戸建フルリフォームなら「増改築.com®」TOP > 断熱リフォーム(リノベーション)の費用や工期、工事内容について> 断熱リフォーム 完全ガイド【基礎知識編①】断熱リフォームの失敗・効果なしの原因№1「気密」を徹底解説
更新日:2025.7.7
1. なぜ家は寒くなる? 熱の正体と3つの移動方法
2. 「断熱」の役割 ― 熱の伝導と放射を食い止める“高性能な壁”
3. 「気密」の役割 ― 対流を制し、断熱効果を100%引き出す“閉じたファスナー”
4. UA値とC値 ― 我が家の性能を「数値」で見る
5. 「断熱・気密・換気」は三位一体 ― 最高の性能を引き出す最終方程式
【導入編】でご自宅の「健康診断」を終え、漠然とした不快感の正体が、住まいの性能不足にあることにお気づきいただけたかと思います。
では、その性能を向上させる「治療」とは、具体的に何をすることなのでしょうか。
その答えの核心に迫るのが、この【基礎知識編】です。
断熱リフォームの世界には、必ずセットで語られる、二つの重要なキーワードがあります。それが「断熱(だんねつ)」と「気密」です。 この二つの言葉は、いわば車の両輪、ダウンジャケットとそのファスナーの関係 です。どちらか一つが欠けても、あなたの住まいが「快適」という目的地へたどり着くことはありません。
この章では、なぜこの二つがセットでなければならないのか、その根本的な理由を、家の性能を左右する「熱の正体」から紐解いていきましょう。
出展:建築設備NOTEより
そもそも「断熱」とは、文字通り「熱を断つ」ことです。そのためには、まず敵である「熱」がどのように移動するのか、その性質を知る必要があります。熱の伝わり方には、「①熱伝導」「②熱対流」「③熱放射(輻射)」の3種類があり、私たちの住まいの中では、この3つの現象が絶えず起こっています。
① 熱伝導:触って伝わる熱 「伝導」とは、物質の中を熱が直接伝わっていく現象です。 熱いフライパンの取っ手が鉄だと火傷しそうなくらい熱いのに、木製だと持てるのは、鉄が木よりも熱を伝えやすい(熱伝導率が高い)からです。
② 熱対流:空気の流れで伝わる熱 「対流」とは、空気や水といった流体が動くことによって熱が運ばれる現象です。 部屋の中でエアコンの暖房をつけると、暖かい空気は軽くなって天井付近に昇り、冷たい空気は重くなって足元に下りてきます。これが対流です。
③ 熱放射(輻射):離れていても伝わる熱 「放射(輻射)」とは、電磁波によって熱が運ばれる現象で、間に何もない空間でも伝わります。 焚火やストーブの前にいると、直接触れていなくてもじんわりと暖かさを感じるのは、この放射熱のおかげです。
優れた断熱リフォームとは、この「伝導」「対流」「放射」という3種類の熱移動を、家のあらゆる場所で、総合的に食い止めることに他ならないのです。
「断熱」の役割は、家の外壁や天井、床に「熱が伝わりにくい層=断熱材」を設けることで、①の「伝導」や③の「放射」による熱の移動を強力にブロックすることです。
その秘密は、断熱材が内部に無数の「動かない空気」を抱え込んでいるからです。この「断熱」をしっかり行うことで、夏は外の暑さが、冬は室内の暖かさが、壁や屋根を伝わって移動するのを防ぎます。
しかし、プロは断熱材を単なる「熱を止める壁」としてだけ見てはいません。素材ごとの「個性」を理解し、その能力を最大限に引き出す設計を行います。
一体化のスペシャリスト「硬質30倍発泡ウレタン」
現場で吹き付けるこの断熱材は、断熱材そのものが湿気や空気をほとんど通さない「独立気泡(クローズドセル)」構造をしています。 つまり、「断熱」「気密」「防湿」という3つの役割を、これ一つでこなすことができる、非常に効率的な素材です。
トータル快適性の覇者「セルロースファイバー」
新聞紙をリサイクルしたこの素材は、高い断熱性能に加え、「卓越した吸音効果」と、木のように呼吸して湿度を調整する「調湿性能」を併せ持ちます。 静かで、湿度が安定した、質の高い快適空間を求める場合に、特にその真価を発揮します。
このように、断熱材の個性を知ることで、リフォームの目的がより明確になります。しかし、どんなに高性能な断熱材を使っても、それだけでは不十分です。なぜなら、②の「対流」、つまり空気の移動による熱損失を防ぐことができないからです。そこで登場するのが、もう一つの主役、「気密」です。
