戸建フルリフォームなら「増改築.com」TOP >2025年法改正後の既存不適格のリフォーム
更新日:2025/04/1
既存不適格建築物とは
ここでは、既存不適格建築物の基本的な意味と背景、そして現行の建築基準法との関係性について解説します。築年数が経過した木造住宅にお住まいの方や、これからリノベーションを検討している方は、「自分の家が既存不適格に該当するのではないか?」と不安に思われるケースもあることでしょう。この章を読むことで、既存不適格建築物の定義や扱われ方、そしてそれが実際のリフォーム計画にどのような影響を与えうるのかを大まかに把握できます。
「既存不適格建築物」という言葉を耳にしたとき、多くの方は「違法な増改築をした建物では?」とか「法律に反して建てられた危険な家なのでは?」といったイメージを抱くかもしれません。しかし実際のところ、既存不適格建築物は“建てられた当時は適法だった”ものの、“その後の法改正や基準変更によって、現在の基準を満たさなくなっている”状態を指します。では、なぜこうした建物が生まれるのでしょうか。また、木造住宅のリノベーションを検討する際に、この既存不適格がどのように影響するのでしょうか。ここでは、その背景や一般的なパターン、歴史的な視点から解説していきます。
明治以降、日本の建築や都市計画を取り巻く法律は幾度も改正を繰り返してきました。大正時代には市街地建築物法、戦後には建築基準法が整備され、耐震基準や防火規定も時代に応じて強化されてきました。特に、昭和56年(1981年)に大きく見直された耐震基準や、その後の平成時代における省エネ基準の導入、さらには近年の耐震補強促進など、幾度となく法律や基準が変化しています。
こうした改正が行われるたびに「現在の基準では認められない建物」が生まれる可能性が出てきます。例えば、1960年代に建てられた木造住宅は当時の耐震基準を満たしていて合法的に建てられたとしても、現行の耐震基準から見ると構造的な安全性が不十分とみなされるケースがあります。これが、典型的な“既存不適格”です。建築基準法上は「建設当時は適法だった」ので違法建築ではありませんが、今の基準から見ると満たしていない部分があるため“既存不適格”として扱われるわけです。
ここで押さえていただきたいのは、既存不適格建築物は「違法な建物」ではないという点です。建物が竣工した時点では法に適合していたにもかかわらず、後になって基準が引き上げられたり、防火地域の範囲が拡大したり、あるいは道路斜線制限や用途地域の変更などが行われたりして、結果として「今のルールを満たさない」状態になっているだけです。
とはいえ、構造的な安全性や防火性能など、現行ルールとのズレを放置するのは建物の寿命や居住者の安全に影響する可能性があります。例えば、旧耐震基準で建てられた住宅は大きな地震の揺れに対して脆弱なケースが多いことが、これまでの震災の記録から明らかになっています。そのため、既存不適格であるか否かをリノベーションの初期段階で把握することは非常に重要です。特に木造リフォームを数多く手掛けてきた私どもでは、この点をまずしっかりと確認することで、後々の設計変更やコスト増を防ぎ、お客様が安心して住み続けられるプランを提案するよう心がけています。
2025年の法改正では、いわゆる4号特例が縮小されるほか、耐震や省エネに関する要件が一段と見直される見込みです。これに伴い、“もともと既存不適格に当たる建物”のリフォームを行う際、より厳格な審査や確認申請が求められる可能性があります。
たとえば、これまでなら大規模修繕に該当しないとされていた工事内容が、2025年以降は「安全性確保のため確認が必要」と扱われるようになったり、自治体独自の条例などで補助金を受けるために現行基準をクリアする改修が必須とされたりするシナリオも考えられます。今のうちに「自分の家が既存不適格なのか」「どの程度現行基準との乖離があるのか」を把握し、改修計画を立てておくことが得策といえるでしょう。
ここでは、なぜリノベーションを考えるうえで既存不適格の有無を早期に把握することが重要なのか、その理由を詳しく掘り下げます。さらに、実際の現場ではどのような手順で「既存不適格かどうか」を調査・確認していくのか、具体的なポイントを示します。築年数の経過した木造戸建てを性能向上リノベーションする際、最初に行うべきことが「図面や法的手続きの履歴確認」や「現地調査」にあるのはなぜか――ここを理解しておくことで、読者の皆さまが今後リフォーム計画を進める際に役立つはずです。
「建物が既存不適格かもしれない」と分かったとき、どう対応すればいいのでしょうか。多くの場合、既存不適格だからといって即座に住めなくなるわけではありません。一方で、リノベーションに踏み切る前にその事実を知っているか否かで、計画の進め方や必要となる費用、そして工期が大きく左右されることがあります。
例えば、外壁を張り替えて断熱性能を上げようとしたら、耐力壁の基準や防火規制が現行法に適合しておらず、全面的な補強工事が必要となるケースがあります。また、増築や減築を伴うリフォームを計画する場合、既存不適格部分があると、その部分を含めて“新築同等の基準”で見直すよう求められる可能性もあります。こうした事態に着手後に気づくと、追加費用や設計変更が大幅に増えるだけでなく、せっかくのリノベーション計画に遅れや混乱をきたしてしまいます。
だからこそ、最初の段階で「既存不適格であるかどうか」を調べることが重要です。私自身、これまで500棟を超える木造リノベーションに携わってきましたが、既存不適格を知らずに解体工事を始めてから問題が発覚し、“もう少し早く分かっていれば対処策も違ったのに…”という事例をいくつも見てきました。そうならないためにも、法的な履歴や建築確認の状況をリサーチし、必要に応じて専門家の意見を仰ぐのが賢明です。
では、実際にどうやって既存不適格か否かを確認するのでしょうか。以下に代表的なステップを示します。
建築確認申請書や完了検査済証の有無をチェック
建物を建築した当時の確認申請書や検査済証が残っていれば、それが“建設当時は適法だった”証拠となります。そこから現在の法令と照合することで、どの点が不適格に当たるのかを整理できます。
図面と現地実測の突合
古い建物では、当初の設計図と実際の施工が食い違っていることが珍しくありません。増築・改築を繰り返すうちに構造に変更が加えられていたり、隣地境界や道路斜線制限に抵触するような形状になっている可能性もあります。図面と実測を丁寧に突き合わせることで、不整合を洗い出します。
自治体の法規制・都市計画の履歴を調べる
建物が建った後に用途地域の変更や防火地域の拡大があったかどうか、道路幅員の指定が変わったかなどを自治体の窓口や資料で確認します。これによって、現在の基準に照らすと不適格となる部分を把握できます。
専門家による耐震・防火診断
特に木造住宅の場合、耐震診断を行うことで現行耐震基準との差が明らかになります。省エネ診断や劣化調査などを合わせて行えば、防火性能や断熱性能が現行規準より下回っている箇所も見極めやすくなります。
