木造一戸建てリフォームでの耐震補強の工法・費用をケース別に徹底解説網羅!

戸建てフルリフォーム、柱を抜いて梁補強、工法、費用を徹底解説!

ポイント② 柱を抜いて梁補強をする方法

梁を使った補強

 

 

今回は一戸建て(一軒家)フルリフォーム、戸建てリノベーションでの間取り変更の際に必要になる柱を抜いて梁を架ける梁補強についてみていきましょう。耐震補強を考えるポイント②は梁補強です。ポイント②は、在来軸組工法での間取り変更の際に、必ずと言って良いほど、抜く柱が出てきます。もちろん、抜けない柱や壁(耐力壁)もありますが、柱を抜き間取り変更する際に関連してくる梁の架け替えについてです。

そもそも築30年以上の木造の建物を一戸建て(一軒家)リフォームされる場合30年前の住まいと今の住まいでは暮らし方が全く違います。

その最たる空間がリビングダイニングキッチンでしょう。30年以上前の建物ではリビングはリビング(居間)、ダイニングはダイニング(食事室)、キッチンはキッチン(台所)といった具合ですべてが分離されていました。

これらの建物を一戸建て(一軒家)リフォームされることになるわけですから、当然大空間のLDKにしたいと考えるのが皆さん共通するところです。となりますと、居間と食事室と台所をつなげる、もしくは既存の居室をLDKにする一戸建て(一軒家)リフォームが必要になるわけですが、木造のためそれぞれの部屋に柱が等間隔で配置されております。この柱を全体の構造を見ながら抜けるところを抜いていくわけですが、当然抜けない柱や抜けない壁(耐力壁)もあるわけです。抜ける柱も抜いて終わりというわけではありません。

 

弊社では、大正8年の創業以来木造一戸建て(一軒家)リフォームには特に力を入れてきましたので、木造の構造を熟知する職人、元宮大工が現場監督をし、知恵を絞りお客様の理想の住まいづくりをお手伝いしておりますが、柱を抜く場合、二階の柱を背負っているケースなどもあるため、梁で2階の柱を背負うように強度をみて提案をします。

飛ばすスパンによっては、木の梁ではなく、軽溝鋼梁を使用し補強することも非常に多いです。鉄梁もただいれれば良いという訳ではな、現況の状態により鉄梁の柱でしっかりフレームで固定しなければならない状況もあります。木の梁を入れたほうが良いケースもあります。また木の梁とひとことにいっても集成材の梁を使用するケースもあれば、天井高を高くとるために充腹梁といって、既存の梁と新規梁材を抱き込み梁を制作する工法もあります。

 

これらの補強方法の回答は一つではありません。現場に応じてこれらの補強法を選択していくことになるのです。リフォームで「許容応力度計算」までを行う会社は、日本広しといえ、まず少ないと思いますが、弊社では有償にはなってしまいますが、「許容応力度計算」をお勧めしており、綿密な構造計算によって、釘一本まで計算して耐震補強をすることが多いのです。

ここで紹介するのは、柱を抜き梁補強を施した事例になりますが、「許容応力度計算」に基づき根拠のある梁補強の実例をご紹介をします。今回はめったに見れない充腹梁の事例を見ていきたいと思います。

 

 

1 ご要望と提案

1-1 既存間取り

築40年を超える建物の耐震等級3相当(上部構造評点評点1.5以上)を計画した内部スケルトンリフォームになります。お一人でのお住まいの為、部屋数を減らし一部屋の空間を広くしたいというご要望がありました。

 

梁を使った補強


■ H様邸 既存平面図 ■

梁を使った補強

H様邸 既存二階床伏図 小屋伏図

梁を使った補強
梁を使った補強

築40年超の建物ですが、この時代に多い作りと間取り方です。

梁を使った補強
梁を使った補強

一階はLDKとなり、柱を抜くところも多くなります。現場調査の段階では柱を抜く箇所を図面上にチェックを入れていきます。

 

梁を使った補強

梁を使った補強
1-2 リフォーム後間取りと梁補強図
梁を使った補強

1,2階平面図

梁を使った補強

二階床伏せ図と小屋伏図

 

