築60年以上の建物に多い大谷石基礎への対応

大谷石が基礎のケース『大谷石基礎補強』のポイント

大谷石基礎は「あと施工アンカー」が効かない

こちらの事例は東京都台東区谷中での築60年を超える長屋住宅の切り離し解体リノベーション事例となります。

こちらの建物の基礎は複雑で、建物正面と側面が大谷石基礎、長屋切り離し面はブロック基礎となっており、裏は束石のみという状態の建物でした。今回の台東区谷中のN様邸の長屋切り離しリノベーションでの基礎補強計画では、大谷石基礎部は、配筋を差し込む際のあと施工アンカーが効かないため、内側と外側から添え基礎で挟み込む形、かつ金物をコンクリート打設前に固定し、基礎と土台、柱を連結させる補強を計画、束建てとなっていた裏面は新設基礎を、切り離し部はブロック基礎となっていたため、構造体を一体化させるため、柱一本分セットバックし新たに新設基礎を設置する計画としました。

戸建てフルリフォーム・リノベーション等の大規模なリフォームに際してはスケルトン化することが多く、本格的な性能向上リフォームが可能です。とはいえ既存の問題点をすべて解決し、「新築並み」、あるいは「新築の最高基準レベル」へ性能向上をはかるのは容易なことではありません。性能向上という意味では最も重要な耐震性、その中でも最も重要なのが基礎補強といっても過言ではありません。

絶対にやってはいけないのは基礎を無視した上部構造のみの耐震補強。旧耐震基準の無筋基礎の建物へ基礎補強を無視して、上部構造のみを耐震化する業者もありますが、これでは「耐震性能」は絵に描いた餅となってしまいます。

ここでは、通常の無筋基礎ではなく、基礎が大谷石であった際の抱き基礎補強のポイントを解説していきたいと思います。

図面下部(建物正面)と側面(図面右)が大谷石基礎

柱を設置する箇所へは、増し基礎の基礎配筋時に耐震用金物をコンクリート打設前に基礎に打ち込み、コンクリート打設後に基礎・土台・柱を連結一体化させます。

鋤取り後指定の基礎補強部へ根切を行います。

根切後の砕石を敷き転圧します。

既存の大谷石の基礎部分は、立ち上がり部分を内側と外側から両サイドから「配筋していきます。

長屋の切り離し部は、構造体を分離するため、柱1本分内側にセットバックし、独立した基礎を新設します。

間取り変更により新たに壁となる部分へは基礎を新設します。新設部への配筋。

既存の大谷石部分は、両サイドから基礎を立ち上げ補強します。柱脚部へは予め補強金物を打ち込み基礎と土台柱が連結され一体化されます。

木工事時に新たに新設される柱の位置へも同様にコンクリートで一体化される前に金物を埋め込みます。

配筋が完了。ベース部分は湿気防止用にコンクリートを打ちます。

打設前に再度、構造設計担当者と配筋のチェックを行います。

コンクリートミキサー車による圧送が始まります。

コンクリート打設完了。

打設後は湿潤期間を置きます。

無筋基礎への増し基礎補強

玄能で叩いて指定の高さまで押し込む。

無筋基礎への増し基礎補強

アンカーをある程度手で押し込んでいく。

無筋基礎への増し基礎補強

新規基礎部分に用いるアンカーボルト。力の掛かる部分には、定着長さを稼げる曲がり部分が大きなアンカーを使用。

長屋の切り離し部の基礎新設。アンカーボルトは土台設置時に固定します。

両サイドから基礎で補強され型枠が外されました。

大谷石基礎周りの補強基礎が完成しました。

配筋時に基礎に緊結した金物を固定。これで基礎、土台、柱の連結することで地震時の引き抜きに耐えます。

N様邸では抱き合わせ基礎(増し基礎・添え基礎・ツイン基礎)での基礎補強を行いました。N様邸のように築60年以上の建物になると、基礎が無かったり、石場建てによる基礎であったり、大谷石基礎であったりと、通常の旧耐震基準で建てられた建物の無筋基礎への基礎補強法ではなく、その基礎により補強法が異なります。N様邸は大谷石とブロック基礎が混在し、建物裏面は束石のみで建物が支えられている状況でした。そこで大谷石部分へは内側と外側から挟み込む補強をし、主要柱脚部へは、引き抜き防止対策でコンクリート打設前に、基礎と土台と柱を一体化させる金物で構造の一体化を図りました。戸建てリノベーション(フルリフォーム)の世界では、未だに旧耐震基準の無筋基礎の建物へ基礎補強を行わないリフォーム会社が大半を占めます。基礎を無視し、土台から上部の構造体のみを補強して評点を出しても、制震ダンパー等である程度の数値は稼げます。しかし、足元となる基礎をおろそかにしてしまうと大地震が起きた際にせん断力が働き、土台が基礎から抜けるような事態になるケースもあるため、大規模な戸建てリノベーションをされる際には、木造を熟知し、実績が豊富な会社へ相談することをお勧めする理由でもあります。