上記の作業は時間とコストがかかるかもしれませんが、事前調査を怠るとリノベーション中に想定外の問題が浮上して“慌てて対処せざるを得ない”状況に陥りやすくなります。安心して工事を進めるためにも、あらかじめ専門家のサポートを受けつつ丁寧に調べることが大切です。
なお、既存不適格と「違法増築」はまったくの別物です。違法増築とは、当初の建築確認と異なる使い方や規模で増改築を行い、現在も違法状態が継続している建物を指します。一方、既存不適格はあくまで“昔は合法だったが今の基準を満たさない”状態であって、法的に即アウトではありません。
ただし、既存不適格の建物に違法増築部分が付随している場合もあり、さらに複雑な問題へと発展することがあります。その場合は違法部分の除却や是正措置を行わなければ、リノベーション全体が進めにくくなる場合もあります。今後の章で、違法増築パターンについても触れますので、合わせてご確認いただければと思います。
2025年法改正によって、確認申請や構造安全性に関する運用が厳しくなることが予想されます。特に既存不適格建築物のリノベーションは、専門家の見立て次第で「大規模修繕や模様替え」とみなされる工事が増え、確認申請や追加補強が避けられなくなる可能性もあるでしょう。
しかし、早めに現状を把握し、適切な計画を立てれば、補助金や助成制度を活用しながら安全・快適な住まいに生まれ変わらせることも十分に可能です。私どもハイウィル株式会社としても、既存不適格建築物の改修を数多く手掛ける中で「調べれば調べるほど事前対策がやりやすい」という実感を得ています。読者の皆さまも、リフォームを計画する際にはぜひ“既存不適格かどうか”を早めに確認し、長期的な視野でライフプランと照らし合わせた最良の選択をしていただきたいと思います。
既存不適格建築物をリフォームする際の基本的な考え方
まずは「既存不適格建築物をリフォームする」とはどういう状況で、なぜ大切なことなのかを解説します。従来であれば、築古住宅であっても「少しずつ補修すれば住み続けられる」と楽観視していた方も少なくありません。しかし実際には、主要構造部の過半を超える改修は「大規模修繕」と見なされ、確認申請や法適合調査が求められる場合があります。特に、4号特例の縮小などにより小規模住宅でも厳しくチェックされる見通しの2025年以降は、リフォーム計画を早めに準備しておくことが、トラブル回避の大きなカギとなります。
法規制の変遷
建物が建てられた当時には適法だったとしても、法改正で耐震基準や防火基準が厳しくなり、今の基準では不足がある状態を“既存不適格”と呼びます。この家をリフォームしようとすると、新築並みの審査が必要になるケースもあるため、追加コストや申請手続きが増える可能性が高いのです。
大規模修繕の判断基準
新築ほどではないにしても、「主要構造部(柱・梁・耐力壁など)の過半を交換・補強するリフォーム」は大規模修繕扱いとなり、建築基準法上の確認申請が求められます。既存不適格部分を補正するために耐震補強などを行う場合、多くの部位に手を入れる必要があり、自然と修繕範囲が“過半以上”になりがちです。
2025年以降の法改正で手続き厳格化
従来なら4号特例(小規模建物に対する簡略化措置)で確認申請不要と見なされていたリフォームでも、改正に伴いより厳しくチェックされる見通しがあります。書類が足りない、建築履歴が曖昧、といった既存不適格あるあるが重なると難易度は一気に上がります。
検査済証・確認済証・台帳・登記簿の優先確認ステップ
検査済証はあるか
もし検査済証があれば、当時の建築計画が完了検査を経て適法に建てられた証です。増改築がなければリフォーム時も比較的手続きがスムーズです。
検査済証がない場合
設計・監理コストの上昇
書類があるほど設計者は既存の情報をベースにリフォーム計画を組めます。しかし書類がないと、構造体がどうなっているかを完全に把握するには部分解体・詳細調査が必須。追加で図面を起こし、構造計算を新たに行うとなれば設計費も高額になります。
施工期間・費用の膨張
解体してみたら想定以上に腐食していた、シロアリ被害が想像以上だった、という“おみくじ”要素が増大します。また、行政とのやり取りや確認検査機関の審査でも質疑応答が多発しがちで、工期が伸びやすいです。
積算の困難さ
現況図面がない、増築履歴不明、台帳や登記簿にも手掛かりなし——そんな状況だと初期段階の見積もりは大ざっぱにならざるを得ず、後から追加工事がどんどん発生するリスクが高くなります。施主が想定を超える費用負担に驚くケースも少なくありません。
施主が行うべき事前準備
まずは「違法増築」が具体的にどういう状況を指すのか、そして既存不適格建築物とどのように関係してくるのかを整理します。違法増築は、当初の建築確認や検査済証といった正式な手続きを行わないまま増築が進められた状態を指し、その背景には住まい手のライフスタイル変化や施工者の知識不足など、さまざまな事情が存在します。本セクションでは、違法増築を放置するリスクと、木造戸建てリフォームにおいてそれがどう影響してくるのかを明確にしてみましょう。
違法増築とは、増築部分が建築基準法や都市計画法などの法令を満たしておらず、また行政庁への届け出も行われていない状態を指します。たとえば以下のような例が典型的です。
ベランダやサンルームの部屋化
洗濯物を干すだけのベランダを壁や窓で囲んで居室化したり、軽量なサンルームを取り付けて収納スペースとして活用する場合です。事前に確認申請を経ていないと、法的には床面積を増やす行為とみなされ、違法状態に陥るケースがあります。
母屋と倉庫をつなげて居室化
敷地内の離れや倉庫を母屋とつなげ、一体の住宅として使い始めるケースです。これも用途や構造が大きく変わる行為であり、増築面積や防火規定・耐震規定を満たさないまま施工されていると、結果的に違法増築状態となります。
屋根裏や地下室の居住化
当初は物置や空間のみを想定していた屋根裏や地下室を、いつの間にか部屋として使用しているケース。一定面積以上になると建築基準法上の「階」にカウントされる可能性があり、法律手続きが必要になります。
これらの行為は、単に手続きを怠っているだけでなく、構造安全性(耐震・耐久性)や防火・避難経路など多面的な問題をはらんでいます。特に木造住宅では、増築部分と既存部分の接合部が弱くなり、地震時に被害が集中する恐れがあります。さらに、建物全体のバランスが崩れると、思わぬ箇所に負荷がかかり、耐用年数が短くなるリスクもあるのです。
既存不適格建築物は、**“当時は適法だったが、後の法改正により現在は基準を満たさなくなった”ケースを指します。一方、違法増築は“そもそも建築確認を受けていないため、最初から法的にグレーかアウトな状態”**という点で大きく異なります。