ここで、冬の服装をもう一度想像してみてください。 最高級のダウンジャケットを着ていても、前のファスナーを全開にしていたら、全く暖かくありません。冷たい風がどんどん中に入ってきて、ダウン(羽毛)が持つ本来の保温性能は発揮されません。
この例えにおいて、
ダウンジャケット = 断熱材
ファスナー = 気密処理
なのです。
「気密」とは、意図しない隙間を徹底的になくし、家の気密性(空気の漏れにくさ)を高めることです。気密性が低い「隙間だらけの家」では、いくら断熱材を入れても「隙間風」によって熱が逃げ、断熱材も冷やされてしまい、全く性能を発揮できません。
では、プロの現場では、どのようにしてこの「閉じたファスナー」を作り上げているのか。その核心は、「防湿気密シート」と「気密テープ」による、地道で精密な手作業にあります。
Step1. 防湿気密シートによる「完璧な袋」の形成
断熱材を充填した後、その室内側を半透明の「防湿気密シート」で家全体を隙間なく覆います。 これは、室内の湿気が壁の中に入って結露するのを防ぐ「防湿」と、隙間風をなくす「気密」という、二つの重要な役割を担っています。
Step2. 気密テーピングによる「穴」の完全閉鎖
シートを張っただけでは、シートの継ぎ目や、柱・梁との取り合い部分から空気が漏れてしまいます。そこで、専用の黒い気密テープを使い、それらの隙間をミリ単位で、これでもかというほど丁寧に塞いでいきます。 まさに「家の内側に、もう一つ完璧なビニール袋を作る」作業です。 ここには専用の「気密カバー」を設置したり、一本一本の配管の周りを専用テープで厳重に処理したりすることで、空気の漏れを完全にシャットアウトします。 そのため、あえて気密層を家の「外側」(構造用合板の継ぎ目をテープ処理)で確保し、室内側は湿気が通る状態にする、という高度な設計思想も存在します。 このように、断熱材の個性を理解し、気密の取り方すら変えていく。それこそが、本物のプロフェッショナルの仕事なのです。
断熱リフォームの世界では、家の性能を客観的に示すための「数値」が使われます。ここでは、最も重要な2つの数値、「UA値」と「C値」について解説します。
UA値(外皮平均熱貫流率):断熱性能を表す数値 UA値とは、建物の中から外へ、どれだけ熱が逃げやすいかを示す数値です。この
数値が小さいほど、熱が逃げにくく、断熱性能が高いことを意味します。ゴルフのスコアのように、小さい方が優秀と覚えてください。例えば、2025年の省エネ基準では、東京(6地域)のUA値は0.87以下と定められていますが、さらに快適な暮らしを目指すなら0.6、0.46といった、より低い数値を目指すことになります。
C値(隙間相当面積):気密性能を表す数値 C値とは、家全体にどれだけの隙間があるかを示す数値で、「家全体にある隙間面積(㎠) ÷ 延床面積(㎡)」で計算されます。この数値が小さいほど、隙間が少なく、気密性能が高いことを意味します。 例えば、C値5.0の家は、家全体で「はがき約2.5枚分」の隙間が常に開いているのと同じ状態です。一方で、高気密住宅と呼ばれるC値1.0の家では「はがき半分」程度の隙間しかありません。この差が、冬の隙間風や熱損失に大きく影響します。
断熱熱リフォームの成功とは、UA値とC値の両方を、バランス良く向上させることに他なりません。どんなにUA値が良くても(良い断熱材を使っても)、C値が悪ければ(隙間だらけなら)、その性能は発揮されないのです。
「家を隙間なく密閉したら、息苦しくなってしまうのでは?」 その通りです。だからこそ、
「高い気密性」と「計画的な換気」は、必ずセットでなければなりません。
昔の家は隙間風が自然換気の役割を果たしていた側面もありますが、それは同時に、熱やホコリ、花粉なども無制御に入ってくる状態でした。現代の高性能住宅では、「断熱」と「気密」を徹底的に高めた上で、機械による「計画換気」を行います。
気密性を高める → 意図しない空気の出入りをゼロにする。
計画換気を行う → 決まった給気口から新鮮な外気を取り入れ、汚れた空気や湿気を決まった排気口から排出する。