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診断編の役割とコンセプト: 皆さんの漠然とした「家への耐震不安」に寄り添い、その正体を突き止めるための「診断」に特化したパートです。地震の歴史からご自宅の築年数が持つ意味を学び、耐震性の客観的な物差しを知り、そしてプロの診断技術の深淵に触れることで、読者の不安を「解決すべき具体的な課題」へと転換させます。すべての治療は、正確な診断から始まります。

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➡️ 我が家の体力測定:耐震性の“三位一体”「評点・偏心率・N値」とは何か

➡️ 耐震診断の全貌:費用・流れ・依頼先は?プロが教える診断結果の正しい読み解き方

➡️ 究極の診断法「スケルトンリフォーム」。なぜ私たちは壁を剥がし、家の“素顔”と向き合うのか

➡️ 壁の中に潜む時限爆弾:見えない木材の腐食とシロアリが、あなたの家の体力を奪っている


 

 

第2部:【治療編】築年数別の最適解。“三位一体”を取り戻す構造外科手術

 

治療編の役割とコンセプト: このガイドの技術的な核心です。第1部で明らかになった家の“カルテ”に基づき、それぞれの時代が抱える固有の病巣に対する、具体的な「治療計画=補強工事」を詳述します。旧耐震の宿命である基礎補強から、81-00住宅のバランス修正、そして現代住宅の損傷防止まで。プロが執刀する「構造外科手術」の全貌を、豊富な経験に基づいて解説します。

記事(全11本):

 

➡️ 【旧耐震の宿命】なぜ「基礎補強」なくして、評点1.5(強度)は絶対に不可能なのか

➡️ 【旧耐震の治療法】無筋基礎を蘇らせる「基礎補強工事」と、骨格を再構築する「壁量・金物」計画

➡️ 【81-00住宅の落とし穴】「新耐震なのに倒壊」の衝撃。過渡期の家に潜む“バランス”と“結束力”の罠

➡️ 【81-00住宅の治療法】偏りを正し、骨格を繋ぐ。あなたの家を“本物の新耐震”にする補強工事

➡️ 【2000年基準以降の課題】「倒壊はしないが、住めなくなる」という現実

➡️ 【次世代の備え】絶対的な耐震性能の上にこそ。「制震」がもたらす“損傷防止”という価値

➡️ 柱の抜けを防ぐ生命線「N値計算」:500棟の経験が明かす、本当に意味のある耐震金物補強の全貌


 

 

第3部:【技術編】「本物の強さ」を構築する、専門医の外科手術

 

計画編の役割とコンセプト: 家の“健康”を取り戻すための、具体的な「手術(工事)」の全貌を解説する、応用技術の核心部です。耐震・制震・免震といった基本的な考え方の違いから、家の骨格を自在に操り、理想の空間と絶対的な安全を両立させるための、高度な専門技術まで。私たちが持つ「技術の引き出し」のすべてを、ここに開示します。

記事(全5本):

➡️ 「耐震」「制震」「免震」の違いとは?それぞれのメリット・デメリットをプロが徹底比較

➡️ 【最重要】「制震」は耐震の“代わり”ではない。損傷を防ぐための制震ダンパー“正しい使い方”

➡️ リノベーションの壁倍率計画:面材耐力壁「ノボパン」剛床工法で実現する“三位一体”の耐震補強

➡️ 大空間リビングの夢を叶える「柱抜き・梁補強」。構造とデザインを両立させる匠の技

➡️ リフォームで「耐震等級3」は取得できるのか?その方法と費用、そして本当の価値


 

 

第4部:【計画編】見えざる壁を乗り越える。法規と費用を味方につける航海術

 

計画編の役割とコンセプト: どんなに優れた治療計画も、現実の壁を乗り越えなければ絵に描いた餅です。このパートでは、リフォーム計画を阻む二大障壁である「法規」と「費用」に正面から向き合い、それらを敵ではなく「味方」につけるための、具体的な航海術を授けます。2025年法改正、補助金、コストコントロール。プロの知恵で、計画実現への確かな道筋を照らします。

記事(全4本):