実際の木造リフォーム現場では、建物全体としては「旧耐震基準で建てられたから既存不適格」の状態にある上で、部分的な増築部分が違法という“二重不適合”が存在することも珍しくありません。この場合、リフォームを通じて耐震性能を高めたり断熱改修を行おうとしても、違法状態のままでは確認申請や補助金活用などに大きな制約が生まれることになります。
法適合調査の複雑化
違法増築部分をどのように是正するか、あるいは撤去するかによって、最終的に確認申請の難易度が変わります。増築分を合法的に活かすためには補強工事や構造計算書の再作成が必要となる場合が多く、結果として費用や手間が大きくなる傾向があります。
補助金・ローンへの影響
違法状態を残したままでは、金融機関からの住宅ローン審査に通りにくい、自治体が設ける補助金制度の対象外になるなど、資金計画にも悪影響を及ぼします。
違法増築をそのまま放置していると、以下のような深刻なリスクが生じます。
安全性が担保できない
適切な補強や構造設計が行われていない増築部分は、地震や強風などの際に最初に被害が出やすい箇所となります。火災時にも壁や窓などの仕様が不明確なため、避難経路を確保できない恐れが高いです。
行政指導や罰則リスク
自治体の建築指導が強化されている昨今、違法増築が発覚すると是正命令や除却指導を受ける可能性があります。特に2025年以降は法改正による審査強化が予想され、リフォームの申請をきっかけに違法増築が明らかになる例も増えると考えられます。
資産価値が下がる
将来的に売却や相続を検討する際、違法増築があると金融機関からのローン融資が受けにくくなるなど、取引上の不利が生じやすくなります。
もし「自宅に増築部分があるけれど、法的にどうなっているか分からない……」という状況ならば、早めに実態を調べ、違法状態であればリフォーム計画の一環として是正を検討することが得策といえます。
違法増築を正しくリフォームするには、まず増築部分がどのような状態で作られ、どの程度の規模なのかを調べる必要があります。木造住宅では、土台や柱・梁などの接合部、基礎の有無、耐力壁や構造金物が適切に設置されているか等、確認すべき項目が多岐にわたります。
図面や登記情報の収集
過去に建築確認を受けた履歴があるか、台帳で検索可能か、あるいは登記簿で把握できるかなどを調べます。もし何も情報がなければ、新築同様の構造計算や耐震診断を行い、設計士が図面を起こす必要が出てきます。
部分解体を伴う現地調査
実際に壁を一部解体して内側の骨組みを確認し、無許可で増築された部分がどのような材料や工法で施工されているかを見極めるのが大切です。
法適合調査によるフローチャート
こうしたフローチャートを辿りながら、違法増築の程度を把握し、適法化に必要な補強や撤去の範囲を定めるのが基本方針です。
実務では、以下の二つの選択肢を検討します。
撤去・縮小
増築面積が小規模で、構造安全性を確保するのが困難な場合、思い切って撤去してしまうのが得策なケースがあります。撤去によって建物全体のバランスを回復し、新たな増築計画とあわせて改めて確認申請を行えば、法的にクリーンな状態を得やすいです。ただし、居住空間が狭まる、生活導線が変わるなど施主の意図に沿わない点が出る場合もあるため、メリット・デメリットを検討のうえ決定することが重要です。
合法化に向けた補強・改修
増築部分の構造が比較的しっかりしており、防火規定や隣地境界距離などもクリアできそうな場合は、補強工事による合法化を目指します。具体的には、足りない耐力壁を追加する、基礎を新設または補強する、防火サッシや耐火部材を使って地域規制に合わせる、といった手間を惜しまないことで、増築部分を活かしつつ法適合化できる可能性があります。
どちらの方法を選ぶかは、最終的には費用対効果と住み手の要望、そして建物全体の安全性で判断します。大がかりな補強工事はコストが膨張しがちですが、撤去にも解体費やその後のプラン変更コストが伴うため、専門家と入念なシミュレーションを行うことが必要です。
違法増築を適法化するためには、最終的に大規模修繕・模様替え扱いとなる可能性が高く、下記のプロセスで確認申請を進めるのが一般的です。
設計事務所による計画立案
現地調査結果と施主の希望を踏まえ、増築部分を撤去するか補強するかを含めたリフォームプランを作成します。ここで耐震・断熱も一括で見直す場合、補助金制度の活用が可能かどうかも検討します。
法適合調査・構造計算
増築部分も含めて、現行の建築基準法で求められる耐震性能・防火性能を満たせるよう、必要な構造計算や設計書を用意します。台帳や登記情報を照合し、既存建物の履歴を再評価する工程が増えれば増えるほど、設計期間や費用がかさんでいく点には注意が必要です。
確認申請提出・審査
必要書類(平面図・立面図・構造計算書など)が整い次第、役所または指定確認検査機関に申請を行います。違法増築部分の是正方法を含め、適法化計画として認められるかどうかが審査対象となります。質疑応答や修正が繰り返され、合意に至れば確認済証が交付されるという流れです。
解体・補強工事・完了検査
承認後は実際の工事に着手し、増築部分の解体や補強、ほか耐震・断熱改修などを行います。工事が終われば完了検査を受け、合格すれば晴れて“増築部分を含めて適法”な状態で建物が仕上がるわけです。
このプロセスは想像以上に時間と費用が必要となりやすく、予算計画を怠ると後から資金ショートを起こすリスクも否定できません。だからこそ、早期から違法増築の可能性を調査し、段階的に対策を検討していくことが肝要です。
これまでは、小規模な木造住宅であれば確認申請不要なリフォームも多かったのが実情です。しかし、2025年以降は4号特例の適用範囲が狭まり、“規模の小さいリフォーム”でも構造に手を入れれば「大規模修繕や模様替え」とみなされ、確認申請を要する可能性が高まります。
違法増築が絡む場合は、そもそも建物全体の法的整合性が曖昧であるため、部分的な改修でも行政審査時に「増築部分が違法状態ではないか」とチェックされるリスクが大です。結果としてリフォームを大幅に見直さざるを得なくなり、着工が遅れたり予算超過に陥ったりするケースが増えるでしょう。
もし読者の方が「違法増築かもしれない箇所があるが、特に大きな不具合は起きていないから大丈夫では?」と感じているなら、今のうちに実態を確認しておくのが賢明です。法改正直前や直後に慌てて調査・補強を始めても、行政窓口や施工業者が混雑しておりスムーズに進められない場合が考えられます。早期に建物の状態を把握し、計画的に資金やスケジュールを確保することで、メリットは大きく分けて以下の三つあります。
違法増築というテーマだけでもリフォームのハードルは高いのに、同時に既存不適格(旧耐震基準や用途変更など)を抱えている建物は少なくありません。こうした“二重三重のハードル”を乗り越えて理想の住まいを実現するには、以下の点を意識しておくとよいでしょう。