この仕組みによって、家中の空気を常にきれいで健康な状態に保ちながら、熱の損失は最小限に抑えることができます。特に、排気する空気の熱を回収して、給気する空気を温める「熱交換型換気システム」を導入すれば、換気による熱ロスをほとんどなくすことも可能です。リフォームの実務ではダクトレスで計画をすることが大半です。
このように、「断熱」「気密」「換気」は、どれか一つでも欠けてはならない三位一体の関係なのです。
まとめ:快適な住まいは、科学的な裏付けから生まれる
この章では、断熱リフォームの成功を左右する、最も基本的な二大要素「断熱」と「気密」について解説しました。
断熱は、伝導や放射による熱移動をブロックする「防御壁」。
気密は、対流による熱移動(隙間風)をなくし、断熱性能を最大限に引き出す「縁の下の力持ち」。
この二つの関係性を正しく理解することが、断熱リフォームの計画を立てる上での第一歩です。
しかし、この断熱と気密の完璧なパートナーシップが崩れた時、あるいは施工にわずかなミスがあった時、「結露」という静かで最も厄介な敵が現れます。次の章では、この結露の正体を科学的に解き明かし、その完全な対策を学びます。
断熱リフォームで失敗しない為の『断熱リフォーム 完全ガイド』
500棟以上のスケルトンリノベーションの断熱改修知見を網羅!
断熱リフォームをする前に必ず読んでください!
何から読めばいいかわからない方は総合案内よりお進みください。
導入編2記事・基礎知識編3記事・部位別実践編4記事・特殊ケース攻略編2記事・計画実行編5記事の全16話構成で、断熱リフォームに必要な全知識をを網羅的に解説します。読みたいテーマが決まっている方は以下からお進みください。
※すべてのページでYouTube動画解説リンクがありますので、合わせてご覧ください。
ハイウィル株式会社 四代目社長
1976年生まれ 東京都出身。
【経歴】
家業(現ハイウィル)が創業大正8年の老舗瓦屋だった為、幼少よりたくさんの職人に囲まれて育つ。
中学生の頃、アルバイトで瓦の荷揚げを毎日していて祖父の職人としての生き方に感銘を受ける。 日本大学法学部法律学科法職課程を経て、大手ディベロッパーでの不動産販売営業に従事。
この時の仕事環境とスキルが人生の転機に。 TVCMでの華やかな会社イメージとは裏腹に、当たり前に灰皿や拳が飛んでくるような職場の中、東京営業本部約170名中、営業成績6期連続1位の座を譲ることなく退社。ここで営業力の基礎を徹底的に養うことになる。その後、工務店で主に木造改築に従事し、100棟以上の木造フルリフォームを大工職人として施工、管理者として管理。
2003年に独立し 耐震性能と断熱性能を現行の新築の最高水準でバリューアップさせる戸建てフルリフォームを150棟、営業、施工管理に従事。
2008年家業であるハイウィル株式会社へ業務移管後、 4代目代表取締役に就任。
250棟の木造改修の営業、施工管理に従事。
2015年旧耐震住宅の「耐震等級3」への推進、「断熱等級4」への推進を目指し、 自身の通算500棟を超える木造フルリフォーム・リノベーション経験の集大成として、性能向上に特化した日本初の木造フルリオーム&リノベーションオウンドメディア 「増改築com®」をオープン。
フルリフォーム(全面リフォーム)で最も大切なのは「断熱」と「耐震」です。性能向上を第一に考え、末永く安心して住める快適な住まいを目指しましょう。
戸建てリノベーションの専属スタッフが担当致します。
一戸建て家のリフォームに関することを
お気軽にお問合せください
どのようなお悩みのご相談でも結構です。
あなたの大切なお住まいに関するご相談をお待ちしております。
営業マンはおりませんので、しつこい営業等も一切ございません。
※設計会社(建築家様)・同業の建築会社様のご相談につきましては、プランと共にご指定のIw値及びUa値等の性能値の目安もお願い申し上げます。
※現在大変込み合っております。ご提案までに大変お時間がかかっております。ご了承のほどお願い申し上げます。
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