➡️ 【2025年法改正】建築確認申請を“賢く回避”する、性能向上リノベーションの戦略的計画術

➡️ 検査済証なき家、再建築不可物件の再生シナリオ:法的制約の中で命を守るための現実解

➡️ 【費用全貌】モデルケースで見る耐震リフォーム工事のリアルな費用と、賢いコストダウン術

➡️ 【最新版】耐震リフォーム補助金・減税制度フル活用マニュアル


 

 

第5部:【実践・難関編】500棟の軌跡。どんな家も、決して諦めない

 

実践・難関編の役割とコンセプト: このガイドの、増改築.com®の真骨頂。他社が匙を投げるような、極めて困難な状況を、いかにして克服してきたか。その具体的な「臨床報告」を通じて、私たちの圧倒的な技術力と、決して諦めない情熱を証明します。これは、単なる事例紹介ではなく、困難な状況にある読者にとっての、希望の灯火となるパートです。

記事(全5本):

➡️ 【難関事例①:傾き】家が傾いている…その絶望を希望に変える「ジャッキアップ工事」という選択

➡️ 【難関事例②:狭小地】隣家との距離20cm!絶望的な状況を打破する「裏打ち工法」とは

➡️ 【難関事例③:車庫】ビルトインガレージの弱点を克服し、評点1.5以上を達成する構造計画

➡️ 【難関事例④:無基礎】「この家には、基礎がありません」。絶望の宣告から始まった、奇跡の再生工事

➡️ 【最終方程式】「最強の耐震」×「最高の断熱」=家族の健康と資産価値の最大化


 

 

第6部:【最終決断編】最高の未来を手に入れるための、最後の選択

 

最終決断編の役割とコンセプト: 最高の未来を実現するための、最も重要な「パートナー選び」に焦点を当てます。技術論から一歩進み、読者が自らの価値観で、後悔のない、そして最高の決断を下せるよう、その思考を整理し、力強く後押しします。

記事(全4本):

➡️ 耐震リフォーム業者選び、9つの最終チェックリスト:「三位一体」と「制震の役割」を語れるか

➡️ なぜ、大手ハウスメーカーは木造リノベーションが不得意なのか?業界の構造的真実

➡️ セカンドオピニオンのススメ:あなたの家の診断書、私たちにも見せてください

➡️『【最終結論】500棟の経験が導き出した、後悔しない家づくりの“絶対法則”』へ


 

 

終章:エピローグ ~100年先も、この家で~

終章の役割とコンセプト: 物語を締めくくり、技術や知識を超えた、私たちの「想い」を伝えます。なぜ、私たちがこの仕事に人生を懸けているのか。その哲学に触れていただくことで、読者との間に、深い共感と、未来へと続く信頼関係を築きます。

記事(全1本):

➡️ 【特別寄稿】耐震とは、文化を未来へ繋ぐこと。四代目として。

 

 

断熱リフォームで失敗しない為の『断熱リフォーム 完全ガイド』

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何から読めばいいかわからない方は総合案内よりお進みください。

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< 著者情報 >

稲葉 高志

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ハイウィル株式会社 四代目社長

1976年生まれ 東京都出身。

【経歴】

家業(現ハイウィル)が創業大正8年の老舗瓦屋だった為、幼少よりたくさんの職人に囲まれて育つ。

中学生の頃、アルバイトで瓦の荷揚げを毎日していて祖父の職人としての生き方に感銘を受ける。 日本大学法学部法律学科法職課程を経て、大手ディベロッパーでの不動産販売営業に従事。

この時の仕事環境とスキルが人生の転機に。  TVCMでの華やかな会社イメージとは裏腹に、当たり前に灰皿や拳が飛んでくるような職場の中、東京営業本部約170名中、営業成績6期連続1位の座を譲ることなく退社。ここで営業力の基礎を徹底的に養うことになる。その後、工務店で主に木造改築に従事し、100棟以上の木造フルリフォームを職人として施工、管理者として管理

2003年に独立し 耐震性能と断熱性能を現行の新築の最高水準でバリューアップさせる戸建てフルリフォームを150棟、営業、施工管理に従事。2008年家業であるハイウィル株式会社へ業務移管後、 4代目代表取締役に就任。250棟の木造改修の営業、施工管理に従事

2015年旧耐震住宅の「耐震等級3」への推進、「断熱等級4」への推進を目指し、 自身の500棟を超える木造フルリフォーム・リノベーション経験の集大成として、性能向上に特化した日本初の木造フルリオーム&リノベーションオウンドメディア 「増改築com®」をオープン

公開日:2020/10/23

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