これまでは、延床面積が小規模な木造住宅(2階建て以下、一定の延床面積制限内など)については、建築確認や構造計算を大幅に簡略化できる「4号特例」が適用されるケースが多くありました。リフォームでも、主要構造部に大幅な変更がなければ、事実上確認申請は不要とされることもしばしばでした。法改正後は、この4号特例の適用範囲が狭まり、たとえば耐震補強や外壁・屋根の過半を交換するような大規模修繕が計画されると、申請が必要になります。結果的に、既存不適格を抱える建物ほど、法適合調査や追加補強の要件が厳しく問われることになるでしょう。現行でも、「主要構造部の過半を超える修繕」は大規模修繕とみなされ、確認申請が必要です。2025年以降は、その線引きがより厳密化されます。
既存不適格部分をリフォームの機会に是正しようとすると、主要構造部への大幅な介入が避けられません。それが“大規模修繕”と見なされれば、確認申請や構造計算が必要になり、旧耐震基準や防火・衛生設備の適合状況などを広範囲に見直すことが迫られます。
既存建物が現行の建築基準法や都市計画法、防火規定などに照らしてどの程度適合しているかを確認するのが法適合調査です。特に2025年以降、従来は曖昧に扱われていた小規模リフォームでも、構造に影響が及ぶなら法適合調査が求められるシーンが増えそうです。
調査項目
- 構造安全性(耐震診断、腐食やシロアリ被害の有無)
- 防火性能(外壁材や開口部の耐火仕様、延焼ライン)
- 検査済証や確認済証、台帳の有無など書類面
①検査済証があるか
約5%程度しか残っていないと言われる検査済証ですが、もし存在すれば比較的スムーズに法適合化が進められます。増改築がなければ、当時の適法性が証明されているからです。
②検査済証がない場合(A:確認済証はあるか)
検査済証こそないものの、確認済証があれば当時の建築計画が行政の審査を経ていたことが分かります。増改築分や現況が当初計画と大きく異なる場合は追加補正が必要となりますが、完全にゼロからのスタートよりはハードルが低いです。
②-1 B:確認済証もないが、特定行政庁の台帳で確認できるか
役所が保管している建築確認台帳に情報があれば、一部でも履歴を辿れる可能性があります。台帳に記録が全く残っていないと、さらに難易度が上がります。
②-2 C:法務局の登記簿で確認できるか
建物登記に増改築の記録があれば、それを手掛かりに現況調査を行い、当時の規模や用途を推定できます。しかし、登記すらしていない無届け増築だと法務局にも情報がなく、最終的に「一切書類がない」状態に陥ります。
◎A,B,Cすべてないなら…
新築同等に構造計算を作成し、現行基準との整合を図るしかありません。確認申請の難易度も施工費もぐんと上がるため、予算と工期の圧迫は避けられないといえます。
書類が整っている場合
検査済証や確認済証が揃っているほど、設計者は既存部分の法適合性を確認しやすく、大規模修繕の計画も立てやすくなります。施工者も解体後の“想定外”が少なく、結果的に工期やコストをコントロールしやすいです。
書類不備や無届け増築の場合
反対に、まったく書類がない建物や違法増築部分がある建物では、設計・施工の双方においてリスクが増大します。解体してみないと構造体の詳細が不明で、追加補強が必要となるシナリオが多発するため、積算(見積もり)を高めに設定しないと赤字になりかねません。施工レベルとしても、柱や梁の交換・基礎の新設など高度な技術と管理が求められ、工期が長くなる傾向です。
既存不適格建築物をリノベーションによって“適法な状態”に近づける手順を、実務ベースで解説します。具体的には「法適合調査」「構造補強計画の立案」「確認申請の要否判断」「施工と検査」という流れを示しながら、施主の視点ではどこに気を配るべきか、どのように専門家とやり取りすればよいのかをみていきましょう。
背景
昭和50年代に建てられた木造住宅。書類は確認済証しかなく、検査済証はなし。さらには増築を繰り返していたため、建物全体が旧耐震基準のまま増築されており安全面が不安視されていた。
進め方
成果
家の耐震等級を2相当まで引き上げ、夏は涼しく冬は暖かい住環境を実現。補助金も活用して費用を一部カバーしたことで、施主の負担を最小限に抑えられた。
背景
戦前に建てられた古民家で、増改築や改修の履歴書類がほぼゼロ。用途地域が変わり、防火規制も強化されて既存不適格状態となっていた。
進め方
成果
伝統的な梁や建具を活かしながら、現行基準レベルの耐震性を確保。検査済証はなかったが、完了検査で適法性を承認され、文化的価値と機能性を両立する住まいに再生できた。
既存不適格建築物だからといって、必ずしも建て替えしか選択肢がないわけではありません。むしろ、リノベーションによって耐震や断熱性能を大きく向上させながら、家の歴史や思い出を引き継ぐという選択は、木造戸建てならではの醍醐味といえるでしょう。たしかに手続きや調査が煩雑になりがちですが、適切な情報収集と専門家の力を借りれば、2025年法改正後も安心して暮らせる住まいを実現できるはずです。
既存不適格建築物が住宅ローンやリフォームローンにおいてどのような扱いを受けやすいか、その背景や金融機関の視点を整理します。建物の安全性や資産価値を重視する金融機関にとって、既存不適格の状態は融資リスクが高いと捉えられがちです。ここでは、審査の概要や厳しくなるケースを紹介し、読者が事前に理解しておくべきポイントを提示します。
担保価値の問題
住宅ローンは建物や土地を担保として融資する仕組みです。既存不適格部分があると、法的整合性を満たさないままでは建物の価値が正しく評価されにくく、金融機関が融資を渋る要因となります。
構造安全性への疑義
検査済証がない、確認済証すら不明、登記情報も曖昧、といった状況では、地震や火災などのリスクに対して安全性が確保されているかどうか不透明です。リフォーム計画で耐震補強を行うといっても、金融機関からすれば実際にどこまで改善されるか判断しづらいのです。
再販リスクや流動性の低下
万が一ローン返済が滞った際、金融機関は抵当権を行使して物件を売却する可能性があります。しかし、違法増築などが含まれる物件は買い手がつきにくく、売却がスムーズに進まないリスクが高いと見られがちです。
「既存不適格であっても、どのようなステップを踏めば住宅ローンが利用可能になるか」をここでは整理してみましょう。法適合化とは、建物を現行基準にできるだけ近づけることを指しますが、そのプロセスで検査済証や確認申請などが大きな意味をもちます。ここでは、書類不足の場合にどう動けばよいか、どのタイミングで金融機関と相談すればいいかをステップごとに提示します。
書類の確認(検査済証・確認済証・台帳・登記簿)
まずは物件情報を最大限に収集します。前章でも述べたとおり、上から順に書類を探し、ない場合は台帳や登記情報を調べる。すべてなければ構造計算や解体調査が必要になるため、金融機関へもその点を事前に説明できるようにしておきましょう。
耐震・断熱・防火などの改修計画
リフォームプランを具体化する際、耐震補強などの構造的安全性を高める工事を明確に盛り込むことで、金融機関が「このリフォームで担保価値が向上する」と判断しやすくなります。特に、計算書や設計図面の段階で数値化できると、審査でのアピールにつながります。