耐震等級3相当(評点1.5)の耐震補強をリフォームで行うために許容応力度計算を解体前に行い、どの柱を抜き、どのような梁補強を施すのか図面に落とし込み、職人とも綿密に打ち合わせを行います。

 

2 着工

2-1 解体

外壁からの補強に加え、内部の梁補強の詳細な納め方も事前の構造計算から決めていた為、解体は大工が行いました。

梁を使った補強_解体
梁を使った補強_解体

 

一部雨漏りの跡があり、木ずり壁に腐食がみられました。木刷り下地の壁倍率は、建築基準法では0.5としていますが、今回はリフォームのため、木刷り下地は0として構造計算を行っています。

2-2 梁補強(充腹梁)制作

解体が終わると同時に、既存躯体の状態の調査と補強計画を設計と大工を入れ、抜く柱と梁補強の方法を綿密に打ち合わせしていきます。H様邸では、現況の躯体を診断後、充腹梁で補強する方針が決まり、梁の納め方を打ち合わせしました。

梁を使った補強_補強
梁を使った補強_補強

 

補強図に従い充腹梁の制作に入ります。受け材を既存躯体と緊結して、側面の力板を張る下地を組んでいきます。

梁を使った補強_補強
柱を抜いた箇所に仮補強をしていきます。
梁を使った補強_補強
切断した柱へは力板を張るまで仮補強をします
梁を使った補強_補強

縦方向への梁補強は集成材を使用
梁を使った補強_補強
旧梁下へ105角を固定し充腹梁を制作していきます。
梁を使った補強_補強

短冊金物を側面と最も力の加わる下部に設置します。

梁を使った補強_補強

写真手前方向より構造用合板を300㎜の高さで張り込んでいきます。このとき逆の面は奥より張り込み力を分散させます。

梁を使った補強_補強

充腹梁の完成です。釘を等間隔で打つためシールを張り指定の本数を打ち込んでいきます。

梁を使った補強_補強

最も力を受けるのが梁の下端になります。
充腹梁の下端に短冊金物で固定します。

梁を使った補強_補強

一階の充腹梁も進んでいます。

梁を使った補強_補強

逆から見た写真。一階の充腹梁も完成です。

2-3 充腹梁設置完成
梁を使った補強_補強
梁を使った補強_補強

今回は許容応力度計算に基づく耐震等級3相当(評点1.5)の補強計画の一部となる梁補強、充腹梁による補強を見ていきました。充腹梁による梁補強のメリットは、通常の梁補強と違い、連結する既存梁の梁背(梁の背の高さ)を含んで耐力計算をするため、天井高が高く取れるメリットがあります。既存の構造体の納まりをみての判断にはなりますが、まさに教科書通りの納め方となります。

このように柱を1本抜くことで、建物の力の加わり方は変わります。ただ梁を入れれば良いというわけではないので、木造のフルリフォームや戸建てリノベーションを検討されている方は、木造改修に造詣の深い実績のある会社に相談することをおすすめします。

梁を使った補強_補強

一階は充腹梁補強の採用でうまく天井高を最大で取ることができました。

梁を使った補強_補強

2階の手前の2.5間スパンの充腹梁は、
梁背が高いため天井から一部梁型がでました。
1.5間の充腹梁はセルロースファイバー断熱層
の中に納まりました。

梁を使った補強_補強

既存柱3本を抜き、許容応力度計算を元に充腹梁補強

3 その他梁補強

 

許容応力度計算に基づく、梁補強の例をわかりやすい充腹梁でみていきましたが、充腹梁だけが正解であるというわけではありません。現場に応じて、集成材での梁補強をするケースもありますし、軽溝鋼(C形鋼)での梁補強をするケース、H形鋼(H鋼)での梁補強のケースとさまざまです。

 

既存の梁の納まりをみて最適解を求めていくのが、木造補強の難しさでもあります。

 

 

 

3-1 集成材での梁補強 鉄梁補強

ここからは、他現場での梁補強をみていきましょう。補強方法にはこれしかない!という答えはありません。現場現場に応じた最適解を求めていく作業になります。解体された状態の躯体をみて、どのような補強方法が良いのかを検証します。

 

