレームの柱材・梁材には、アルミをふんだんに使っているようです。この「フレームプラス G2」を使って、「窓まわりを強化・補強する」わけです。
窓メーカーらしい発想で、工事をする側の我々にも有難いツールであると考えています。窓メーカーが考えた、「マド耐震」、そして、マド耐震に使うのが、「フレームプラス G2」です。こちらの商品ただつければ良いという商品ではなく、耐震診断が必須となります。
木造在来軸組工法の建物の耐震補強計画を壁基準耐力、剛性を算定式を用いて位置を決定します。
今回リリース後、日本初となるのが弊社の施工となったため、メーカーの「フレームプラス G2」研究に携わったスタッフやメーカー内の技術スタッフなどかなりの人数でこちらの設置を行いました。そのリノベーション現場の施工風景を見ていきましょう。
さて、先ほどの写真に写っていた外壁の切り欠き打分の横溝は、フレームプラス G2のアルミ梁を、建物の横架材(おうかざい)つまり、1階と2階のあいだにある大梁(おおばり)に取り付けるために準備したものです。
ディテールはこのようになります。外壁を切るといっても、サイディングより内側にある防水層は、もちろん、きちんと確保してあります。以下、じっさいの施工手順を紹介していきます。
道路からフレームプラス G2のパーツを運び込むルートを確保します。
作業用の足場をかけていきます。職人さんは3人で作業します。梱包された部材を、トラックから降ろします。
1点1点、確認します。
施工マニュアルを見て、作業手順を確認しながら、すべてのパーツの梱包を解いていきます。
足場に上がって、作業前の確認をしています。
アルミ梁材を、外壁の切欠き部に取り付けます。
それから、アルミ梁材の左右の端部に、別な部品を取り付けます。
よく見ると、「XX」のカタチをしています。これは、スチールでできた接合金具なんです。
少し離れてみると、フレームプラス G2が、窓を囲むように取り付けられている様子が分かりますね。
こんどは、アルミ柱材を取り付けていきます。窓の右側になります。先ほどの「XX」接合金具に、アルミ柱材をボルトで接合します。梁材と柱材がつながるわけです。
フレームの柱材は、壁にぴったりくっついている訳ではないんです。横から見ると、柱材と外壁の間に、隙間があるのが分かりますね。10cm以上、空いています。
ドリルをつかった作業です。どんな基礎でもつけられるわけではありません。予め布基礎にシュミットハンマーでの圧縮強度を計測して既定の数値であるかどうかの検査も行っています。
アルミ梁材の下から、建物のコンクリートの基礎に穴を空けます。かなりの深さの穴です。
じつはこれ、アルミ横材を、建物のコンクリート基礎にしっかりと定着させるための穴なんです。
6つの穴それぞれにアンカーボルト(図の赤い部分)を差し込み、スチール製の金具(図の黒い部分)を介して、アルミ梁材をコンクリート基礎に定着させます。アンカーボルトは、専用の接着剤でくっつけます。
穴に接着剤を充填します。エポキシ系接着剤です。定評あるヒルティ社製の「接着系注入方式アンカー」の接着剤です。
ヒルティ社というのは、1941年創業の国際企業で、地下鉄トンネルや、日本の新幹線の線路工事にも関わっているメーカーです。
穴の中の接着剤が乾くと、建物のコンクリート基礎とアルミ梁材が、アンカーボルトで、ガッチリと固定されます。
建物の基礎は、耐震上、とても重要な部分です。
その基礎とフレームプラス G2の下梁をガッチリ固定するのが、フレームプラス G2をつかった耐震リフォームの要(かなめ)になります。
さて、いよいよ最後の工程です。アルミ柱・アルミ梁の接合部、4箇所に、カバーを取り付けます。
出来上がりは、こんな感じです。「XX」接合金具が露出した状態でも、ちょっと不思議なデザインでいいかな、と思いますが、カバーをつけたデザインもそれなりにお洒落感がありますね。さて、施工時間ですが、トラックでパーツが運ばれてきてから、完成まで、組み立て・取り付けには6時間しか経っていません!アルミ梁の取り付け準備に、外壁をカットする工事は前日に行ったので、トータルで2日かかっていますが、それでも、「2日でできる耐震」は非常にお施主様にとってはよいですね。
耐震リフォームというと、ふつうは、床・壁・天井を解体して、耐震工事をして、復旧するという手間がかかるので、かなりの日数がかかる、のがいままでの難点でした。
も、このフレームプラス G2は、かんたん施工、省施工なんです。外側から施工するので、床・壁・天井を壊しません。
「2日でできる耐震」なんです。
また、フレームプラス G2は「外側施工」なので、高齢のご家族がいらっしゃったり、家の中がリフォーム済みだったりして、工事のために室内に入って欲しくない方もおられます。このようなケースに最適な工法だと思います。
「外側施工」だから、「室内を壊さない」のはそれ自体、メリットですが、もう一つ長所があります。「外側施工」だから、大掛かりな荷物移動や引越しが不要なんです。工事中も、生活は普段のままでOKです。
さて、まとめです。
今回の工事では、1階の窓にシャッターをつけて、防犯・防災効果を高めています。
そして、防災といえば、地震対策を忘れてはいけません。地震に対する備えこそ、「安心・安全な住まい」に欠かせないからです。
で、今回の一番重要なテーマは、何といっても、耐震リフォーム。
そして、木造住宅にとって、「地震の弱点は窓」。「窓がある」イコール「壁がない」ということなので、窓がどうしても、構造上の弱点になってしまいます。従来の耐震リフォームでは、家の強度を高めるために、筋かいや構造用合板で壁をつくるのが常識でした。窓が小さくなる・なくなることも、当たり前でした。
でも、「フレームプラス G2」を使えば、いまある窓はそのままに、耐震リフォームが可能です。今までの耐震が「カベ耐震」なら、今回いち早く採用したYKK APのフレームプラス G2は、「マド耐震」と言えるでしょう。
「マド耐震」のメリットは大きく3つです。
1)窓をなくさない・小さくしない(壁をつくらない)
2)2日でできる耐震(かんたん施工、省施工)
3)外側施工なので、室内を壊さない。そして、荷物移動・引っ越し不要。
この「マド耐震」、新しいジャンルのリフォームとして、ぜひ、おススメです。
どこかで見たような感じがしますね。。。
フルリフォーム(全面リフォーム)で最も大切なのは「断熱」と「耐震」です。耐震に関する正しい知識を知り大切な資産である建物を守りましょう。
どのようなお悩みのご相談でも結構です。
あなたの大切なお住まいに関するご相談をお待ちしております。
営業マンはおりませんので、しつこい営業等も一切ございません。
※設計会社(建築家様)・同業の建築会社様のご相談につきましては、プランと共にご指定のIw値及びUa値等の性能値の目安もお願い申し上げます。
※現在大変込み合っております。ご提案までに大変お時間がかかっております。ご了承のほどお願い申し上げます。
2025年(令和7年)の4月1日建築基準法改正が決定、2025年(令和7年)4月以降に着手するフルリフォームに確認申請が義務化されることにより、現在大変混みあっております。
お問い合わせ・ご相談多数のため、ご返信、プランのご提案までに日数を頂いております。ご了承の程お願い申し上げます。
首都圏のリノベーションにつきましては、2024年度工事枠は10月解体着工のお施主様まで埋まっております。
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