見積書の作成
建築士や施工業者と連携して、改修内容と費用の明細をまとめます。ここに法適合化にかかるコストも含めておき、融資希望金額を正しく設定しましょう。
事前相談が有効
リフォームローンや住宅ローンを扱う金融機関に、早い段階で「既存不適格建築物を法適合化しながらリフォームする」旨を伝え、プラン概要や予定スケジュールを相談します。
審査に必要な書類
審査期間と余裕の確保
法適合調査が必要な物件ほど審査が長引く可能性が大きいです。質疑応答で追加書類を求められるケースも多いため、希望の着工時期から逆算して、2~3ヶ月程度の余裕を見込むとよいでしょう。
ここでは、実際に既存不適格建築物を法適合化しながらリフォームし、住宅ローンを利用できた成功事例を紹介します。
築40年・検査済証なし・耐震不安な家をリフォーム
事例概要
昭和50年代に建てられた木造2階建て。検査済証はなく、台帳にも一部情報しか残っていない状況。耐震診断で大きな補強が必要と判明し、施主が住宅ローンを利用して改修を行いたいと希望。
行ったステップ
結果・メリット
リフォーム後に耐震等級2相当の性能を確保。冷暖房費が大幅に削減できる住環境となり、資産価値も向上。将来の売却可能性を見据えて検査済証相当の記録が得られたことで、金融機関の不安要素を解消。
事例概要
築30年の木造戸建て。途中で増築したキッチンやリビング部分が台帳に反映されておらず、法務局の登記情報とも異なるため、既存不適格状態と推定。施主は子育て世帯で予算限られ、しかしフラット35利用を希望。
行ったステップ
結果・メリット
フラット35Sの審査をクリアし、金利優遇を適用。将来的に賃貸や売却などの選択肢も広がり、違法増築が残っていたころより遥かに担保価値が上昇。
アクションリスト:失敗を避けるために
ここでは、既存不適格建築物が抱える“法的リスク”について、具体的な事例とともに解説します。木造戸建てをリノベーションしようと考えるとき、既存不適格であるかないかを「大した問題ではない」と軽視してしまう方もいらっしゃるかもしれません。ところが、建て替え・リフォーム・用途変更などを行う際に法適合調査を受けると、思わぬ違法増築や確認済証・検査済証の不備が露見し、結果として高額な追加費用や行政指導を招くリスクが存在します。本章を通じて、読者は既存不適格にまつわる法的トラブルがどのように発生しうるか、どのように回避すればよいかを理解し、法改正後に備えましょう。
ここではセクションでは、既存不適格のまま、あるいは違法増築を含んだ状態を放置して住み続けることが、どれほど大きなリスクをはらんでいるかを解説します。とくに、自治体の建築指導強化や周辺環境の変化によって、突然行政から是正を求められるケースもあります。さらに、災害時の被害拡大や、売却・相続時のトラブルなど、住まいの安全と財産保全の両面で、無視できないリスクを抱えることを知っていただくのが目的です。
違法増築や無届け改修が発覚するケース
リフォームや売却のタイミングで確認申請を提出した際に、旧増築部分の履歴がない、法適合調査で図面と現況が大きく異なるなどが発覚することがあります。その時点で違法状態だとわかれば、自治体から「除却」「是正」「改修」などの指導・命令が出される可能性があります。
罰則や税制面での不利益
行政指導を無視して違法状態を続けると、是正勧告を経て罰則が適用される場合もあり得ます。さらに固定資産税の課税対象が不明確になるといったトラブルも起きかねません。結果的に余計な費用を払わなければならなくなるなど、金銭的デメリットにつながることがあります。
2025年以降の強化動向
2025年法改正により、4号特例の縮小や大規模修繕の定義厳格化が進むことで、これまで見過ごされてきた“小規模違法状態”も顕在化しやすくなります。行政による取り締まりも強化される可能性が高いため、早めに現状を把握し、法適合化を検討する必要があります。
ここでは、既存不適格建築物を保有している方が将来「売却」や「相続」を検討する際に生じるリスクを解説します。木造住宅に多い、増改築の履歴が不明・検査済証なしといった状態で物件を売りに出すと、買い手がつきにくい、ローン審査が通らないなどの不利益に直面しがちです。同時に、相続財産として子世代に引き継ぐ場合も、違法状態を放置しておくと後々大きな揉め事になる可能性があります。
担保価値の低下
不動産取引において、既存不適格のままだと「再建築不可」に近い印象を与え、買い手が敬遠しがちです。金融機関の住宅ローンが下りにくい物件と判断されるため、現金買いを余儀なくされる買主しか現れないことも少なくありません。自然と売却価格が大幅に下がるか、売却までの時間が延びてしまいます。
契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)への懸念
リフォーム歴や違法増築部分を正確に開示せずに売却した場合、後から契約不適合責任を問われて補償や修繕費用を負担しなければならないリスクがあります。特に法的に不完全な状態を隠していたとなると、買主との法的トラブルが深刻化する可能性が高いです。
将来的な再建築に対する疑念
買主は、「この家を取り壊して新築を建てられるのか?」という点も気にします。用途地域や接道義務、建ぺい率・容積率の面で不利になる既存不適格物件だと、買主が敬遠する理由が増えるのは当然です。
法的不備を抱えたまま引き継ぐ
親世代から子世代への相続の時点で、建物が違法増築や書類不備を抱えていると、相続人が後にリフォームをしようとしても申請や手続きが難航します。法適合調査や構造補強をあらかじめ行っておくほうが、相続後の負担を減らせます。
兄弟間トラブル
複数の相続人がいる場合、建物の評価額をめぐって争いが起きやすいです。既存不適格による価値低減をどのように算定するかで見解の相違が生まれることもあるため、専門家を交えて現況を早期に把握する必要があります。
登記情報との齟齬
増改築を重ねた物件では、登記簿上の面積や構造が実際と異なる場合がよくあります。相続時に正確な登記をし直さないと、後々の売却や用途変更がさらに複雑化するでしょう。
ここでは、2025年法改正によって既存不適格建築物の扱いがどう変わるか、そしてリフォームや建て替えをしないまま放置してしまうとどのような追加リスクが高まるかを説明します。一方で、早めに書類を整え、専門家と相談して法適合化の方向性を決めれば、災害時の安全確保や資産価値維持などのメリットを得られる可能性もあります。
法改正で4号特例縮小による取り締まり強化
小規模住宅でも“見逃し”されにくくなる
従来は「4号特例だから確認申請不要」と判断されていた規模のリフォームも、改正後は大規模修繕扱いになる場合が増えます。自治体が許可を与える段階で、既存不適格の有無を厳しく問われるでしょう。
違法増築の摘発リスク
書類や台帳で増築履歴を辿れない家ほど、申請時に違法状態が発覚しやすくなります。放置していると行政から是正指導を受けるばかりか、補助金・融資などが受けられなくなる懸念も大きいです。