下の写真は、2階床組を根太工法ではなく剛床工法にて施工しました。現在新築では標準化されている工法ですが、根太を設置せず横からの水平力に抵抗させる工法で24ミリ以上の構造用合板をはり水平耐力を持たせる工法です。構造材を千鳥状に組み、構造用合板で固定していきます。

 

梁を使った補強_集成材梁補強

梁の間隔は縦横3尺の千鳥状に組み、24ミリの構造用合板で固定していきます。構造体と構造用合板を固定することで風荷重・地震荷重といった水平荷重に対しての剛性と耐力を持たせ水平方向に変形することのない構造体とします。

梁を使った補強_集成材梁補強

剛床(根太レス工法)への集成材梁補強

梁を使った補強_集成材梁補強

2階構造部、既存の柱梁の一部を残し新たに組み替えを行いました。

梁を使った補強_集成材梁補強

二階の荷重を最も背負う重要な柱と梁の補強

梁を使った補強_集成材梁補強

集成材梁背240㎜での補強

梁を使った補強_集成材梁補強

同様に集成材梁背240㎜のクロスして架けるケース

梁を使った補強_鉄梁補強

軽溝鋼梁による鉄梁補強

梁を使った補強_H形鋼梁補強

H形鋼による梁補強

一戸建て(一軒家)リフォームは、マンションスケルトンリフォームいわゆるマンションリノベーション工事とは違います。弊社ではこの両方をやらせていただきますが、『増改築com®』運営会社のハイウィル株式会社では創業大正八年以来、過去数千件もの大規模な改修をやらせていただいて思うのは、マンションスケルトンリフォーム(マンションリノベーション)は決められた箱のなかで造作する工事工事ですので、築年数により配管や空調の等の制約を受けながら行う工事となりますが、一戸建て(一軒家)フルリフォーム・戸建てリノベーションは木構造が密接に絡み避けては通れないお題目となるため、現場に入る職人、特に大工は熟練工を必要とします。

いわゆる内装畑の大工ではなく棟梁と呼ばれる大工です。

大工とは、材木一本から一人で木を刻み家を建てられるレベルの職人を指します。一戸建て(一軒家)リフォームでは、内装経験豊富な大工であっても木軸構造を熟知した大工でなければ、今回お伝えした梁の架け替えや正確な補強はできません。ぜひともこれから改築、一戸建て(一軒家)フルリフォーム・戸建てリノベーションをされる方は、正確な知識とノウハウを持った工務店での施工をおすすめ致します。

 

こちらのコンテンツで使用した写真の現場は以下の現場になります。工事全体の流れがわかりやすく解説しておりますので一戸建て(一軒家)リフォームされる際の参考にしていただければと思います。

 

中古住宅仲介+戸建リノベーション事例(築60年東京都S様

更新日:2020/10/28

 

 

 

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< 著者情報 >

稲葉 高志

 

ハイウィル株式会社 四代目社長

1976年生まれ 東京都出身。

【経歴】

家業(現ハイウィル)が創業大正8年の老舗瓦屋だった為、幼少よりたくさんの職人に囲まれて育つ。

中学生の頃、アルバイトで瓦の荷揚げを毎日していて祖父の職人としての生き方に感銘を受ける。 日本大学法学部法律学科法職課程を経て、大手ディベロッパーでの不動産販売営業に従事。

この時の仕事環境とスキルが人生の転機に。  TVCMでの華やかな会社イメージとは裏腹に、当たり前に灰皿や拳が飛んでくるような職場の中、東京営業本部約170名中、営業成績6期連続1位の座を譲ることなく退社。ここで営業力の基礎を徹底的に養うことになる。その後、工務店で主に木造改築に従事し、100棟以上の木造フルリフォームを職人として施工、管理者として管理

2003年に独立し 耐震性能と断熱性能を現行の新築の最高水準でバリューアップさせる戸建てフルリフォームを150棟、営業、施工管理に従事。2008年家業であるハイウィル株式会社へ業務移管後、 4代目代表取締役に就任。250棟の木造改修の営業、施工管理に従事

2015年旧耐震住宅の「耐震等級3」への推進、「断熱等級4」への推進を目指し、 自身の500棟を超える木造フルリフォーム・リノベーション経験の集大成として、性能向上に特化した日本初の木造フルリオーム&リノベーションオウンドメディア 「増改築com®」をオープン

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