早めに法適合調査を行う
検査済証・確認済証・台帳・登記情報などを確認し、書類不足の場合は解体調査や構造診断で安全性を把握しておきます。住宅ローンや売却計画を視野に入れている方は、特にスピード感が肝心です。
専門家との連携強化
違法増築や既存不適格を適法化する際は、設計士・施工会社・司法書士などの連携が必要です。4号特例縮小後の確認申請に強い専門家を選ぶことで、法的リスクを最小限に抑えながらリフォームを進められます。
大規模修繕と同時に耐震・断熱性能を向上
どうせ手を入れるなら、家全体の安全性や快適性を高めることを検討しましょう。補助金や減税措置も活用しやすくなり、結果的に資産価値が大幅にアップする可能性があります。
物件情報を徹底的に調査
検査済証や確認済証の有無をチェックし、なければ台帳や登記情報を探しに行く。そこで得られた情報が少ないほど、追加の解体調査や構造計算が必要になる可能性が高まります。
違法増築の有無を確認
もし増築部分が書類に載っていない、台帳に反映されていない場合は要注意。今後のリフォームや売却で“発覚”して慌てないよう、専門家と相談して対策を講じましょう。
リフォーム・建て替えの方針を決める
法的リスクや補強費用が大きければ、いっそ建て替えを選ぶのも手段の一つ。逆に部分的な補強だけで適法性を確保できるなら、リノベーションで住み慣れた家を活かすメリットが大きいです。
行政や金融機関への早期相談
大規模修繕や用途変更の可能性があるなら、確認申請や住宅ローン審査で躓かないよう、事前に相談しておくと安心。4号特例縮小後は混雑が予想されるため、スケジュールにも余裕を持ちましょう。
既存不適格建築物は、そのまま放置すると行政指導や売却不能、災害時の危険増大など、さまざまな法的リスクを背負うことになります。しかし、法適合調査や適切なリフォーム(あるいは建て替え)計画によって、安全性と資産価値を大きく引き上げることも可能です。2025年法改正後は4号特例の縮小などで取り締まりが厳しくなると予想されるため、今回ご紹介したステップを参考に、「いまのうちから情報収集と手続きを始めておく」ことを強くおすすめします。
まずは、既存不適格建築物において用途変更がなぜ重大な問題になりやすいのかを、大きく二つの観点から整理します。ひとつは「法規制の違い」、もうひとつは「構造・設備要件の違い」です。木造戸建てを単なる住居から事務所や店舗に変えると、火災対策や排煙設備、バリアフリー基準などが適用され、既存不適格な部分がさらに顕在化しやすくなります。
防火・耐火要件
住宅としての利用と、店舗や事務所としての利用では、防火区画や消火設備の基準が変わってきます。例えば、飲食店へ用途変更する場合は調理設備や排気ダクトの防火性能が厳しく問われます。既存不適格な建物は、外壁や開口部に適切な防火仕様が備わっていないことが多く、用途変更に合わせて改修が必要となる場合が多いです。
避難経路・バリアフリー
店舗や事務所となると、不特定多数が出入りする可能性があるため、通路幅や出入口数、非常口表示などの基準が強化されます。既存の狭い階段や老朽化した廊下では用途変更が許可されないおそれがあり、増築や改修が不可欠となるケースもあります。
構造計算・耐震性能
用途が変われば建物にかかる荷重や必要な耐力壁量の考え方が変わる場合があります。例えば、客席数が増える店舗などでは人の密度が増すため、床荷重に対する安全性を確認しなければなりません。既存不適格のままだと、耐震診断で大きな不足が見つかるケースが多いです。
具体的に用途変更を行う際の手続きの流れと、既存不適格状態を解消するための法適合調査がどのように進むかを解説します。建築基準法では「用途変更が大規模修繕・模様替えに準ずる行為」と見なされる場合があり、確認申請が必要となることがあります。特に2025年以降は厳格化が予想されるため、書類不備や構造不備を放置しておくリスクがますます高まります。
用途区分が変わるとき
住宅から事務所、あるいは住宅から店舗など、建物の用途区分が明確に変わる場合は、建築基準法上の用途変更として扱われます。面積要件(増築・改修面積など)も絡んでくるため、最終的に新築並みの審査が行われる可能性があります。
大規模修繕・模様替えに該当するリフォームを伴う場合
単なる模様替えであっても、主要構造部を過半にわたり改修するような規模ならば確認申請が必要です。用途変更のために内部を大きく改造する場合、ほとんどが大規模修繕扱いになると考えたほうがよいでしょう。
構造補強や火災対策が求められる規模
客席数や就業人数が増えるなど、用途変更による性能要件の変化が大きいと、防火区画や避難経路などを新設する必要があります。これらも大規模修繕にあたる場合が多く、結果として確認申請が不可避となります。
ここでは、用途変更の手続きを怠ったまま営業を始める、あるいは法定基準を満たしていない状態で店舗や事務所として使用した場合に想定されるリスクを具体的に提示します。加えて、どう対策すれば円滑に確認申請や補助金利用ができるかを示します。読者が法的トラブルを避けながら、新しい用途で建物を利用できるように導くのが狙いです。
行政指導・営業停止命令
無届で住宅から店舗に転用した場合、消防法や建築基準法違反が発覚すれば是正命令の対象となり、営業停止を余儀なくされる場合があります。特に飲食店などは保健所の審査も絡み、違反状態では営業許可が取得できません。
近隣との騒音・環境トラブル
住宅街に店舗を構えた結果、騒音や駐車問題で近隣住民とトラブルになることが少なくありません。法的に用途変更が認められていないと、損害賠償請求を受けるリスクも高まります。
保険や賠償責任の不備
店舗で事故が起きて損害賠償が発生した場合、そもそも住宅用にしか保険を掛けていなければカバーされない可能性が大きいです。結果として自己負担が膨れ上がり、経営を続けられなくなる事態も考えられます。
事前の行政相談
用途地域や防火地域などの制限をチェックし、用途変更が可能かどうかを役所の建築指導課などに相談します。特に既存不適格部分をどう処理するか、法的に確認申請が必要かどうかを早めに把握しましょう。
専門家によるリノベーション計画
用途変更に伴う耐震・防火・衛生面の要件をまとめ、設計士や施工業者と一緒にリノベーションを計画します。大規模修繕扱いとなれば確認申請が求められるため、構造計算などの準備も怠らないことが重要です。
補助金・融資の活用
店舗や事務所への転用で地域活性化に繋がる事業など、自治体によっては補助金制度が設置されている場合もあります。ただし、既存不適格を適法化する必要があるなど、要件を満たさなければ補助対象外となるので注意が必要です。
ここでは、既存不適格建築物をリフォームする際に不可欠な「確認申請」との関係について詳しく解説します。新築とは異なり、既存建物の場合は「検査済証がない」「確認済証すら見当たらない」などの実務的なハードルが多々存在します。とりわけ、築年数の長い木造戸建てだと書類が散逸しているケースも多く、手続きを進めるうえでどうしても不確定要素が増えるものです。この解説をお読みいただき皆さまは「確認申請が必要となる場面」「書類がない場合にどのような方法で適法性を確認するか」「難易度が上がると工事費や工期にもどう影響してくるか」といったポイントを把握できるようになります。
2025年の法改正を見据えた既存不適格建築物の対処法を多角的に取り上げていますが、ここでは「確認申請」という手続き的な側面に焦点を当て、具体的な手順やハードルを明らかにすることを目的とします。特に、検査済証や確認済証がない建物をどう扱うのか、書類の有無によって確認申請の難易度がどのように変わるのか――これらを把握することで、リフォーム計画を立てる際の不安を軽減し、失敗を回避する道筋を提示するのが本章の使命です。
ここでは、既存不適格建築物がどのような場合に確認申請を要し、またどのようなプロセスを経て適法性を証明するのかを整理します。既存不適格だからといって常に確認申請が必要になるわけではありませんが、大規模修繕や模様替えに該当すると判断される改修の場合、あるいは法適合化を図るために構造補強や増減築を行う場合には手続きが避けられません。「どの程度のリフォームなら確認申請が必要か」「手続きを回避してはいけない理由は何か」という疑問を解消できれば幸いです。
木造戸建てのリフォームにおいて、確認申請が求められるかどうかは「大規模修繕や模様替え」に該当するか否かで判断されます。具体的には、外壁・屋根など主要構造部の過半にわたって改修する場合や、耐震補強のために壁や梁を大きく交換する場合には「大規模修繕」とみなされ、結果として確認申請を要する可能性が高まります。
さらに、既存不適格建築物が含む“違法増築”や“未申請増築”を合法化する場合、新たに建築確認(および必要であれば完了検査)を経るのが原則です。こうした背景から、リフォームの規模が大きくなるほど確認申請の有無が重要な論点となり、特に「既存不適格をそのまま放置しないで直す」ような計画では、確認申請が事実上不可避となることもしばしばです。
一般的に、建物が建てられた当時に交付された検査済証が存在するかどうかで、リフォーム時の手続き難易度は大きく変わります。新築住宅は完成後に完了検査を受け、合格すれば検査済証が発行されるのですが、昭和・平成初期の木造住宅では「検査済証がない」ケースが非常に多いのが実情です。
さらに、検査済証だけでなく確認済証(建築確認の許可がおりた段階で交付される書類)も見当たらないという場合も珍しくありません。書類の有無を判断する際には、下記の優先度で確認していくことが重要です。
これらのうち、上から下に行くほど「手続き難易度が増し、確認申請や法適合調査を行う際の負担が大きくなる」ことを理解しておく必要があります。
2025年4月以降4号特例(小規模建物に関する簡略化措置)の縮小など、建築確認制度が厳格化される方向です。これにより、現在は書類が不十分でも黙認されてきたリフォーム計画が、法改正後は確認申請を義務づけられる事態も想定されます。
特に既存不適格建築物の場合、耐震補強や断熱改修をまとめて行う大規模リノベーションが多いため、どうしても「大規模修繕や模様替え」の範囲に引っかかりやすくなります。そうなると法適合性を証明するために検査済証や確認済証の有無が問われ、書類がそろわないなら追加の構造調査や行政との協議が必要になるわけです。結果的に工期が長引き、コストも増大する可能性があるため、早めに検討を始めることが重要です。
ここでは「検査済証がない」「確認済証すら見当たらない」という状態でもリフォームを進めるためにはどうすればよいのか、具体的なプロセスを紹介します。さらに、法務局の登記簿や特定行政庁の台帳を用いて建物の履歴を追跡する方法、書類がいずれも存在しないケースでの最終的な対処法などを詳説します。このセクションを読むことで、読者の皆さまは「書類が何もないけどリフォームを諦めなければならないのか?」という疑問に対する実践的な回答を得られるはずです。
結論から言えば、「書類がないから確認申請できない」というわけではありません。しかし、書類がそろっていない場合には、建物が法的にどのような位置づけで建てられたものかを“改めて証明”する手続きが必要になります。一般的には以下の流れとなります。
行政庁や法務局で履歴を検索
現地調査と構造評価
法適合調査を踏まえた補強計画
冒頭でも触れたとおり、書類確認は「検査済証」があるかどうかから始まります。検査済証があれば、新築時点で完了検査を受けているため、基本的には当時の法令をクリアしている証拠となります。さらに改修内容が大規模修繕に該当しても、既存部分については“既存不適格扱い”として改修範囲のみに集中すればよい場合が多く、手続きは比較的スムーズです。
次に「検査済証はないが確認済証ならある」というケースです。これは建築確認は下りているが、竣工時の完了検査を受けずに建物が引き渡されてしまった可能性が高い状態です。当時の図面や申請内容と現況に乖離がなければ、改修計画時にある程度参考にできますが、増改築が積み重ねられていると、その整合性を精査しなければなりません。やはり部分解体や現地調査を通じて、当初計画との違いを洗い出す作業が不可欠です。
確認済証すら手元になくとも、特定行政庁の台帳に建築確認履歴が残っている場合は、そこから何らかの情報を得られる可能性があります。例えば、建物がどのような用途地域や斜線制限を想定して許可されたのか、建物規模や構造種別はどうなっていたのか、といった基本情報が判明すれば、新たに確認申請を行う際のベース資料にできます。
最後に、最も難易度が高い「法務局の登記簿にも特定行政庁の台帳にも記録がない」場合です。このような状態だと、建物が最初から無届けで建てられたか、あるいは書類が紛失してしまった可能性があります。この場合には、新築同様に構造計算書を作成し、現行基準との整合性を図る方向で確認申請を行う手段しか残されないことも多いです。あるいは“違法増築部分を撤去し、残った部分を改めて評価する”といった大掛かりな作業が必要になるケースもあります。
ここでは、書類の有無や法適合調査の結果によって「確認申請の難易度」がどのように変わり、それが施工費用(積算)や工期、施工レベルにどれだけ影響を与えるかを解説します。読者はここを読むことで「書類がまったくない物件だと、どの程度の追加負担が発生するのか」「いつから設計事務所に相談すればいいのか」など、実践的な判断材料を得られるでしょう。
当然ながら、検査済証や確認済証がそろっているほどリフォーム計画はスムーズに進みます。新築時のプランと現況に大きな差がなければ、図面をもとに構造補強や断熱改修の検討を行いやすく、大規模修繕の申請手続きも比較的シンプルです。施工段階でも解体後の“想定外”が少なく、工期やコストも抑えられるメリットがあります。
一方、まったく書類がない場合や台帳記録しか残っていないケースでは、新たに設計士が現地調査を重ね、構造計算や図面起こしからスタートする必要があります。解体時には、柱や梁、接合金物などを詳細にチェックして“本当にこの家は安全か”を改めて検証し、そのうえで追加補強のプランを立案することになるため、設計監理費や施工費がどうしても高額になります。
また、行政庁との協議や確認検査機関への申請も一筋縄ではいかず、質疑応答の応酬や書類修正が発生しやすいため、工期に余裕を持たないとリフォーム全体のスケジュールが崩れてしまうリスクが高いです。
一般的に、下記のようなフローチャートで確認申請の難易度をイメージできます。
下に行くほど設計労力や協議の回数が増え、施工範囲も広がる傾向があります。つまり、積算レベルでは大きく上振れし、施工レベルも一段高い技術と管理が求められることを理解しておくとよいでしょう。
2025年以降、建築基準法の改正が進むにつれて「確認申請が必要になるリフォーム」が増える可能性が指摘されています。したがって、書類不足のままリフォーム計画をスタートすると、余計に行政手続きで苦労し、さらにコストがかさむリスクが高まるでしょう。
逆に、早めに書類を調べて確認申請の必要性を把握しておけば、自治体の補助金や減税制度を活用しながら安全・快適な住まいへの改修を進められる場合もあります。法適合調査で手間がかかったとしても、その結果“しっかりと現行基準を満たしたリフォーム”として後々のトラブルを回避できるので、長期的に見れば賢明な投資だといえます。
わかりにくい建築基準法改正後の対応も下記を読むことで理解が深まります。
法改正後のフルリフォームは申請が必須となります。しかし申請ができない方からの相談も数多く寄せられています。
戸建てフルリノベーション実績500棟を超える経験値、リフォームでの申請実績屈指の増改築comが申請をせずに性能向上を図る『3つのフルリフォーム』を例に徹底解説
■全国の性能向上リノベーション『ピックアップ事例』※プロの詳細解説付きレポート
増改築com@運営会社
ハイウィル株式会社 四代目社長
1976年生まれ 東京都出身。
【経歴】
家業(現ハイウィル)が創業大正8年の老舗瓦屋だった為、幼少よりたくさんの職人に囲まれて育つ。
中学生の頃、アルバイトで瓦の荷揚げを毎日していて祖父の職人としての生き方に感銘を受ける。 日本大学法学部法律学科法職課程を経て、大手ディベロッパーでの不動産販売営業に従事。
この時の仕事環境とスキルが人生の転機に。 TVCMでの華やかな会社イメージとは裏腹に、当たり前に灰皿や拳が飛んでくるような職場の中、東京営業本部約170名中、営業成績6期連続1位の座を譲ることなく退社。ここで営業力の基礎を徹底的に養うことになる。
その後、代議士秘書を経て、代々家業となっている工務店(現在のハイウィル)に入社。 平日は棟梁の弟子として、週末は大工学校の生徒としての生活が始まる。 このとき棟梁の厳しい躾けのもと建築を一から叩き込まれることになる。 建築現場の施工管理に従事。また職人に対する躾もこのときに学ぶ。 主に木造改築に従事し、100棟以上の木造フルリフォームを職人として施工、管理者として管理。
幼い頃からの祖父の教えにあった 「住まいはお客様のためのものであり、我々の自己満足的な作品であってはならない。作品とはお客様の生き方に触れ、共感することで初めて形となる」 という教訓を礎に、家業である会社を一度離れ、独立を決意。 2003年5月フルリフォーム・リノベーション専業会社株式会社リブウェルを設立。代表取締役に就任。 旧耐震基準の建物の性能価値をローコストでバリューアップする提案に特化したサロン 「ドゥ・スタジオ」を練馬区にオープン。木造フルリフォーム事業を本格的させる。 旧態依然の不透明だらけの住宅産業に疑問を持ち、特に費用ウェイトの高い”ハコモノ”と呼ばれるキッチン・バスなど定価があるものをすべて分離して安い会社から自由に購入できる施主支給システムを日本で初めて提案。「住設・建材百貨店」にて販売を開始する。
2003年年に業界内に「施主支給」というキーワードを公開し一大センセーショナルを業界に巻き起こす。 耐震性能と断熱性能を現行の新築の最高水準でバリューアップさせる性能向上リノベーションを150棟、営業、施工管理に従事。
2008年設立時に推進していた戸建フルリフォーム事業、建材卸売事業のコア事業を家業であるハイウィル株式会社へ業務移管後、 4代目代表取締役に就任。 株式会社リブウェルでは全国の中小建築会社へのwebマーケティング支援事業を本格化。 自身の創業したリブウェルを部下に譲りハイウィル1社に集中することを決意。250棟の性能向上リノベーションの営業、施工管理に従事。
2015年旧耐震住宅の「耐震等級3」への推進、「断熱等級5以上」への推進を目指し、 自身の500棟を超える木造性能向上リノベーション経験の集大成として、日本初の木造性能向上リノベーションオウンドメディア 「増改築com®」をオープン。本社を日暮里へ移転。
2019年創業100周年、全国工務店向けのセミナー講師を務め、日本の住宅の耐震強化の普及活動を開始。
2020年「増改築com®」に全国から寄せられる相談に応えるべく、「増改築.com®」の全国展開の準備活動を開始。
【現在の活動状況】
ハイウィルでの木造フルリフォームの担当者として現場で汗を流しつつ、全国の技術優位の中小工務店との共生ネットワーク構築のため、全国を飛び回り技術優位の企業に対する協力体制の構築、支援に全力を注いでいる。
戸建てリノベーションの専属スタッフが担当致します。
一戸建て家のリフォームに関することを
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あなたの大切なお住まいに関するご相談をお待ちしております。
営業マンはおりませんので、しつこい営業等も一切ございません。
※設計会社(建築家様)・同業の建築会社様のご相談につきましては、プランと共にご指定のIw値及びUa値等の性能値の目安もお願い申し上げます。
※現在大変込み合っております。ご提案までに大変お時間がかかっております。ご了承のほどお願い申し上げます。
2025年(令和7年)4月1日より建築基準法改正が施行されました。現在大変混みあっております。
お問い合わせ・ご相談多数のため、ご返信、プランのご提案までに日数を頂いております。ご了承の程お願い申し上げます。
改正後の新法では、4号特例措置が廃止され、一般住宅の多くの建物である2階建て以下かつ200平方メートル以下の建築物は2号となり、大規模修繕・大規模模様替えを行う場合には、建築確認申請が必要となります。
大規模修繕や大規模模様替えを行う場合、
つまり、主要構造部(壁、柱、床、梁、屋根、階段)の50%を超える修繕工事等を行う場合は、建築確認申請が必要となることが決まりました。
今回の改正では、床の下地を含む張替え、階段の変更、間取りの変更等が含まれます。
詳細解説はこちらをお読みください。
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